第242話 過去のクエストと可能性
ルイスは、3人が全回復すると同盟メンバーに謝罪をしに行った。ついでに、早期撤退する事も。全員が、プロメア達の無事に安堵したり喜んだり。
「分かった、取り敢えずお疲れ様ルイス。」
マッキーは、優しく笑うと言う。
「はい、マッキーさん達も頑張ってください。」
ルイスは、転移門で始まりの街に戻る。ちなみに、3人には部屋で反省して貰っている。
「お帰り、かなりお疲れだな。」
「トキヤさん…」
トキヤは、荷物整理が終わったのかゆっくり来る。
「なあ、プロメアが魔女プロメテアを顕現したんだって?完全に偽物だと、ルイスは思ってるか?」
真剣な雰囲気で、トキヤはルイスを見る。
「……狂気の傀儡人形ですか?そのクエストのシステムが、プロメアにも適応するならば完全な偽物とは言い切れません。もしかしたら、本当に…。」
ルイスは、少しだけ俯いてしまう。
ストーリークエスト:狂気の傀儡人形
ルーデン公爵は、娘リリアンナを事故で亡くした事で悲しみに苦しんでいた。それを見た友人、アルダンは1人の人形職人ヤマを紹介した。
そして、娘そっくりの人形を作り出した。その作りは、その人形が生きている様な雰囲気を放つ。
しかし、人形は人形だ。
あの、優しい笑顔を向ける事も、楽しげに笑う声を発する事もない。ルーデン公爵は、更に絶望した。
そして、狂った公爵は怒りに人形職人を殺した。
人形職人は、失望させた事を謝罪して申し訳ない表情で死んでいった。彼は、心からの職人だった。だから、満足させられなかった事を悔やんだのだ。
公爵は、そこで正気に戻るが死んだ者は帰らない。
再び、公爵は自分の過ちに後悔に狂う。それは、人形にも移ってしまうくらいであった。
プレイヤーは、狂気の傀儡人形を撃退させる。
そして、人形は涙を流すのだ。娘は宿らなかった、しかし確かに魂が宿っていたのだ。しかし公爵は、娘とは違う人形を受け入れられなかった。
プレイヤーは、公爵と戦い正気に戻す。
すると、傀儡人形が庇う様に立ち1人の人形を召喚する。すると、召喚された人形は公爵を殴る。
「お父様、何て愚かな事を!」
それには、本物の娘リリアンナが宿っていた。涙ながらに、怒りを表す娘に公爵は崩れ落ちた。
傀儡人形の名は、リアンナ。リリアンナの名前を、受け継いだ名前だ。傀儡は、リリアンナの胸を殴るとコア取り出した。公爵が、悲鳴をあげる。
そして、自分の胸からコアを取ると倒れながらも入れ替えた。リアンナのコアが、床を転がる。リリアンナは、慌てて起き上がりコアを転がった人形に入れたがリアンナは動かない。リリアンナは、コアを出そうとした時にリアンナのコアが割れた。
リアンナは、リリアンナが入れ替えない様に、自ら命を絶ったのだ。アイテム、【壊れた人形の心】をプレイヤーは手に入れる事が出来る。
リリアンナは、涙ながらに大切そうにコアを抱き締めるのだった。という、悲劇の物語である。
当時のプレイヤーは、誰も救われないこのクエストに怒り、運営にストーリーの変更を要求する程だ。
結局、ストーリーは書き換えらた。
職人は殺される前に急いで国から逃げた。そして、入れ替えに成功しリリアンナとリアンナは姉妹の様に仲良く暮らしました。という、胸糞展開が削除される展開となった。しかも、公爵はリアンナを娘として受け入れた事にもなっているのだ。
そして、名前の継承で稀にリリアンナとリアンナと同じ現象が、かなりの低確率で起こるバグが起きていた。しかし、修正されたはずである。
ルイスは、ホーエハイムの事を思い出す。
彼も、削除されたのに生きていた。つまり、バグが復活している可能性も否定は出来ない。
しかしながら…
「プロメアの想像が、やはり半分くらいは入ってそうですよね。何せプロメテアは、絶壁ツルペタ幼女顔のおっとり天然娘でしたし。まあ、狡猾な所はまんまプロメテアでしたけど。想像補正って、ある意味ですが凄いですよね。まったく、本当にです。」
いきなりの、ルイスの毒舌にトキヤは固まる。
「えっと、娘相手にその言草は良くないぞ?」
取り敢えず、苦笑してから言う。
「大丈夫です。プロメテアが、過去に僕を可憐な中性的で人たらし魔な錬金狂いと言ってましたし。更には、知識欲の化身とか本の魔神とか…。」
トキヤは、心の中で思う。
[えっと、間違ってはいないな。多分だが、多くの人に慕われるルイスを見て、取られるって捻くれた結果だと思うぞ?人たらしについては、恐らくだが(天性の)がぬけてるだけだろ。後半も、貶している様でさりげなく褒めてるぞ。まったく、本当に親子だな。まあ、ここは黙っておくか。]
深いため息を吐き出し、トキヤは苦笑する。
「トキヤさん?えっと、大丈夫ですか?」
ルイスは、キョトンとトキヤを見ている。
「そりゃ、嫉妬もするわな。無自覚なのがな…」
トキヤは、そう呟くと歩き出す。
「え、トキヤさん?今なんて、いいました?」
「何にも。ただ、毒舌が復活してないか?」
ルイスは、考えてから頷く。
「ありゃ、本当ですね。が、頑張って直します。」
「で、想像補正されてどんな姿だったんだ?」
ルイスは、思い出してから言う。
「豊満な女性の姿で、とてもグラマラスですかね。格好も、たにまが見えてましたしエロ系魔女でしょうか。とても、寒そうな格好でしたね。」
「その格好を見て、寒そうが感想かよ?」
トキヤは、思わず笑ってしまう。
「プロメテアに、重なって心配になったんです。もう冬ですし、あの格好では寒いでしょうから。それに、あんな格好してたら男達が寄って来ますし。」
ルイスは、本当に心配そうに言っている。
「ルーカスは、喜びそうだがな。」
ニヤニヤと、トキヤはルイスを見ている。
「大丈夫です、釘は刺しておきますから。」
素晴らしい笑顔で、ルイスは答える。
「つまり、半分は本物か…」
「うぐっ…、そうですね。そしていつか、100%プロメテアになるんでしょうね。今のプロメアでは実力不足で半分が限界だったのでしょう。」
ルイスは、認めたくないが頷きながら言う。
「こりゃ、2人とも嫁には行けないな。」
トキヤは、小さく呟く。
「その前に、また顕現させられるかは分からないのですよ。何故なら、ホムンクルスに魔女は存在しないからです。可能性としては、ホムンクルスクイーンの配下ですかね。プロメアには、負担が大きくてギリギリでしたし。そうなると、プロメアがクイーンになるまで顕現は不可能と思われます」
「バグ、修正されないと良いな。」
トキヤは、深刻そうな雰囲気だ。
「こればかりは、運営さん次第ですからね。」
ルイスは、困った雰囲気で笑う。
「だな。」
2人は、お茶をしてから解散したのだった。
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