第323話 大人達の企み

瑠衣は、無言でスマホを見つめる。公式の最新情報を、更新されたので確認しているのだ。


ベッドで、ゴロゴロしつつ考えている。


「ん?」


豆柴の福と幸が、甘えた声でぴょんぴょんする。


「おはようございます、2匹とも。兄さんが、今ご飯を用意しているので待っててくださいね。」


今日は、夕方までアプデとメンテのせいで、ログインが出来ない。暇を持て余して、ルイスは自室でゴロゴロする事にしたのだ。食後で少し眠いが、スマホの画面を見る目は真剣であった。


「今回のリアルイベントは、遠い場所ですね。司会も、知らない人です。3日目から、牧田さん達が司会するんですね。まあ、今回はパスですかね。」


ベットに座り、スマホをスリープモードにして2匹と遊ぶ。リルとソルで、遊ぶ事に慣れているので福達の相手も完璧である。少しだけ、もふもふさせてもらって癒される。暫くして、大河の『ご飯ができたぞ』の声で2匹は全力で駆けていく。


しかし、階段が怖いのか立ち止まり鳴いて瑠衣を呼ぶ。瑠衣は、やれやれと立ち上がると2匹を抱えて下に降りるのだった。ご飯には、負けるのです。


瑠衣は、小さく笑うと静かに部屋に戻った。





breezeと名も無き同盟には、リアル掲示板とディスコのグループそしてLINEグループがある。


しかし、瑠衣も知らない大人だけの枠もあるのだ。


そこには、もと炎天神楽のメンバーも参加しているし、未成年は入れない設定になっている。


時矢は、ディスコを繋げて座る。隣には、牧田とアーサーが座っている。ここにて、今…大人達の企みが始まろうとしていた。ターゲットたる当事者本人達は、ログインが出来ないのでディスコで雑談をして過ごしている。まあ、それも大河から筒抜けだ。


『それで?今回は、何の集まりなんだ?』


大河は、仕事をパソコンでしながら言う。


「次のリアルイベント、遠い場所だろ?おそらく、瑠衣達は行かないと思うんだ。だから、大人達で協力して子供メンバーを連れて行こうかなって。」


時矢は、暢気に笑いながら言う。


『うん、良いんじゃないか?ただ、瑠衣達にも予定があったりするだろ?それは、大丈夫なのか?』


すると、木漏れ日喫茶のマスターが言う。


『イベントの日は、アルバイト組はお休みです。』


「大河、瑠衣から何か聞いてないか?」


時矢は、暢気に笑って聞いている。


『いや、今の所は何も聞いてない。』


「神崎や春都も、イベントの日は部活休みだ。」


時矢は、アーサーを見ると頷くアーサー。


「2人の親には、許可も貰えたしな。他の学生メンバーは、大学生だしって断られた。レイナも、予定があるらしくてパスだそうだ。」


牧田は、暢気にメモ帳を見ながら言う。


「問題は、瑠衣なんだよな…。」


時矢は、考える雰囲気でため息を吐き出す。


『親には、俺から言っとくからさ、瑠衣も連れて遊んで来い。何なら、俺も出来る事は手伝うから。あいつの兄として、そういう提案はかなり嬉しかったりする。さてと、3人の予定は大丈夫そうだな。』


大河は、暢気に笑っている。


「けど時矢、なんて言って予定を開けさせるつもりだよ?特に、瑠衣とか遠慮するだろうし。」


牧田が言えば、不安そうな声がちらほら。


「レイナを特訓する、最終報酬が可能な範囲でのお願いを聞くって書いてあってだな…。何でも、とは書いてないけど可能な範囲じゃないかと思って。ちなみに、2人には予定を開けといて貰ってる。」


時矢は、考える雰囲気で言う。


「なら、いけるか。早めに、言っておくんだぞ?」


牧田は、そう言うと次々に話し合いをする。名も無き同盟の、子供達を喜ばせるために大人達はこそこそと話をまとめるのだった。


大河や元メンバー達も、ノリノリだから尚更に加速していく。大河は、仕事の手を止めて話し合いに集中する事にする。ちなみに、大河はこのイベントの担当ではない。純粋に、弟の為に企みに参加する。




暫くして、ノック音がする。イヤホンをしてた為、音は外に漏れてない。大河は、ミュートにする。


「兄さん、お昼ご飯が出来ました。」


2人でご飯を食べた後、瑠衣は買い物へ。大河は、いそいそと部屋に戻り話に参加するのだった。

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