第259話 巻き込まれ革命

さてと、ここはアメリカサーバーです。取り敢えずは、冒険者ギルドで登録して依頼を確認します。


ふむふむ、納品依頼が多いですね。特に、ポーションや異常回復系の消耗品が多いです。後は、魔物素材ですか。まあ、取り敢えず気になるのは…


木材、種類・品質は問わない。一本、50G


最低金額…。しかも、普通の木材の最低金額です。余程、お金が無いのかケチなのでしょうね。


文章を読む限り、前者なのでしょうけど。


丁寧で、申し訳なさげな雰囲気が文面から伝わります。そして、依頼者名…バーズさん。どうやら、今はそれ程に有名ではない雰囲気です。


依頼を手に取ると、失笑がちらほら聞こえます。


なるほど、不遇職なのですね。しかし、彼らは木製職人の素晴らしさを知らない様です。


「おい、悪い事は言わん…やめておけ。」


青年が、親切心なのか心配そうに止めてくる。何でしょう、このイライラ感。かつて、日本サーバーでは錬金術師が不遇職でした。しかし、今では誰もが必死になろうとする役職です。上部だけの感覚で、不遇職だと決めつけて嘲笑って…カッコ悪いです。


「木製職人は、不遇職なのですか?」


ルイスは、笑顔で感情を隠して言う。


「知らないのか?なら、教えてやる。木製職人は、戦闘や補助にも向かない役職だ。木製品だから、熱や湿気に弱く武器も弱い。しかも、見ろよ最低金額だぜ?下手すりゃ、こっちが大損だぞ。」


なるほど、分かりました。


彼らが、木製職人の本質を見抜けないアホだった事が。こういう人は、話すだけ無駄なのですよ。そもそも、熱や湿気に弱いのは鉱物もですよ。それに、木製職人なら熱や湿気対策くらいしている物なのです。まあ、言ったところで価値観が変わる事など無いので、無視して依頼を受ける事にします。


それに、木製職人と僕の相性は抜群なのです!


これなら、目的も邪魔される心配は無いのです。むふふ、ラッキーでした。テンションが、思わず上がってしまいましたが、木材を売る事にしました。


さて、let's go!マップを開いて上機嫌に笑う。


「ちゃんと、忠告したからな!俺は、セセリ。何かあったら、基本的にここに居るから頼れよ!」


青年は、焦りつつも言う。


「馬鹿だな、カモれそうか?」


「良いな、それ。」


馬鹿にした雰囲気の2人を、セセリは睨む。


「それは、やめといた方が良いと思うよ。」


コーラを飲んでいた、青年は苦笑して言う。


「柚木の旦那、どういう事だ?」


セセリは、キョトンとしている。


「あの人だけは、敵対しちゃいけないから。カモにする?無理無理、絶対に後で死ぬほど後悔する事になるよ。あの見た目で、騙されるやから多いけど、あの人は初期プレイヤーで僕達より大先輩だよ?」


思わず、困った雰囲気で笑う柚木。



*柚木

アメリカ留学中の、日本人大学生。日本サーバーにも、良くログインしておりbreezeファンでもある。中規模戦闘クラン、ビッグボムのリーダーで日本食大好き。しかし、料理が出来ないらしい。


*セセリ

柚木の学友で、ゲームでは無知ではあるが心優しい青年。ビッグボムの副リーダーで、日本食大好き。お寿司が、一番のお気に入りなのだとか。



さてと、ここがバーズさんのアトリエ…。何というか、ボロボロの看板と手入れされてない庭。本当に開店しているのか、疑いたくなるお店ですね。


では、行ってみるのです!


「こんばんは、バーズさんですか?」


あれ?えっと、驚いて固まってしまいました。それにしても、ガラガラな店内です。商品棚には、何も置かれていません。しかも、設定はクラン。つまりは、仲間が居る事になりますが灰色表示…。


なるほど、これはこれは…


白が、メンバー

灰が、メンバーであるがそうでない

黒が、脱退


灰色は、裏切り者と覚えて下さい。クランに所属しながら、他のクランに所属している表示なので。ちなみに、2つのクランを掛け持ちするのはマナー違反であり、モラル的にもよろしくありません。


これは、厄介そうですね。


取り敢えず、この件は後回しなのです。


さてと、そろそろ我に戻って欲しい所ですが。固まったまま、微動だにもしません。えっと?もしもーし、早く再起動してくださいな。バーズさぁーん!


「えっと、人違いでしょうか?」


「すまない、バーズは俺だ。」


よし、再起動しましたね。素材を倉庫に運び、本題に入ろうとした時…革命が始まりました。


う、運営さぁ〜ん!マジですか、ちくせう…。


「やれやれ、巻き込まれましたか。取り敢えず、バーズさん…僕と一緒に組みませんか?」


取り敢えず、仲良くしときたいです。


「だが、お前に迷惑が…」


「僕の名前は、ルイスと言います。僕の目的は、バーズさんに弓を作って貰う事です。けど、革命が終わらないと物資が揃わないでしょう?」


困惑してますが、僕は組む気しかないです。葛葉にチェーンジ、さていろいろ思考が交差しますね。


「和装は、目立ちますね。まあ、良いでしょう。」


「逆に、良いのだろうか?」


まったく、困ったものですね。


「言ったでしょう?僕にも、目的が有るのです。その為に、協力し合いませんか?って話なのです。」


すると、やっと笑顔を見せてくれました。


「分かった、よろしく頼む。」


さあ、楽しんで行きましょう!


木製職人が、素晴らしい職業だと理解させる良い機会でも有ります。ふふん、ぎゃふんと言わせるのですよ。勿論、裏切り者さん達も…ね?


「では、行きましょうか。この姿の時は、葛葉とお呼びくださいな。商人として、頑張るのですよ。」


待ち切れません、手を引いて歩きました。


「俺も、頑張ってみる。」


「その、気持ちがあれば大丈夫ですよ。」


葛葉は、笑うと革命参加のプレイヤー達に近づくのだった。バーズは、少し怯えた雰囲気であった。

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