第287話 悪ぶって行こう

作戦開始の合図に、暗殺者がサクッとプレイヤー2人を倒す。烏丸は、商人姿でNPCと接触した。


「ん?護送か、ご苦労様だな。」


「ここら辺で、休憩してからまた移動だ。」


陽気な雰囲気で、聖騎士の青年NPCが言う。


「そうか、若いのに偉いな。そうだ、breezeでお酒を買ったんだ。お前さん達に、やるよ。」


上手く、会話を誘導して青年達にお酒を飲ませる。そして、酔った聖騎士の青年達から情報を引き出すのだ。青年達は、お酒に仕込まれた眠り薬で眠ってしまった。烏丸は、それを確認して深いため息。


そして、馬車に向かう。


「君達は、何者だい?」


警戒した雰囲気で、ベルトンは烏丸を見る。ベルトンは、獣の檻の様物に首と両手が繋がれていた。怪我は、なさそうだがシャツにズボンと寒そうだ。


「しばし待たれよ、ルイス殿が話したいと。」


ルイスは、檻に背をあずけると聞く。


「今、助け出すのはまずい?」


ルイスは、ベルトンと檻を挟んで背中合わせになると、短く最小限の音量で簡潔に聞く。


「やめた方が良い。教会は、奥さんや僕を守ろうとした人達を人質にしてる。だから、僕も迂闊には動けなかったんだ。せめて、人質を奪い返さないと。まさか、仲間に裏切られるだなんて情け無い。」


真剣な雰囲気で、ルイスに細かい状況を説明するベルトン。ルイスは、ふむふむと相槌を打つと無言で考える。と言うのも、奥さんは救出済みなのだ。


どうやら、バラバラの場所に連れて行かれた模様。


「厄介な…。だけど、見つけた?」


烏丸の不敵な笑みに、思わず控えめに微笑み言う。無言で、紙を渡されてルイスはニヤリと笑う。


「ルイス君、人質を救ったら僕は見捨ててくれて構わない。だから、君は自分を守ってくれ。」


「断る。それと、貴方に指図されたくない。」


ベルトンの言葉に、炎天神楽時代のロールをしながら一刀両断する。ここで、ベルトンはルイスの口調と態度に気づく。そして、懐かしそうに笑う。


「懐かしいね、《呪われた古のカタコンベ》の依頼の時を最後に見ないと思ってたけど。」


「煩い、無駄口を叩くなら帰る。」


ルイスは、索敵しながら檻から離れる。


「仕方ない子だなぁ、でも無理はしないでよ?お兄さんとの、約束だからね?あ、無視しないで!?」


遠のいて行く足音に、少し寂しさを感じながら言う


「今回は、ずっとそのノリでござるか?」


「今の僕は、悪者だからね…悪ぶっていくよ。」


ルイスの言葉に、忍者達は思わず笑う。どう、悪ぶった所で優しさは隠せない。ルイスは、無言でトキヤ達に指示を出す。そして、足早に去るのだった。


ベルトンは、置かれていた上着を着る。すると、あったかいことに気づく。ルイスが、置いた物だ。


「なるほど、君達は僕の護衛かな?」


もそもそと、ポッケサイズのスコルとハティーが顔を出す。そして、無言で頷く。ベルトンは、思わず嬉しくて震える。しかし、迷いも出てしまった。


「このまま、処刑されれば楽にはなれる。ルイス君達を、これ以上は煩わせたくないんだよね。」


「死による救済は、救済とは言わないでござる。」


烏丸は、素っ気なく言う。


「分かってる。けど、僕の為に良いのかい?」


すると、烏丸は呆れた顔をする。


「調子に乗るな。あの方は、もっと先を見ているでござるよ。何も、お主だけの為ではござらん。」


そう言うと、酔った聖騎士の方へ行ってしまった。ベルトンは、その言葉に驚き安堵した様に微笑みを浮かべた。そして、信じて待とうと決意した。




指示をもらった、トキヤ達は素早く人質を解放。アトリエに、避難させていた。後は、ベルトンのみ。


「じゃあ、本格的な革命を始めようか?」


ルイスの言葉に、全員が笑って動き出す。


「トキヤさん、暫く指揮をお願い。」


トキヤは、キョトンとしたが葛葉になったルイスを見て頷く。また、いつもお馴染みの単独タイム。


「さてさて、商売の時間です。」


「無茶するなよ?相手は、教会だからな。」


トキヤは、素っ気なく言うと指揮を取る。


「はい、油断せずに行きます。」


そう言って、子狐になると去るのだった。

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