第299話 世界の意思と三柱の意思

さてと、お店が完成するまでする事無いのです。という訳で、ポーションを作っているのですが。


ちょっと、疲れました…。


これで、在庫補充は完了と…。次は、倉庫の在庫確認と…。ちなみに、キリアさんとバロンさんは孤児院に。ランコルさんは、教会の手伝いに。トキヤさん達は、巡回に行きました。今、アトリエに居るのは僕とカリオストロだけです。あと、リル達。


「さあ、気合いを入れて頑張るのです。」


ルイスは、足早に移動して止められる。


「忙しい所、失礼するよ。」


ゲレティー様の登場に、ルイスは思わず固まる。


「君の活躍で、僕は処罰を逃れた。そして、ルドカリムも死を免れた。本当に、ありがとうルイス。」


ゲレティーは、本当に感謝する様に笑う。


「いいえ、ゲレティー様がご無事で何よりです。ベルトンも、何処か憎めない人ですからね。」


ルイスが、困った雰囲気で笑えばゲレティーは優しく微笑む。そして、思い出した様に言う。


「それと、僕達の親が接触して来た件だけど。」


「親?…親!?え、あの少年が…ですか?」


ルイスは、驚いて聞き返す。


「世界手記を、読んでるはずだよね?」


「読みました。けど、現実逃避させてください。」


あの少年、セフィロトはこの世界の意思です。現実寄りだと、ハックなどを阻止する知能プログラム。この世界寄りだと、ゲレティー様達の親であり世界そのもの…。世界の意思が、人の形をした者です。


まあ、セフィロトがあるという事は対なす存在であるクリフォトもあるのですよね。この2人が…この2つの世界が喧嘩した結果が争いの始まりです。


そもそも、2つの世界は出会う事は無かったはず。


察している方もいるでしょうが、セフィロトの樹は生命の樹と同じです。おそらく、エルフ国のはレプリカか株分けされた物でしょう。


本来なら、根っこ同士で繋がる彼らが出会う事はないはずでした。しかし、前の運営は新しいフィールドを作るコストを減らす為に、やってはいけない事をしました。セフィロトの隣にクリフォトを植えたのです。天国と地獄が並び立ってしまったのです。


勿論、管理する知能プログラムは違います。


2つのプログラムは、やがて喧嘩しあい機能を停止しました。ここまでが、今までの流れです。


新しい運営に変わり、システムを見直して修正が入った事でセフィロトは機能を取り戻します。しかしながら、クリフォトはバグが起きてしまい操作不能になりました。プレイヤーに、害はないので監視だけはしておく事に…。しかし、運営の知らない所でバグが起こり始めて居ました。


運営さんに、言うべきなんでしょうけど。現実味がなさ過ぎて、信じて貰えなさそうです。


「もう、ゲームと現実の区別が分からなくなりそうです。この世界は、ゲームと分かって居ますが。」


「まあ、僕達はこの世界で生きているからね。」


ゲレティーは、理解している様に頷く。


「神様達の本名が、生命の樹の球体なのも納得です。ゲレティー様は、ケテルでしたっけ?」


「あくまで、ケテルをイメージして作られた高性能AIだよ。だから、余り深く考えられても困るし。」


ゲレティー様は、困った雰囲気で笑う。


「取り敢えず、僕はセフィロトに従いません。」


ルイスは、真剣に告げる。


「うん、それで良いと思うよ。僕から見ても、彼の方は変な考え方をしていると思うし。僕達も、なるべくセフィロト様に干渉されない様に動くから。」


ゲレティーは、深刻そうな雰囲気で言う。


「クリフォトは、大丈夫なんですか?」


「魔王国に、一度来たきりかな…。見張りたいけれど、邪魔されてどうしようも無いんだ。」


ルイスの言葉に、ゲレティーは深いため息をつく。


「邪魔…。もしかして…」


「本当に、博識だね。でも、それ以上は駄目。」


ゲレティーは、ルイスの言葉を遮り本当に心配そうな表情で駄目だと言う。ルイスは、今の言葉が踏み込む内容だと気づいて申し訳ない雰囲気だ。


「取り敢えず、助けてくれてありがとう。」


「いえいえ、さてと僕も動かなかくては…」


ルイスは、気合いを入れる様に言う。


「僕からしてみれば、君はもう少し休むべきだと思うけど。復興作業も、誰よりも率先して動いてたしね。頑張り過ぎ、倒れちゃうと思うんだ。」


ゲレティーは、驚いてから凄く心配そうだ。どうにか、やめさせようと説得しにかかる。


「そんな事は、無いのですよ。皆さんの方が、巡回とか体力仕事なので。僕も、もっと頑張らなければいけないのです。大丈夫です、後で休みますよ。」


ルイスは、優しく微笑むと去ってしまう。ゲレティーは、手を伸ばしたが届かない。


「君のせいで、ルイス君が忙しいんだよ?それを、理解してて止める権利があるとでも?」


精霊王は、深いため息を吐き出す。


「だが、倒れないか確かに心配ではある。」


龍王は、精霊王に落ち着けと言ってから言う。


「全力で、彼らだけは守り切る。彼らが落ちれば、多くの旅人達が争いに巻き込まれてしまう。」


ゲレティーは、真剣に告げる。


「まあ、そこは同意かな。良かったよ、真実に辿り着いたのがルイス君で。彼は、聡明で優しくて…本当に内緒の事は、全力で口を割らないから。」


精霊王は、そう言うと申し訳ない表情である。龍王も、無言で頷いて三柱は帰るのだった。

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