第243話 日常と親離れ

瑠衣は、クリスマスイベントの確認をする。すると隣に、眠そうに春都がやって来る。


「おはよ、眠た過ぎる…」


「春都君、おはよう。また、夜遅く迄してたの?」


欠伸をして、席に座る春都をキョトンと見る。


「あはは…、セロンさん達にノリで着いて行った俺が悪いんだけどな。いろいろと、動き的に人間やめてないか?どうやったら、あんな動きできんの?」


瑠衣は、目を逸らしてから考えて。少しだけ死んだ目で、春都を励ます為にアドバイスを送る。


「βテスターは、化け物か変人か曲者しか居ないと思った方が良いよ。少なくとも、同じ人間だと思ってたら精神的に疲れるし。セロンさんは、戦闘狂で強い敵ウェルカム系のぶっ飛んだ化け物だし。」


すると、乾いた笑いを浮かべる春都。


「じゃあ、ルイスさんもなのかな?」


うっかり、春都は聞いてしまう。


「さあ、知らないけど。人伝に噂では、β時代は曲者で毒舌なクソ生意気キャラだったみたい。」


瑠衣は、スマホを直してから暢気に言う。


「クソ生意気…、想像がつかない。」


春都は、驚きながらあの聖人の笑みを思い浮かべて言う。瑠衣も、同意する様に頷いて続ける。


「けど、生産のトップで戦闘もそれなりに出来たから、人望もあったとか。それに、間違った事は言わなかったみたいだし。意外と、中身はまともな人なのかな?とは思う。ロールだと、予想かな。」


春都は、ふむふむと頷いている。


「つまり、本来の性格がアレなのか。」


ちょっとちょっと、春都君?アレって、何ですか!アレって!ナチュラルに、酷く有りません?そりゃあ、聖人顔でトラップに嵌めたり、ノリでボスに特攻させたりしましたが…。そんな風に、言われる筋合いは少ししか無いのですよ!デデン!


「僕は今の所は、生産系ブッ壊れキャラだと予想しているかな。まあ、それだけな筈はないとは思うけど。今は、キャラも戦闘スタイルも変わったらしいし。周りは、変人だと思っているみたいだよ。」


まるで、動揺せずに他人事の様にサラッと言ってのける瑠衣に、無言で驚きつつも頷く春都。


「良く、調べてんのな?」


「それは、強いプレイヤーはかっこいいし、誰だって憧れない?僕だって、F LLは大好きだし。」


瑠衣は、首を傾げてからキョトンと言う。


「確かに、俺もいろいろ調べてみようかな。」


春都は、楽しそうに笑う。


「程々にね?」


瑠衣は、そう言うと本を取り出す。しかし、本を取り出すと会話してくれなくなるので、素早く回収する春都。瑠衣は、驚きに思わずキョトンとして固まっている。春都は、思わず笑ってしまう。


クールなのに、天然さがでて可愛いリアクション。


「頭に、テープを貼られた猫かよ。」


プルプルと、震えながら言う。


「僕を、猫に例えないで。良く言われるんだ、自由気ままで愛想のない猫みたいだって。」


瑠衣は、ため息を吐き出している。


「分かるなぁ…。」


「春都君?」


ここで、今日初めての笑顔を見せる瑠衣。


「スミマセンデシタ!」


素早く謝り、その笑顔から視線を逸らす春都。瑠衣は、深いため息を吐き出すとやれやれと本を読む。




バイト終わりに、マスターにコラボメニューの試食をお願いされる。思わず、緩む表情にマスターは優しく微笑む。後から、他のメンバーにも試食をお願いするそうだ。瑠衣は、感想を書いて帰った。




さあ、ログインしたら何をしようか?


ルイスは、ベットから降りてリルとソルをもふもふしながら挨拶。2匹とも、嬉しそうに目を細める。


在庫を確認して、ポーションのストックを追加。


3人は、遊びに出掛けて行った。ルイスは、知っていた。本当は、3人が遊びに行っている訳では無い事を。3人は、breezeという巣から自ら飛び立とうとしている。大人に、なろうとしているのだ。


ルイスは、深呼吸する。


数年単位で、戻って来ないのだろうなと。


「ホーエンハイムに、会いに行きましたか。」


「メウロは、獣王国の騎士団長と会ってるな。」


トキヤは、掲示板を見ながら言う。


「ガイアも、精霊王の所に行くってさ。」


グレンは、珈琲を飲みながら言う。


「まあ、何にせよ親離れの時期だよな。」


トキヤは、優しく微笑むと言う。


「そうですね。応援しか、出来ませんが。」


ルイスは、ソファーに座りクリスマスイベントを確認している。そして、深呼吸すると笑顔で言う。


「なら、クリスマスと正月イベントは彼らの思い出となる様に、楽しい時間を過ごすのが目標ですね。今更、彼らの意思は揺るがないでしょうし。」


「だな。」


トキヤは、笑顔で頷く。ルーカスも、優しく頷く。


「良いっすね、俺も手伝うっすよ!」


「ルイス、プロメアの誕生日もな?」


グレンは、暢気に言う。


「勿論なのですよ。」


ルイスは、落ち着いた雰囲気で笑う。




年が明ければ、3人は出て行くつもりだ。まだ、意思表明や相談を受けていない。言い出し難いのか、先に弟子入り先に行ってしまうミスをしている。


保護者の許可なしに、師弟関係にはなれないのに。


恐らくだが、今回は断られるだろう。ルイスは、3人が自ら話すまでゆっくり待つ事にした。

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