第244話 君を笑顔に

今日、12月23日はプロメアの誕生日である。しかし、最近のルイスはクリスマスのイベント打ち合わせ、レイド受付などで慌ただしくしている。


そして、アトリエの風景に変化なし。


プロメアは、忙しくて誕生日を祝う余裕がないのかと落ち込む。ガイアは、考えてからプロメアを気分転換に誘う事にする。進化して、2人とも中学生くらいの姿になったので、いろいろと買い直しが必要になったのだ。メウロも、一緒に行くと言う。


3人が去ってから、キリア達は苦笑している。


「あれ、絶対に勘違いしてるだろ?」


バロンは、心配そうに言う。


「たぶんな。心苦しいが、準備が終わらないから構ってもあげられない。ルイス様も、何週間も前から仕事と並行して準備していたしな。」


キリアは、深いため息を吐き出した。


「あのルイスが、プロメアの誕生日を祝わないはず無いのになぁ。まあ、早く誤解を解ける様に準備を進めるか。ルイス達は、雪のせいでログインが遅くなるみたいだし。電車が、遅れているみたいだ。」


トキヤは、そう言いながらも手を止めずにチャットを打っている。全員が、頷くのだった。




プロメア達は、シャルムの店で冬コーデの服を買うと冒険者ギルドへ。依頼報酬を、受け取りに来たのだ。男性は、プロメアに釘付け。と言うのも、成長した事で女性的な魅力をプロメアは放っていた。


「あれ、プロメア達…依頼か?」


マッキーは、暢気に笑って挨拶をする。


「今日は、報酬を受け取るだけ。」


ガイアは、少しだけ困った雰囲気で言う。


「そっか。まあ、そうだよな。でも、帰らなくて大丈夫なのか?今日って、プロメアの誕生日だろ?」


マッキーは、心配する様に言う。プロメアは、少しだけ落ち込んだ雰囲気で座ると言う。


「パパ、忙しそうだし誕生日は祝わないかも。」


すると、マッキーは殴られた様な衝撃を精神的に受ける。そして、思わず机に突っ伏すと呟く。


「うん、やらかした…俺らのせいじゃん。でも、ルイスが居ないと話が進まんしな。それにしても、そう誤解したか。さてさて、どう話すかな。」


「マッキーさん、大丈夫?」


ガイアは、キョトンとしている。マッキーは、立ち直り座り直す。そして、安心させる様に言う。


「OK!OK!取り敢えず、打ち合わせとか全て終わってるし、今日はルイスも予定は余り無いはず。」


すると、プロメアは期待する様に眼を輝かせる。ガイアは、少しだけホッとした雰囲気だ。メウロも、優しく良かったねと笑う。ほっこりな雰囲気。


「プロメアちゃん、今日が誕生日なの?明日は、イブだし連続お祝いだな。何か、大変そう。」


その言葉に、プロメアはまた落ち込んだ。素早く男性プレイヤー達が、その発言をしたプレイヤーを連行して行く。奥から、変な声がしたが全員無視。


「そんなに、お祝いしたらお金かかっちゃう…。」


マッキーは、思わずツッコミを入れる。


「いやいや、それは気にしなくて良いだろ。何せ、breezeは生産クラン1位なんだぜ?当然、稼ぎも1位だ。だから、お金に困った事なんて無いだろ?特にルイスは、恐らくプレイヤー1の金持ちだぞ。」


すると、周囲のプレイヤー達は頷く。そして、プロメアを励ます様に声を掛けている。


「でも、準備が大変…。」


「なあ、プロメアは同盟のお食事会の準備をどう思う?確かに、準備は大変かもだけどさ。」


マッキーは、優しくプロメアに聞く。


「楽しいよ。とっても、楽しくてワクワクする!」


プロメアは、真剣に考えてから笑顔で言う。


「なら、皆んな同じだ。だから、そこら辺は気にするな。じゃないと、ルイス達に失礼だぞ?」


うんうんと、優しく頷いて笑う。


「うん、マッキーお兄ちゃんありがとう!」


プロメアは、少しだけ明るく笑う。しかし、聞いていたプレイヤーが考える雰囲気で言う。


「もしかしたら、クリスマスと同時に祝うんじゃないか?12月後半の、誕生日あるあるだけど。」


「あー、あるあるだよな。誕生日ケーキとクリスマスケーキが同じで、同じ日に祝うやつだろ?」


マッキーは、素早く右側のプレイヤーに飛び蹴り。セロンが、左側のプレイヤーの腹パンチ。鮮やかなな連携に、ガイアとメウロは思わず拍手する。


「やっぱり、今日は…でも、うん…」


プロメアは、小さく何か呟く。


「プロメアちゃん、気にしなくて良いのよ?」


シャルムは、全力でフォローする。


そもそも、普段は最前線を駆け抜ける彼らが、始まりの街の冒険者ギルドに居る時点でおかしいのだ。しかし、気が動転していて冷静さに欠けるプロメアは、とてもじゃないが理解が出来ない。


