第306話 お出かけ
いつもより、早く起きてしまった…。
今日は、あの人とお出掛け。楽しみで、早起きしてしまった。昔の俺とは、違うみたいだ。昔の俺ならば、夜明けが来るのが嫌で仕方なかった。
「おはよう、早いなカロ。」
トキヤは、座ったカロに優しく声を掛ける。
「えっと、あの…何か、目が覚めて。」
「まあ、年相応で何よりだ。」
カロの言葉に、トキヤは頷いて書類に視線を戻す。まだ、あの人は来ていない。キリアさんが、飲み物を置いてくれた。とても、美味しい…。
「おや、とても早いですね。皆さん、おはようございます。トキヤさん、いつも思うのですが。いつ、寝ているんですか本当に…。早過ぎません?」
ルイスの少しだけ、呆れた様な困惑した声。トキヤは、笑いながらルイスの言葉に答える。
「二徹くらいなら、楽勝だなとだけ…。」
「ちゃんと、寝てください!?」
ルイスの、素早いツッコミが入る。
カロは、既に見慣れた光景になりつつある、その光景に無意識のうちに笑っていた。それに、ルイスやトキヤは気付いていたが、せっかくの笑顔が消えたら困るので、気づかない振りをして会話を続ける。
「おう、そのうちな。取り敢えず、薬草類も他サーバーから送られて来た。要らない程にな…。」
後半、遠い目で告げるトキヤ。思わず、視線を逸らすルイス。カロは、キョトンと2人を見ている。
「ま、まあ…ポーションにしてしまえば直ぐに無くなるのですよ。うん、そうなのです。」
現実逃避する様な、少し早い口調のルイス。
「この、天性の人たらしめ…。」
トキヤは、ため息混じりに呟くのだった。
「違うのです、皆さんが優し過ぎるだけなのです。あ、お礼に何を送りましょうかね?」
「取り敢えず、料理を送っといた。」
トキヤは、暢気に言うと在庫確認に行ってしまう。ルイスは、カロの隣に座ると私服装備になる。カロは、思わずルイスを見てしまう。
「ん?どうかしました?」
「私服が、珍しかっただけ。」
そう言うと、小さく欠伸をする。ルイスは、前までは俯いていた顔が俯いてない事に気づく。
少しだけ、嬉しくなる。
「眠いなら、寝てても良いですよ?」
「大丈夫、…だと思いたい。」
視線を逸らし、眠さにまた欠伸をする。ルイスは、優しく微笑むと紅茶を飲んで書類を見た。何もする事もなく、紙の音に眠気を感じて寝てしまうカロ。
警戒心が、無くなって嬉しいメンバー達であった。
「カロ君、朝食の時間ですよ。」
カロは、自分が寝ていた事と寝顔を見られた事に赤面している。そして、少し固まってから言う。
「呼び捨てで、良い。仲間…だから。」
すると、ルイスは驚いて固まる。
「なんだよ…。」
「いいえ、何でもないですよ。」
嬉しそうなルイスに、カロは逃げる様に部屋から去るのだった。リリアは、ルイスを見ると言う。
「私も、呼び捨て良いわ。」
「はい、ありがとうございますね。」
リリアは、頷いて朝食を食べに行った。
そして、グレンが来たのでお出掛けタイム。街を探索しながら、必需品や部屋に置きたい物を買う。カロは、時計と筆記用具を買っていた。リリアは、メモ用紙とインクだ。うん、お仕事道具である。
「2人とも、何か欲しいものとかないのか?」
「そうね、あるけどお金の無駄遣いだわ。」
リリアは、苦笑している。グレンは、苦笑してルイスは少しだけ困った雰囲気になる。
「よーし、何でも来い。」
「有り難いけど、遠慮しとくわ。だって、さっきのお金だって先に払っちゃっているんだもの。」
リリアは、ルイスを見て苦笑する。
「どう見ても、仕事道具でしたよね?雇い主である僕が、買って用意すべきものですから当然です。」
「まったく…。」
「リリアは、僕達のホームが気に入りません?」
ルイスが、ノホホーンと聞く。
「いいえ、寧ろ気に入ってるわ。でも、申し訳ない気持ちになるの。頼り過ぎて、何も返せてない。」
「カロも、同じ気持ちなのか?」
カロは、無言で頷いた。
「うーん、僕からすればもっと頼って欲しいです。そして、少しは甘えて欲しいです。別に、見返りが欲しいわけではないですし。それでも、何か返したいと言うならば、幸せになって欲しいです。」
そう言うと、移動し出した。
シャルムさんの弟子、ヘイユさんのお店に。ちなみに、シャルムさんの服も売られています。
「ルイス、いろいろあるわよ?」
シャルムは、2人を連れて行ってしまった。ルイスは、それを見送るとゆっくり外に出て、いつもの装備に戻した。グレンには、お店の中で待機して貰っている。ルイスは、深いため息を吐き出した。
「それで、僕達を尾行するなんて、どういうつもりでしょうか?ちゃんと、教えてくれません?」
ルイスの言葉に、人に化けた竜達が現れた。ルイスは、落ち着いた雰囲気で見つめるのだった。
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