第258話 とある男の悩み

俺の名前は、バーズ。木製職人で、主に家具や木彫り人形そして木皿などを作っている。昔は、弓を作り最高の木製職人と有名だった過去を持つ。


あの時は、楽しかったなぁ…。


ベナ、カメリ、デンテ、ポルコの全員がホームに帰って来て。クエストに、誘ったりしてくれた。


なのに、何故だ?何故、俺は孤独になった…


いや、分かってはいたんだ。受け入れられないだけで、本当は知っていた。奴らが、俺を利用していた事なんて。信じたかった、今は素材すらも集められない孤独な身だ。友達が、助けてくれるから生きている様なものだ。けど、頼りっきりは嫌だな。


俺は、最後の素材で木彫り人形を作る。


「こんばんは、バーズさんですか?」


これが、俺の運命を変える出会いになる事を、俺はまだ知らずにいた。思わず、息を呑む。


日本人形が、目の前に居たのだ。


とても、落ち着いていて優しい声音と表情。見た目も、絶世とまではいかないが整っている。何と呼ばれる、和装か知らないが動きやすそうだ。


可愛らしい、と言う言葉が似合う仕草の少年だ。


「えっと、人違いでしょうか?」


少しだけ、困惑した様子に我に戻る俺。


「すまない、バーズは俺だ。」


「これ、依頼品の木材です。」


少年…いや、もしかしたら青年か?取り敢えず、ストレージから大量の木材を出してくれた。


「こんなに、ありがたい。だが、良いのか?」


確か、俺はギリギリまで低い値段で設定したはず。


「木材は、フレンドも僕も余り使いませんから。在庫整理した時に、大量にあった木材をストレージに移してたの忘れてまして。人の為になるなら、いくらでも差し上げますよ?倉庫に、運びますか?」


流石に、ただは申し訳ない…


そんな時、革命クエストが始まったのだった。


革命クエスト:エルフ国…人魔対戦革命!


「やれやれ、巻き込まれましたか。取り敢えず、バーズさん…僕と一緒に組みませんか?」


彼は、深いため息の後に明るく笑う。


「だが、お前に迷惑が…」


「僕の名前は、ルイスと言います。僕の目的は、バーズさんに弓を使って貰う事です。けど、革命が終わらないと物資が揃わないでしょう?」


ルイスは、苦笑してから狐になった。


「和装は、目立ちますね。まあ、良いでしょう。」


「逆に、良いのだろうか?」


すると、ルイスは優しい声音で言う。


「言ったでしょう?僕にも、目的が有るのです。その為に、協力し合いませんか?って話なのです。」


悪意のない、どこか純粋そうな温かい雰囲気。


「分かった、よろしく頼む。」


そう言うと、ルイスは嬉しそうに笑った。俺も、つられる様に笑ってしまった。この時、俺は知らなかったんだ。彼が、どういう存在なのかを。


そもそも、他サーバーの情報なんて知らない。


「では、行きましょうか。この姿の時は、葛葉とお呼びくださいな。商人として、頑張るのですよ。」


俺は、頷いた。ルイスは、俺の手を引き笑った。こういう、ワクワクした感覚はいつぶりだろうか?

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