「もう、考えるのやめる。」


「だったら、今日だけ我儘になればどうだ?」


後から、トキヤが笑いながら近づく。


「我儘?」


キョトンと、プロメアはトキヤを見る。


「そうそう。たまには、我儘を言ってもあいつも怒らんだろ。お出掛けに誘って、いろんなお店を見て回って荷物持ちにでもすれば良い。」


すると、後から足音がする。


「報酬だけ、受け取りに来たぜ。」


楽しそうに、勢い良く入って来るグレン。


「お帰り、何とか電車は動いた様だな。」


トキヤは、優しく笑い言う。


「ルイス、家の近くで渋滞に巻き込まれたみたい。けど、あと10分で家に着くってさっきLINEが。」


グレンは、報酬を受け取りながら言う。


「だってさ、プロメア。」


「私、お家に帰る!」


そう言うと、素早く冒険者ギルドを出て行く。ガイアは、困った雰囲気で追いかける。メウロは、慌てて2人を追いかけるのだった。


「おいおい、何を吹き込んだ!」


グレンは、思わずトキヤを見る。


「すまん、ルイス。時間稼ぎを、お願いする。」


合掌しながら、遠い目になるトキヤ。


「なるほど、意味わからん。説明しろ!」


グレンに、説明中…


「なるほど。取り敢えず、俺も手伝う。」


そう言うと、グレンも走り出すのだった。


「なら、ルイスがプロメアを連れ出した時点で俺達も準備に参加だな。チャットで、連絡してくれ。」


「了解、じゃあ俺も行かなきゃだ。」


そう言うと、トキヤもバタバタと出て行く。周りの人達は、それだけで理解した。そして、安心する。




プロメアは、ルイスがログインするのを部屋で待っていた。ルイスの部屋には、もふもふ大集合。


最初に反応したのは、リルとソルである。


プロメアは、立ち上がると気合いを入れる。


我儘、我儘なのである。でも、我儘って?取り敢えず、駄々をこねてみる?何か、幼稚な様な…


ええい!こうなったら、当たって砕けるの!


ルイスは、ゆっくりと目を開く。それを見て、プロメアは勢い良く走り出す。しかし、スリッパが大き過ぎたのか、右足のスリッパを左足で踏んでしまった。勿論、そのままの勢いで転けてルイスの上に倒れる。ルイスから、くぐもった呻き声がする。


「きゃああ!ごめんなさい、パパ!」


プロメアの悲鳴に、驚いた様にトキヤとグレンが来る。ルイスは、起き上がるとため息をつき。


「大丈夫、ノーダメージです。」


お腹を押さえながら、笑顔で言うルイス。


「ルイス、流石に無理がある。」


トキヤは、突っ込みを入れる。


「うん、嘘だな。」


グレンも、頷いている。


「パパ、死んじゃダメー!」


「ルイスの兄貴は、そんな柔じゃないっすよ。」


ルーカスは、笑いながら言う。


「死なない、死なない。と言うか、そんな簡単に死ぬ様なステータスしてねぇよ?安心しろ。」


グレンは、少し減ったルイスのHPを見て言う。


「それで、プロメア。どうかしましたか?」


ルイスは、優しく笑いプロメアを見る。


「我儘…。私の我儘に、付き合ってパパ!」


すると、トキヤはお願いのジェスチャーをする。グレンも、指で1と示す。ルーカスは、申し訳ない雰囲気で飾りを見せる。全てを察し、笑うルイス。


「仕方ないですね、良いですよ。」


すると、プロメアは心から嬉しそうに笑う。


「プロメア、その格好で行くんですか?」


プロメアは、服を着替えに部屋に走った。そして、1時間だけルイスと買い物を楽しんだ。


「プロメア、僕は買い物した物を直してきます。花園に、お菓子を置いて来てくれませんか?」


プロメアは、頷いてお菓子の皿を受け取り走る。


花園の扉が開くと、クラッカーが鳴り。


『誕生日おめでとう、プロメア!』


プロメアは、驚いて固まるが嬉しそうに笑う。


「プロメア、誕生日おめでとうございます。さあ、始めましょうか主役は早く座ってください。」


ルイスが、優しく微笑むとプロメアは元気良く頷いた。そして、ハッとしてルイスを見る。


「クリスマス…」


もしや、クリスマスの方が無くなるのかと。


「クリスマスは、一緒に準備しましょうね。」


ルイスが、優しく言うとプロメアは笑顔になる。


「うん、私も頑張る!」


全員が、優しく見守っている。今日1番の笑顔に、同盟メンバー達も満足するのだった。

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