第293話 ドS様…

さて、時は遡って1日と数時間前…。


ルイスは、戦況を見極める為に無言で考える。すると、烏丸が隣に現れる。ルイスは、驚いて目を丸くする。そして、2匹を受け取る。傷は、無い…。


「どうやら、複数人で袋叩きにされた様でござる。運良く、治癒できる人が居たので治療をお願いしたでござるが…。2匹とも、立ち直れず。」


「そう…。ねえ、誰がやったか分かる?」


素っ気ない反応に、首を傾げながら烏丸はリストを差し出す。ルイスは、無言で見つめてから…


「ありがとう。それにしても、僕のモルモットになりたい人達がこんなに居るなんて…。さぞかし、実験が捗るだろうね。楽しくなって来ちゃった…。」


烏丸は、その表情を見る事が出来なかった。それ程に、恐ろしい雰囲気を纏っていたからだ。


「ドS様、さら地だけはやめろよ?」


トキヤは、冷や汗ながらに必死に言う。


「え?瓦礫とか、片付ける面倒とか無くなって良いと思うんだけどなぁ〜。ついでに、クズどもも吹き飛ばせるし。それと、ドS様ってなに?」


素晴らしい笑顔、だが…その瞳は全然笑ってない。寧ろ、凍てつく様な怒りを宿している。


「こりゃ…、駄目だな。」


トキヤは、苦笑して困った雰囲気である。


「ルイスの兄貴、2匹が怖がっているっす。」


ルーカスは、2匹を見てから苦笑する。


「え?あ…。ごめんなさい、2匹とも。」


ハッと正気に戻り、思わず素に戻りあたふたする。いつものルイスに、ぴえーんと甘えた様にルイスの胸にしがみつく2匹。実は、2匹には巨大化の能力が出ていた。しかし、何故か使えなかったのだ。


ちなみに、この巨大化のスキル。大きい姿の、リルとソルよりも巨大になってしまう。


それと、狂暴化のリスクもあるし封印されていた。


誰にとは、言えないが世界のみが知る。


ルイスの使い魔は、特殊なので全員封印が施されている。逆に言えば、まだ伸び代はあるし強くなれるという事だ。そして、全員がそれを理解している。


今まで、必要なかったから良いと思っていた。


勿論、ルイスの使い魔だけが特別な訳ではない。


ただ、プレイヤーの中に此処まで到達できた人が居ないだけ。何せ、ログイン時の白い部屋にずっと放置するプレイヤーが多い。トキヤ達がそうだ。


卵に関しては条件がある。まず、生まれた場所がマイハウスである事。そして、マイハウスで1週間で48時間プレイヤーと使い魔が過ごすのがこの世界の外に出れる条件である。とても、厳しい条件だ。


笛に関しては、絆を深めるのが難しいし引く魔物も運次第だ。そして、笛の使い魔は相性が良くないと呼び出し拒否される。3回拒否しても、呼び出すとブチ切れてその場で攻撃して来る。そして、倒すと2度と笛を売ってもらえなくなる。倒されて、そのまま逃げられると笛は自動的に消滅してしまう。


そして、預けられる場合…。


これは、かなりのレアケース。余程の信頼関係、もしくは奇跡な出会いが無ければならない。お金や知名度では、どうにもならない運や奇跡の様なもの。預けられても、捨ててしまうプレイヤーは多い。スコルとハティの、最初の暴れっぷりで察するだろうが、かなりの問題児が多いのである。


「トキヤ殿、話があるでござる。」


今のうちにと、トキヤにプロメア達の話をする。


「了解。そういう事なら、ルイスには悪いが…」


トキヤは、優しく笑うと頷く。烏丸は、ルイスを見てから逃げる様に消えた。ルイス殿だけは、怒らすまいと思いながら。苦笑する、breezeメンバー。


「どうかしました?」


キョトンして、首を傾げるルイス。


「いや、大した事じゃない。それより、お掃除の許可をする。俺達は、一足先に処刑場に行く。」


「え、良いんですか?」


2匹をもふりながら、驚くルイス。


「それと、さら地はあくまで最終手段な?」


トキヤの言葉に、上機嫌でキリアに2匹を預けようとする。しかし、ヤダヤダと必死にしがみつく2匹にルイスは困った雰囲気。そして、言い聞かせる。


「傷は治ったとはいえ、少し休んでください?その代わり、終わったらちゃんと遊びますから。」


本当?っと、首を傾げる2匹に頷くルイス。キリアは、大人しくなった2匹を受け取り去った。


「2匹が居たら、全力で暴れられないからね。」


申し訳ない雰囲気でルイスが小さく呟けば、トキヤが「さら地は、最終手段だからな!?」っと叫ぶ。ルイスは、お茶目に笑って元気よく「はーい!」と答える。「2匹を帰すべきじゃなかったか?」と、トキヤは後悔する様に頭を抱えるのだった。




やはり、プレイヤー達が処刑場に向かう途中に邪魔してくる。ルイスは、既に別行動中だ。


「やっぱり、そうなるよな。」


トキヤは、苦笑して剣を抜く。


「露払いは、任せるでござるよ。拙者達を気にせずに、全力で駆け抜けるでござる!皆の者、行け!」


忍者達が、敵対プレイヤーと交戦を開始した。こうして、日付が変わって早朝にたどり着いた。


ガイアは、疲れたのか俯いている。プロメアも、体育座りで眠っている。メウロは、視線をトキヤ達に向けてから立ち上がる。トキヤは、ガイアの前に立つとガイアが顔を上げる。そして、ホッとした。


ガイア達が去り、ベルトンは解放された。


しかし、敵が囲むのであった。

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