第289話 追いかけっこ
葛葉は、何とか烏丸の部下から逃げ切る。そして、街の時計台の上に行く。すると、2人のプレイヤーが居る。幸運兎の獣人リリナと黄金猫セリムだ。
「いやぁ…、モテモテですにゃあ!」
「こんにちは、大丈夫ですか?」
面白そうに、笑うセリムと葛葉を心配そうに見るリリナ。葛葉は、疲れた様に一息ついていう。
「高みの見物とは、君達…。」
葛葉は、恨めしそうにジト目で言う。すると、セリムは思わずといった雰囲気で笑う。リリナも、少し困った様におっとりと笑う。すぐに、葛葉も優しく笑ったのもあって、穏やかな雰囲気になる。
「後は、私達だけですか?」
「後、ルイスさんにゃ。けど、今回のイベントでまだルイスさんを見てないにゃ。教会に、ルイスさんがついたっていう噂も有るしにゃぁ…。」
葛葉は、無所属が多い理由を察した。おそらく、殆どの人が教会の嘘を見抜いているのだ。
「2人は、何処についてるんです?」
「みぃー達は、無所属にゃ。葛葉は?」
セリムは、伸びをしながら言う。
「叛逆者です。ついでに、ルイスさんも味方です。教会が、嘘を言ってたのは驚きでしたね。」
葛葉の言葉に、やっぱりと笑う2人。
「葛葉は、やっぱりセカンドアバターにゃ?」
「はい。やっぱり、お二人もですか?」
すると、2人とも解除してメインアバターに。暫くして、元の姿に戻る。そして、内緒のジェスチャーである。そして、葛葉をわくわくと見ている。
敵索して、見られてないのを確認する。
そして、葛葉の状態を解除した。
2人は、無言で目を丸くする。ルイスは、優しく微笑むと悪戯が成功した子供の様に言う。
「絶対に、内緒だよ?」
2人は、頷いてから笑う。
「あれ、敬語じゃないんですか?」
「今の僕達は、住民達の敵…悪役だからね。いやまあ、ロールだからキャラ維持が難しいけどね。」
遠い目で、思わず言えば。じゃあ、何でやろうとおもったの?とツッコミが来る。本当に、その通りである。本人も、割とその場のノリと勢いで決めた。
「なるほど、これは大変だにゃあ…」
「それと、二人とも…。」
ルイスは、苦笑してから言う。
「にゃ?」
「はい。」
2人は、キョトンとしている。ルイスは、遠くを見ると深いため息を吐き出して満面の笑顔。
「見つかったよ?」
そう言うと、そのまま落ちていった。
「ちょっ!?」
「大変です、逃げないと。」
ルイスは、屋根にぶつかる直前に空歩でふわりと浮いて着地。そして、走り出した。2人は、階段を見る。何故、逃げ場のない場所に逃げ込んだのやら。
次の瞬間に、マッキーが2人を捕まえる。
「お2人さん、確保だ。」
その格好に、マッキーも叛逆者側だと判断する。
「マッキーさんに、確保は嬉しいのにゃ!」
ファンなのか、目を輝かせるセリム。
「ついでに、2人とも叛逆者にならないか?」
2人は、頷き合い叛逆者側になるのだった。
マッキーの右隣を、トキヤとグレンとルーカスが通過する。左隣を、ジェイドとヴァンとブレイブが同時に通過する。トキヤは、弓を引くと放つ。
ルイスは、素早くトキヤ達の方向を見ながらバックステップ。続いて放たれた、トキヤの矢をチャージングなしで斬り飛ばしたのだ。トキヤは、チャージング…ため無し攻撃で斬り飛ばされた事に、無言で目を丸くする。しかも、ルイスはノーダメージだ。
「待て待て、おかしいだろ!」
マッキーも、悲鳴じみた声音で言う。
「俺の、最大火力をあんな簡単に…」
トキヤは、困った様な苦笑を浮かべている。
「まあ、いい。後で、聞き出せば良い事だし。」
ため息を吐き出して、グリフォン達に乗りルイスを追いかける。フィン達は、手伝わないが足は貸すといった雰囲気だ。本人達は、手伝う気はない。
プレイヤー達は、ルイスを見て教会の嘘を不愉快に思う。そして、住民にも手回しを開始した。
「ルイス、速すぎるだろ!」
ブレイブは、苦々しく言う。
「ジェイド、行けそう?」
ヴァンは、真剣な雰囲気で言う。ジェイドは、苦笑して頷く。ルイスは、予備動作を確認して屋根から降りる。視界が途切れて、呻くジェイド。
「えぇー、あの距離から動作予測するとか…」
ヴァンは、化け物を見る目つきである。それは、ブレイブも同じ様で表情が引き攣っている。ジェイドは、真剣な雰囲気で思考を巡らせている。
トキヤ達に、回り道されているのを目視して、無理矢理に壁を蹴って方向転換。別ルートで、走り出した。ジェイド達に、距離を詰められるが、ルイスに焦りは無い。ルイスの向かう方から、大斧が飛んでくる。ジェイドは、2人を庇う様に盾を突き出す。
「ルイス、革命が起きちまったな。」
大斧を拾いながら、大声で笑うルッツ。
ルッツ
日本サーバー、三大同盟の3番目に大きい同盟『大漁丸』の盟主。とても気さくで、明るい性格。曲がった事が嫌いで、正々堂々と真正面からぶつかるのが好きな戦闘クラン《海船》のリーダー。
「まあね、厄介事は嫌なんだけど…」
ルイスの口調に、ルッツは驚いてから言う。
「なるほど、breezeリーダールイスが率いる、名も無き同盟が動いてると思えば…。炎天神楽リーダー、トキヤが率いるヤグラ同盟かよ。」
「今は、僕が不在だからね。あながち、間違ってはいないかな。ルッツさんは、どーするの?」
ルイスは、立ち止まり不敵に微笑む。それに対し、ルッツはニヤリと笑う。そして、宣言する。
「勿論、お前に付き合うぜ!ルイスの旦那。」
「ちょっ、その呼び方…それ禁止!」
ルイスが、本当に嫌そうに言えば…
「だって、炎天神楽メンツ全員揃ってんじゃん。旦那には、お世話になったしな。まあ、頑張って逃げてくれや。さあ、おめぇーら!行くぞ!」
『おう!』
そう言って、攻撃を開始するのだった。ルイスは、困った雰囲気でため息。そして、走り出した。
残り時間、3分を切ったので隠れて葛葉になる。
残り、1分で教会と冒険者の挟み撃ち。そして、その場で激しい言い争いが始まっていた。葛葉は、子狐になり逃げるタイミングを見計らっていた。
すると、後ろから抱き抱えられる。
「まったく、暴れ過ぎだ葛葉。」
トキヤは、疲れた雰囲気である。
「葛葉、甘いお揚げさんの稲荷寿司があるぞ。」
マッキーが1つ渡せば、嬉しそうに尻尾を揺らし美味しそうに食べる子狐葛葉。ジェイド達も、追いついて捕まった葛葉をみてホッとしていた。
「じゃあ、撤退だ!」
トキヤの声に、叛逆者側は全員撤退したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます