第318話 女の武器

ルイスは、どうしたものかと考える。ルイスは、男女平等で楽しい事は一緒に楽しんで欲しい。けれど現状、女性プレイヤーが舐められている。プレイヤーではなく、住民権力者に。誰か、女性に言い負かして貰えれば良いのだが。追い詰め過ぎれば、喉元を食いちぎられる。言わば、窮鼠猫を噛むである。それを、少しでも回避したい思いもあるのだ。


さて、女性プレイヤー達は交渉を嫌がっている。


どうしたものかと、考える。現在、ルイスは女性だしサポートもすると言ったのだが困った。


「やはり、僕が行くしかないのでしょうか?ですが僕は、本当は男なので効果があるかどうか…」


ルイスが、本当に困った雰囲気で言う。女性プレイヤー達も、罪悪感はあるのか謝罪してくる。失敗や責任を負いたくない、皆んなにせめられたくない。そんな意見に、ルイスは深いため息を吐き出す。


「その時は、僕が責任を持ちます。皆さん、もし僕が居なくなったらどうするんです?もう少し、積極的に協力して行きましょうよ。失敗しても、皆んなで協力すれば巻き返せるんですから。」


ルイスは、真剣な雰囲気で怒る。


「取り敢えず、どうする?このままだと、無駄に時間だけが過ぎるぞ。俺達で、交渉に行くのもありだとは思うけど。ルイスは、女性プレイヤー達も守りたいんだよな?俺達が、行くのは逆効果になる。」


トキヤ達は、真剣な雰囲気で考えている。


「僕が、行きます。」


「その格好でか?」


ルイスは、巫女服を見てキョトンとする。


「ルイス、私が行きたいけど忙しくて。取り敢えずだけど、ドレスアーマーを何着か用意したわ。全部あげるから、Annちゃん!後は、よろしく!」


そう言うと、シャルムは忙しそうに去って行く。


「良かったな、という訳で着替えてこい。」


「え?え?ちょっ、別に巫女服でも…」


すると、ユンゼが素早くお姫様抱っこ。


「Annさん、手伝うから行きましょう。」


「助力、感謝致します。」


素晴らしい笑顔で、Annは案内していく。ルイスの悲鳴がしたが、トキヤ達は気にしない事にした。


「トキヤさん、酷いです!」


大人の妖艶さを放つメイク、清楚さと色気を兼ね揃えた美しいドレスアーマー。髪は、綺麗に編み込みを入れている。ルイスの色白な肌と、相まって完璧な美女が出来上がっていた。怒った顔も、絵になる様な完成度に見惚れる人もちらほら。


「似合ってるぞ。」


「嬉しくないです。胸元、開けすぎじゃないですかね?うぅ…、こういう服は苦手なのですよ。」


ルイスは、深いため息を吐き出している。


「さてと、こっちも準備万端よ?」


ユンゼは、武装メイド姿。何故か、グレンも武装執事である。御付きの2人は、どうやら決まりだ。


「ルイス、此処は諦めて演じろ。」


トキヤに言われ、ルイスは深呼吸すると背筋を伸ばす。そして、真剣な顔をしてから微笑む。


「私、負ける気はしてませんの。」


ルイスは、気高き女傑を演じる。


「おう、我らが姫様。頑張ってくれやい。」


「今回だけは、見逃しますが…次に言えば、いくらトキヤさんとはいえぶっ飛ばしますわよ。」


ルイスの笑顔に、トキヤは苦笑して謝るのだった。




ルイスは、国々の会議室に向かう。


「お邪魔します。」


突然に、現れた美女に全員が固まる。


「あら、ベルトンも居たのですね。」


「ん?えっと、君はだれかな?」


ベルトンは、困惑している。


「プレイヤー達の代表である、私が交渉に来ましたわよ無能な男ども。良くも、前の代表を虐めましたわね。貴方達が、無能だから私達が出しゃ張ざるを得なくなったんでしょう?それについて、どう思ってらっしゃるのかしら。意見を聞きたいですわ。」


罵倒しながらも、優雅かつ妖艶な微笑みで聞く。


「ふん、そもそも頼んでない。」


「ええ、だからプレイヤー達は撤退させました。」


すると、男は驚いて固まる。


「私達は、暇ではなくってよ。助けを求める国は、多くあるのですから無能な国は放置しますわ。」


ルイスは、素っ気ない雰囲気であっさり言う。


「それが、人間のやる事か!」


顔を赤くして、怒鳴る権力者。


「助けようとしたのに、拒んだのはそちらですわ。ましてや、お金を絞り取ろうなんて…それこそ、人間のやる事ですか?っと返させていただきます。」


ルイスは、素晴らしい笑顔で言い返す。国々の権力者達は、無言になってしまう。ルイスは、友好的な国々に現状報告をして優しく微笑む。


「まさか、ルイス君かい?」


ベルトンは、衝撃的だと言いたげに言う。


「ゲレティー様の命令で、女性ですが確かにそうです。けど、女の私に似合わない名前でしょう?」


「なら、女性の君はイスカって呼ぶよ。」


ベルトンは、少しだけ考えて言う。


「あら、悪くないですわね。それで、正体を知った皆さんは私と仲良くしますの?それとも…、敵対します?既に、旅人達は動いてましてよ?」


ルイスは、魅了を発動させて頬杖をついて足を組むと微笑む。ベルトンは、一瞬だけ真剣になる。


「長く、魅了するつもりはありませんわ。このままでは、女性プレイヤーが危険ですので、書類に契約を残して貰えたら解除しますの。魅了も弱めですから、私に執着する事もないでしょう。」


ルイスは、真剣な雰囲気で言う。ベルトンは、現状を理解しているので見逃す事にする。確かに、このままだとまずいというのも、理解していたからだ。


それは、友好的な国々も同じで無言で頷いている。


「感謝致しますわ。我々は、都合の良い道具に成り下がるつもりは有りません。我々は、神々に自由を認められていますから。勿論、貴方が協力を仰ぐ事は出来ても強制力はないのです。全ては、旅人達の優しさで動いています。そんな彼ら彼女らを、侮辱し見下し足を引っ張る愚かな国は、心から滅べば良いと私は思っています。皆さんは、どうですか?」


すると、拍手があちらこちらから聞こえる。ベルトンも、無言で拍手して同意している。


「さて、書類も書けましたね。もし、旅人達に理不尽や非道を行えば、他の国々が戦争を仕掛けても良いという契約です。互いに、守りあってくださいませ。では、私達は此処で失礼致しますわ。」


ルイス…イスカは、ゆっくり優雅に立ち上がる。


「イスカさん、ありがとう。これで、僕も動きやすくなるよ。出来れば、今後ともよろしくね。イスカさんとしても、ルイスくんとしてもね。」


ベルトンは、優しく微笑むと言う。


「私は、気まぐれですからね。気が向いたら、仲良くして差し上げてもよろしくてよ。それと、ルイスとして申し上げるのでしたら。『もっと、動き様はあったと思うのです。慎重になるのは結構ですが、判断が遅いと僕達が苦労するのです。まったく。』ですわね。では、皆様…ご機嫌よう。」


優雅に去る、イスカに友好国の代表達は敬意を込めて頭を下げる。敵対国は、契約内容に青ざめる。ベルトンは、イスカが見えなくなるまで手を振る。


こうして、流れが変わるのだった。

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