第277話 仮入団

春イベが、始まりました。取り敢えず、ギルドマスターの呼び出しが掛かったので、マッキーさん達各リーダーとギルド本部に向かいます。


「やあ、諸君…待っていたよ?」


ルイスは、無視する。ギルド本部マスター、ベルトンの事をルイスは嫌っていたからだ。それは、マッキー達も同じで無言を貫き通している。


「え、無視?無視しちゃうの?一応、俺ってSランク冒険者だしギルドで1番偉いのよ?ねえ?」


『黙れ、クズ…』


ルイス以外の、全員が声を合わせて言う。


「はーい、すみません。じゃあ、手短に言うよ。今回から、仮入団というのを入れてみた。君ら大きいクランは、最低でも2人は仮入団させて欲しいんだよね。勿論、それ以上でも構わないけど。勿論、初心者ボーナスの恩恵も受けられるし、報酬だってある。だから、どんどん仮入団させよーう!」


沈黙…。ルイスは、真剣な雰囲気で言う。


「僕達には、選択の自由があったはずですが?」


「ぐっ…。そう、そうなんだよね。やっぱり、君は丸め込めないか。ちょっ、無言で短刀に手を掛けるのやめて!?ごめん、ごめんなさい!」


あたふたしなが、土下座する爽やか青年ベルトン。


「それで?」


ルイスは、短刀に手を掛けたまま首を傾げる。その表情は、無表情に近い。それには、周りも固まる。


「あ、はい…。最近、ギルドに良く有名クランに入りたいけど、条件が厳しいとかいろいろ来てて。」


視線を逸らしながら、苦笑する。


「クランの加入条件には、いくつかルールと理由があります。それを、満たしていないから入れないだけです。それに、考えなしに新しいメンバーを増やせば、要らぬ争いの種にもなりかねません。お前ら大きいクランだから、そのくらいどうにかなるだろとでも、どうせ思っているんでしょうけどね?」


ルイスが、つらつらと言うと完全に白旗をあげる。


「それに、いきなり上位クランに入ろうとするのは図々しくないか?それに、俺達の活動の仕方だと、初心者が着いて来られないだろうし。何だ、俺達に初心者に合わせろと?それは、それでストレスになるぜ。身内ならともかく…、他人なら尚更にな。」


マッキーも、睨みながら言う。


「えっと、イベント期間だけで良いから!何なら、1人でも良いからよろしくお願いします!」


物凄く、必死なベルトン。 


「ギルド直属のクランに、頼んでは?僕達より、ランクは上ですし勿論ですが出来るんですよね?」


ルイスは、素晴らしい微笑み(目は笑ってない)。


「いや、その…ギルド直属だからZランクにしてるけど。実力は、A以下なんだよね。ここに、集めたクランは本当ならZランク相当のクランなんだ。」


「なるほど、やっぱりお前ら嫌いだな。そんな、贔屓をしたり騙したり理不尽を押し付けるから、俺達も協力的にはなれないんだ。帰る、くだらない。」


マッキーは、部屋を出て行こうとする。


「無駄な時間でした、春イベのノルマ終わるでしょうか?誰か、手伝ってくれません?」


ルイスも、深いため息をつき歩き出す。マッキーを含む、数人が手を挙げて参加を示すのだった。


「待って!待って!待って!」


ベルトンは、焦る雰囲気でルイス達を止める。


「お疲れ様でした、解散!」


ルイスの言葉に、全員が帰り出す。


「ルイス君は、他のプレイヤーを信じてないからって聞いてるよ。ルールや理由とか、聞きたい。」


すると、激怒の雰囲気を放つ。


「ギルドマスター、冒険者の軸は?」


「それは、自由だよ。けれど、君は…」


ルイスの目を見て、続きが言えなくなる。


「そう、自由です。しかし、お店をやっている以上は、そちらも手伝って貰わなくてはなりません。これは、自由を奪う行為です。そして、殆どの人がお店番に飽きて直ぐにクランを去ります。さすがに、少数精鋭の僕のクランでそれをやられると、評判的にも経済的にもかなりの痛手なのですよ。」


ルイスは、真剣な雰囲気で続ける。


「他にも大きな問題が有りますが、一から十まで懇切丁寧に教えないといけないですか?何なら、箇条書きにして後日ギルドに提出しても良いですが?僕だって、メンバーは欲しいのです。けれど、簡単に勧誘が出来ない理由があるのですよ。」


「分かった、じゃあやりたい人だけにしよう。仮入団可能店には、ステッカーを目立つ所に貼るように指示するよ。それと、ルイス君…その、申し訳なかった。けど、これも僕の仕事なんだ。」


ルイスは、無言で頷くと去る。


「ああー、また彼に嫌われちゃったぁー…」


「自業自得だろ。」


マッキーは、深いため息を吐き出すとルイスを追いかけた。ルイスは、苛立ちを戦闘でぶつける。


「ふぅ…、スッキリしました。」


「トキヤ、お宅のリーダー荒れてるから。」


マッキーは、様子を見に来たトキヤに言う。


「何があった、何が…」


事情を聞いて、トキヤは困った様に笑う。


「なるほど。取り敢えず、甘い物とお茶でも用意しとくかな。ルイスが、メンバー増やすか悩んでたのを知ってたのに…完全に、俺の失態だな。」


ため息混じりに、トキヤは笑うと一足先に帰った。


「いや、抉ったギルドマスターが悪いだろ。」


マッキーは、そう言うと龍人姿で暴れるルイスを見ている。火力全開で、魔物が地面にめり込み更にクレーターとなる。ルイスは、人に戻ってマッキーに近づく。マッキーは、ルイスに手を振る。


「ノルマ達成!さあ、帰るのですよ。」


上機嫌なルイスに、考えをやめる事にしたマッキー達。全員でお茶して、解散するのだった。


トキヤが、謝罪をすればルイスは笑う。


「取り敢えず、今は現状維持ですかね。」


「それが、良いだろな。」


トキヤも、頷くのだった。

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