第286話 僕と一緒に…

ルイスは、無言で本を見つめる。すると、マッキー達がノックして入って来る。ルイスは、気づかない程に深く思考を巡らせている。


「ルイス、単刀直入に聞くが…何が起きる。」


マッキーは、真剣な雰囲気で聞く。


「……革命が、起こるかもしれません。」


ルイスは、うっかり言ってしまう。そして、ハッとして勢いよく顔を上げる。全員が、驚いて固まる。


「ルイス、場所を移そうか?」


トキヤは、素晴らしい笑顔で言う。


「あ、いえ…これは、僕の予感ってだけで…」


ルイスの、何処か不安そうなオロオロした姿に、全員が根拠が有るのだろうと察する。意外にも、沸を切らしたのは海外メンバーであった。


無言で、ルイスを抱えるジェイド。


「え?」


間抜けた声で、抱えられるルイス。


「何処に行けば良い?」


トキヤを見て、素っ気なく首を傾げる。トキヤは、思わず笑ってからついて来る様に言う。ルイスは、慌てて子狐の姿になる。しかし、素早くジェイドは首根っこを掴み確保する。ジタバタする、子狐。


少しだけ、場の雰囲気が和む。子狐姿で、ジタバタ暴れて抗議する様に高い声で鳴くルイス。


しかし、花園に到着。


葛葉の姿で、不貞腐れたように座る。


「ルイス、言える事だけでも話せ。火種は?」


マッキーは、真剣に葛葉を見ている。葛葉は、ルイスに戻ると考える雰囲気である。トキヤとマッキーは、視線で会話して同時に頷く。


「もしかして、発言に制限があるのか?」


ルイスは、驚いてから深刻そうに頷く。それを見て、かわいそうな事をしたとトキヤ達は謝る。


「取り敢えず、引っかからない程度に話せるか?」


「…そうですね、少しだけ考えさせてください。」


ルイスは、秘密をバラさない様に考える。


「火種は、冒険者協会と教会との軋轢ですね。更にですが、それに貴族側が便乗して冒険者協会を攻撃している形です。今まで、本部ギルマスであるベルトンが跳ね除けて来ました。しかし、彼に弱みが見つかれば…容赦なく、協会と貴族達はベルトンを殺すでしょうね。ごめんなさい、これ以上は…」


「マジか…。」


思わず、マッキーから深刻な声が溢れる。


「ベルトンに、弱みがあるの確定かよ。」


トキヤも、ルイスの発言を解析して苦々しい発言。


「だから、皆さんを勧誘してみます。


ルイスは、素晴らしい笑顔である。


僕と一緒に、反逆者になりませんか?」


全員が、驚く。ルイスは、うんうんと頷く。


「ふふっ、言ってみただけですよ。」


ルイスは、疲れた雰囲気で笑い呟く。トキヤ達は、優しく微笑む。こんな、弱ったルイスは珍しい。ならば、兄貴分として可愛い弟分を守らなければ。


「ルイス、住民に嫌われる覚悟は出来たか?」


トキヤは、ニヤリと笑って言う。ルイスは、無言で驚いてから思わずクスクスと笑ってしまう。


「当然です、僕は悪役なのですから。」


その言葉に、同盟メンバー達も笑いをこぼす。海外メンバーも、ノリノリでやる気である。


「良かった、僕1人では無理な案件なので。」


「革命が、起きる前に物資を集めねーとな。」


マッキーは、素早く仲間に指示を出す。ルイスは、烏丸達にベルトンの護衛と教会の監視をお願い。


「なら、新しい装備を作って来るわ。」


シャルムも、元気よく飛び出して行った。ヴァンとジェイドは、breezeに泊まる事に。他の海外メンバーは、いったん革命が始まるまで帰る事に。


ルイスは、苦しげに息を吐き出す。言いたい事を、言えないのはかなりの負担だ。それに、とても怖い事でもある。トキヤとマッキーは、ルイスのそんな様子に何か出来ることはないかと考える。


「ルイス様、美味しい紅茶です。」


ランコルは、優しく微笑むと紅茶を渡す。しかし、ルイスは飲もうとしない。キリアが、シュークリームを出す。ルイスは、考える雰囲気でシュークリームを一口。しかし、すぐに思考の海に沈む。

 

「取り敢えず、夕食を作ろうぜ。」


バロンは、キリアを連れてキッチンへ。周りのメンバー達は、ルイスの邪魔をしない様に小声で会話する。ルイスは、ハッとしてシュークリームを食べ終わる。そして、紅茶を飲むと紙を取り出し書く。


カリカリと、ペンの動く音だけがする。


ルイスは、紙をふたつに折りたたんで机に置く。そして、葛葉になり子狐となる。


「ルイス、何処に行く?」


「ベルトンに、他の弱みがないか調べます。」


トキヤの言葉に、葛葉は答えると出て行った。


マッキーは、紙を見て固まる。ベルトンが、偽物だと書かれていたからだ。それで、納得する2人。


ルイスは、ベルトンの部屋に忍び込む。そこで、ベルトンの左腕の穢れを知る。ベルトンは、子狐に気づいていたが敵意がないので放置していた。


ルイスは、ベルトンの穢れた呪いの事で苦しむのだった。これは、本当に守れるのだろうか?っと。



それから、1週間後に革命が始まるのだった。



ルイスは、洋風な喪服をイメージしてデザインされた服を着る。白い手袋をつけて、歩き出す。


全員が、喪服を身に纏い歩き出す。


狙うのは、断罪場に向かうベルトンを乗せた馬車。烏丸達の報告を、横目で見つめながら深いため息を吐く。ルイスは、無表情に冷たい声音で命令する。


「かかれ…」


無言で、素早くメンバー達が動き出すのだった。


革命の火蓋が切られた…。

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