第301話 いくつかの頼み事

トキヤとマッキーは、冒険者ギルド本部に呼び出されていた。ルイスは、リアルでバイトの為にまだログインしてこない。なので、トキヤが行く事に。


「あれ、ルイス君は来れなかったの?」


ベルトンは、キョトンとして言う。


「あいつは、リアルでは高等部の生徒で、カフェでお仕事もしてるから。かなり、忙しいんだよ。」


トキヤは、素っ気なく言い出されたお茶を飲む。ベルトンは、少しだけ困った雰囲気で笑う。


「そっか、それならどうしようか?」


同盟メンバーは、警戒した雰囲気である。


「厄介事は、ごめんだぞ?」


トキヤは、真剣な雰囲気で言う。


「失礼だなぁ、厄介事を僕から押し付けた事は無いよ?兄さんは、やらかしてたみたいだけど。」


ベルトンは、少し苦笑しながら言う。


「すまん、だったな。」


思い出した様に、頷くトキヤ。


「取り敢えず、何だけどお願いがあってね。芸術の国フィーダンにて、食材だけがドロップするダンジョンが見つかって。納品クエスト、しないかな?」


トキヤは、無言で続きを促す。


「それと、ポスト持ってるでしょ?ギルドから、1人派遣するんだけどね。その事で、ルイス君と話があったんだ。派遣したいのは、フィーダン支部の少年。歳は、プロメアちゃんと同じくらいだよ。」


ベルトンは、優しく少し悲しそうに笑う。


「訳ありって、感じだな?」


その口調で、察するトキヤ達。ベルトンも、無言で深刻そうに頷く。そして、考える雰囲気で言う。


「彼の性格に、問題はないんだ。けど、彼は竜人でね。しかも、竜の力を上手く制御できない。」


「それは、また…。」


トキヤも、察したのか苦笑する。


「そのせいで、彼は周りから恐れられる。更に言えば、竜国に帰る場所がなく、両親も幼い頃に亡くしている。故に、彼は愛情を貰った記憶がない。」


「でも、性格には問題がないんだろ?」


マッキーは、お茶を飲みながら言う。


「まだ、子供だからね。僕は、あんな死んだ目で俯いてて、生きながら死んでるあの子に。きっと、幸せになって欲しいんだと思う。けど、立場的に彼を守るわけにもいかない。だから、悩んだ末にね。」


「取り敢えず、あっちのギルドに行った時に見てみるよ。最終判断は、ルイスだからな?」


そう話している時に、足音がしてドアが開く。


「すみません、遅れたのですよ。」


ルイスは、疲れた雰囲気で言う。ベルトンは、先程の内容をルイスにまた話す。ルイスは、苦笑する。


「それはまた、辛いでしょうね。竜の力を扱えないって事は、周りの考えてる事がダダ漏れって事ですし。僕も、指輪が無いと見えちゃいますから。」


すると、全員がルイスを見ている。


「住民さんは、基本的にダダ漏れです。プレイヤーは、何でしょうざっくりした感じですかね。」


「それで、どうするんだ?」


トキヤは、ルイスを見てから言う。


「うーん…、現状を見てからじゃないと何とも。ですが、納品クエストはしたいです。うちも、かなりの食品をあげてしまったので。納品物以外は、持ち帰っても良いみたいですし。補給は、必要です。」


すると、トキヤは優しく頷く。ルイスが、行くと言えばルーカスは勿論だが、誰も行かないとは言わないだろう。トキヤは、そういう確信があった。


「納品依頼で、納品しない物は僕が買取ますよ。そしたら、ホームを立て直して金欠のプレイヤーも助かるでしょうし。ポーション類は、生産ギルドと冒険者ギルドに委託します。そうすれば、必然的に依頼に目を通します。新マップに行ける、この依頼に食いつかない訳が無いのですよ。買取を、生産ギルドでお願いしてポーションは冒険者ギルドにお願いしましょうか。そしたら、上手く行くはずです。」


ルイスは、スラスラと考えたことを言う。秘書さんが、素早くメモしてギルド員に紙を渡した。


「なんて言うか、本当に凄いよね君は…」


ベルトンは、目を丸くして言う。なお、ルイスは考え事に集中していて聞いていない。


「そりゃ、そうだろ…何せ、俺達の盟主様だぜ?」


マッキーは、笑いながら言えば頷くメンバー。


「取り敢えず、次の目標は決まったかな。」


トキヤも、伸びをしながら言う。


「あのさ、派遣するの2人でも良いかな?」


ベルトンは、申し訳ない雰囲気でおずおず言う。


「もう1人、増やすという事ですか?」


ルイスは、キョトンとする。


「そう、魔人族の少女なんだけど。その子は、魅了の力を制御出来なくてね。一度、逆に魅了されないと駄目らしい。けど、彼女の魅了は強力でね…。」


ベルトンは、困った雰囲気である。ルイスは、思ってしまった。自分の魅了と、その子の魅了のどちらが強いんだろう?っと。ぶっちゃけて、竜人の少年と魔族の少女の能力をどちらも持つ自分の存在に気付いた。気付いたから、素で驚いてから…


「あらやだ、怖い…。」


ルイスは、思わず小さく呟いた。


「ルイス?」


「あ、いえ…。特に、何もないです。」


トキヤは、ルイスを連行。ルイスから、理由を聞いてから驚く。驚いてから、爆笑してしまう。


「そ、そりゃ…確かに、怖いな。」


「取り敢えず、その子も保留で。魔術師で、サブが付与師なんですね。竜人の子は、守護騎士でサブが学者ですか。珍しいですね、学者は。」


ふむふむ、ルイスは書類を真剣に見ている。


「まあ、子供って言っても竜としてはだし。実際には、僕やホーエンハイムと同類だよ。」


「……思いっきり、やらかしてます!」


ルイスは、意味を理解して怒る。


「待って、待って…。彼は、選ばられなかった。ホーエンハイムと、同じようにね。だから、彼は聖人ではないよ。それに、思考は年相応だから。」


落ち着いてと、ベルトンはルイスを見る。


「まったく…。どの道、保留なのです。」


「それとね…。」


まだ有るのかと、少し睨みながら見るルイス。


「もし、選んでくれるのなら2人を君のクランに入れて欲しいんだ。2人は、子供にして敵が多過ぎるんだ。残念だけど、僕は守ってあげられない。」


「もしもの時の、逃げ場所にですか?」


ベルトンは、深刻そうな雰囲気で頷く。


「君なら、2人が暴走しても押さえられるよね。それに、君なら絶対に仲間を見捨てないし。」


全員が、厄介事を押し付けようとしてると思う。しかし、子供達がまた心配なのはそうなのだ。


「何にせよ、行ってから決めます。ジョブ的には、プロメア達と組ませたら良さげなんですけど。問題は、暴走と精神的な問題なのですよね。」


「僕も、そう思う。だから、信頼できる君に最後に相談した。今までの人達は、全員が断ったから。別に、断っても彼らの日常に変わりは無いしね。」


ベルトンは、そう言うと安心させる様に笑う。ルイスは、深いため息を吐き出したのだった。










作者の謝罪

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