第240話 忍び寄る坑道の悪意

プロメア達は、難易度の低い坑道へ来ていた。ちなみにだが、ルイスには坑道には入らない様に言われていた。けれど、同じ敵と戦い続けるのはあきる。


だから、1番難易度の低い坑道に来たのだ。


「だ、大丈夫かな?」


プロメアは、不安そうに歩いている。


「まあ、今のところは順調だよね。」


ガイアは、真剣な雰囲気で言う。


「やっぱ、帰ろう?ルイスさんに、怒られるよ?」


メウロは、2人に言うが断られてしまう。


しかし、3人は知らない…。この坑道が、普通の坑道でない事を…。そして、弱き者には容赦なく牙を剥くダンジョンと同じ仕組みをしている事を。


ルイスは、知っていた。だから、駄目だと言った。


ここは、マナスポットが多く存在し魔物も産まれやすい。そして、強くなり易いのだ。そして、ダンジョンには、罠があるが坑道では変動と言う形で異変が起こる。変動に会えば、生存は難しいだろう。


ここでは、マナスポットや変動により高レアリティな素材が手に入る。しかし、それを得るにはルイス達のレベルに追いつかなければ不可能なのだ。


「何だ、こんなものなのかな?」


そして、ここで恐ろしいのがダンジョンや特殊坑道などの資源の源泉は意志がある事が多いのだ。


相手を油断させ、隙を作らせ弱った所で…


最悪で、無慈悲な地獄を見せつける。


そんな事を、知るはずもなくプロメア達は進んで行く。坑道の意志は、残酷に微笑むのだった。




ルイスは、焦っていた。坑道から、帰ってすぐにマッキー達からプロメア達が坑道に向かったと聞いたからである。どうやら、マッキー達も人伝に聞いたらしく混乱していた。どの坑道に、入ったか分からないと泣きそうにシャルムがルイスを見る。


「どうやら、1番難易度の低い所ですね。」


ルイスは、ステータスを確認して居場所確認する。


「なら、俺達も!」


全員が、立ち上がる。


「駄目です。」


ルイスは、真剣な雰囲気でピシャリと言う。


「皆さんは、自分のするべき事をしてください。ここからは、父親として僕が動くべきです。トキヤさん達も、今は休んでください。大丈夫、もしも手助けが必要なら同盟チャットで呼びますから。ね?」


ルイスは、優しく微笑むと全員が頷く。深呼吸すると、ルイスはリル達を呼んだ。リルは、ルイスの表情を一瞬で読み取り乗り易い体勢になる。


ソルは、心配そうにルイスに寄り添う。


「フィン、万が一の時のために待機。ソルは、リルに着いて来てください。最悪、3人が動けない可能性もあり得るので特殊な鞍を着けますね。」


ソルは、無言で頷く。スコルとハティも、耳をペタンとさせて座っている。フィンは、2匹を背中に乗せて落ち着かせる。そして、ルイスを見て鳴く。


まるで、ここは任せろ。そう言う様に…。


ルイスは、ソルに特殊鞍を着けるとリルに乗る。2匹は、かつてない速さで街を駆け抜けるのだった。


まったく…、あの子達は…


ルイスは、3人の無事を祈るのだった。




プロメア達は、敵が強くなり苦戦をしていた。


「まずい、方向感覚が…狂う。」


ガイアは、息を乱しながら言う。


「敵が、徐々に増えてない?どんどん、奥に追い込まれてる。奥には、行きたくないのにそうせざるを得なくなってる。まずい、どうすれば…。」


オロオロと、メウロは泣きそうな表情で言う。


「どうしよう、もう薬品が切れちゃう…」


絶望的な雰囲気で、プロメアは震える。ガイアも、険しい雰囲気で脱出方法を探る。しかし、全員が冷静では無いため何も思い浮かばないのだ。


「い、嫌だ…死にたくない。死にたくないよ。」


魔物に刺され、動けない体でメウロは泣き出す。プロメアは、メウロを庇う様に錬成壁を作り出す。


坑道の悪意は、徐々に死を引き寄せていた。


「ごめん、僕がマスターとの約束を破らなければ。本当に、ごめんなさい。僕も、死にたくないな。」


プロメアとガイアも、かなりの負傷をしてしまう。重傷のメウロは、言葉すらも話せない。


「ごめんなさい、パパ。」


【あら、もう諦めちゃうのかしら。】


何処からか、優しい声音で女性の声がする。


「だって、もう…動けないもん。」


プロメアは、泣きながら怒る。


【あら、私だって生まれた時から動けなかったわ】


女性は、軽い雰囲気で笑う。


「え?」


プロメアは、固まる。そして、つぶやいた。


「まさか、プロメテアお姉ちゃん?」


【ピンポーン、良く解ったわね。それよりも、情け無いわよ?本当に、パパの娘なのかしら?】


少しだけ、呆れた雰囲気で励ます様に女性は言う。


「でも、薬はもう…」


【あら、私達は何だったかしら?錬金術師よ!そして、ここは素材の宝庫でもあるわ。ナビゲートするから、上手く着いてきなさい。まだ、プロメアは動けるはずよ。何せ、パパの最高傑作だもの!】


その言葉に、プロメアはふらふらと立ち上がる。


「それで、2人の命が助かるなら!」


気合いを入れて、立ち上がったプロメアに、ガイアは驚きメウロは止めたそうに手を伸ばす。


【よく言ったわ!流石、パパの娘で私の愛しい妹。でもね、私は貴女にも確実に生きて欲しいわね。】


励ます様に言ってから、慈愛の声で後半を言う。


「プロメテアお姉ちゃん、行くよ!」


【任せて♪】


プロメアは、走り出したのだった。

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