第262話 バレンタインデー

瑠衣は、苦笑して困惑の声。


「何これ…」


靴箱に、ぎゅうぎゅうのチョコレート。今まで、こういう事が無かった為に困惑していた。


「チョコレートじゃん、良かったな。」


春都も、チョコレートを回収しながら言う。


「誰からか、書いてないんだけど…」


「なら、有り難く貰っとけ。」


ほら、俺のも書いてないし。っと、チョコレートを見せる。急に来た、モテ期に戸惑う瑠衣。


「あのさ、予想だけど教えようか?」


「ん?うん…」


苦笑した、春都に瑠衣は聞きたいと頷く。


「ぶっちゃけた話、神崎達はイケメン過ぎて高嶺の花な訳よ。しかも、神崎は彼女が居ると周囲に言ってるし。なら、次くらいに容姿が良くて神崎達と仲のいいお前に、白羽の矢が刺さった訳だ。」


「うん、よく分からない。」


真顔で、首を傾げる瑠衣。


「お前な…。色白でスタイル良いし、笑顔さえ見せてくれたら言う事なしのイケメンって噂を知らんのか。何気に、お前ってモテてるのよ?ただ、余り笑わないから距離を取られているだけでな。」


春都は、熱く熱く語るが瑠衣は微妙な表情。


「白羽の矢の話を、聞いた後だから余り嬉しくない

かな。取り敢えず、教室に行こう。」


10個?いや、それ以上あるだろうか?


「わお、瑠衣さんモテモテ〜♪」


春都は、机に置かれたチョコを見て言う。クラスメイトの女子が、更に持ってくる。瑠衣は、メモに名前を書いてから困惑した雰囲気で感謝する。


「あのさ、誰が持って来たか分かる?」


すると、数名の名前が出てくる。


「誰?まったく、知らない人なんだけど…」


「最初は、困惑するよな。分かる分かる。」


春都は、思わず笑うと鞄に自分のチョコを入れた。瑠衣も、鞄に入れて深い溜め息を吐き出す。


「そう言えば、今回のバレンタインイベントさ。戦闘は、珍しくなしだしゆっくり出来そうだな。」


気を取り直し、ゲームの話しを振る春都。


「そうだね、男性プレイヤーはする事ないかも。」


瑠衣は、暢気に頷いて教科書をなおす。




私は、チョコを渡せずにいた。ライバルが、とても多過ぎるのだ。牽制し合って、義理しか渡せない。


いつもクールなのに、時々天然で可愛らしい事もある文武両道な優等生。笑顔は少ないが、それは彼の性格が不器用だからだと皆んな知っている。そんな彼は、別クラスの神崎達と絡むと優しく笑うのだ。


そこに、ドキッとくる女子は多い…。


フリー•ライフ•リベレイションも、彼がやっていると聞いて始めてみたけどマルチゲーは苦手だし。いまだに、瑠衣君には会えてない。


義理として、机に置く事にした。


感謝する瑠衣君、私は義理だと嘘をつく…。


「えっと、雪音さんありがとう。」


形式上の感謝、そこに照れも何も無い。悔しい…。


「義理だから、気にしないで。」


笑顔で、泣きそうなのを我慢する。そう言えば、春華とかいう美女もチョコレートを渡していた。夏樹とかいう子も、義理チョコを渡していた。美術部の先輩達も、次々に渡しに来ていた。


焦る、とてもとても…


来る人の殆どが、モテ女ばかりだから。けど、瑠衣君は動じる事なく受け流している。瑠衣君、好きな人…居るのかな?か、彼女とかいなさそうだけど。




さてと、ログイン。今回のイベントは、チョコを貰うとバレンタインゲージが貯まり商品が貰えるかんじですね。最大ポイントに到達しても、10000ポイント事に5000G貰える様なのです。


そして、一瞬で最大ポイントを超えてしまいます。どうやら、同盟やフレンド女子さんから大量の義理と本命チョコを頂いた様なのですよね。


取り敢えず、見回りでもしましょうか。




さて、ログインしたけどさっそく囲まれたわ。チョコクレクレと男性プレイヤーが来たのだ。


断ったら、激怒して PVPを申し込んで来た。


PVPって、何かしら?どうすれば…


「それ、拒否するを押してください。」


男達は、怒った雰囲気でその人を見て固まる。


あ、あいつ終わったな。とか、初心者に嫌がらせするから…南無さん。とか、聞こえてきて戸惑う。


「それとも、代理で僕が戦いましょうか?」


すると、明らかに顔色の悪くなる男達。


「お、お願いするわ。」


すると、彼は優しく笑う。


「僕は、ルイスと言います。近くで、breezeという錬金術と喫茶店をしています。また、初心者応援店でもあるので、お気軽に来店くださいな。」


彼は、私とパーティーを組む。そして、承認を押す様に言う。そして、複数人を瞬殺してしまった。


「あの、お金とかドロップ品…」


「僕には、必要ない物なのであげます。ポーション以外は、ギルドで売り飛ばせば良いと思いますよ。それと、初心者装備を買うべきです。初期装備だとやはり、胸とかお尻が強調されますから。知り合いのお店を紹介するので、一緒に移動しませんか?」


下心のない、純粋に心配そうな雰囲気。


「ありがとう、助かるわ。」


お店の人は、とても優しいし装備も安くで可愛い物が手に入った。すると、ルイスさん?が言う。


「雪音さん、もう少し容姿を変えないと駄目です。名前も、本名だから自動非表示になってますし。」


自動非表示でも、パーティーを組んでれば見える。


文字化け状態で…


「びっくりしたわ、知り合いかと思ったけどパーティー編成中は見えるのね。なるほど、少し今ここで変えてみるわ。えっと、どう…かしら?」


相手は、気付いていない。本名が、見えないはずなのに名前と正体がバレている事に。


「はい、可愛らしいと思いますよ。」


その優しい笑顔に、思わずドキドキしてしまう。


「取り敢えず、お礼よ。」


そう言って、全てのチョコを渡した。


「あ、ありがとうございます。」


「もしかして、私の知り合いだったり…する?」


雪音あらため、セツナは首を傾げる。


「それは、秘密です。」


セツナは、ドキッとしつつ知り合いだと理解する。


すると、グレンとトキヤとルーカスが来る。ルイスは、セツナに手を振り編成から抜ける。そして、3人に笑顔で歩きながら近づくのだった。


「見つけたかもしれない…。けど…」


けど、けどぉー!好きな人が、ゲーム界で有名人だった挙げ句!かなりの、高嶺の花だった件!


勿論、この秘密は墓場まで持っていくけど。


持って行くけどぉ!何でなのよぉー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る