第232話 妖華蔓延る廃坑スタート

取り敢えず、噂の廃坑にやって参りました。


まだ、入り口ですがすごい言葉に出来ない何かを感じます。危険だと、行くなと本能が言ってます。


ルイスは、思わず後退りをしてしまう。


「ルイス、頑張れ。俺達も、頑張るからさ。」


グレンも、冷や汗ながらに言う。


「まあ、死ぬ時は一緒っすよ。」


ルーカスは、苦笑しながら言う。


「我々、ルイス様達の為なら命を賭けられます。」


キリアの言葉に、住民達全員が頷く。


「此処でのルールです。まず、優先事項は命です。命を賭けるくらいなら、這いつくばってでも逃げてください。仲間を連れ出せるのなら、連れて行ってくれたら尚更に良しです。逃げるのは、負ける事では有りません。次への一歩を、確実に踏み出す為の踏み台です。分かりましたか、キリアさん達。」


ルイスの、少しだけ怒った真剣な表情に、キリア達は嬉しそうに笑い謝罪する。ルイスは、無言で頷くと続ける様に複数のルールを言う。


仲間思いな、心からの言葉に心も落ち着いてくる。


「そういう所だよな。こういう、仲間思いでカリスマ性を持っているの知ってたから。手放さない様、いろいろと裏で手を回してたんだ。炎天時代はその証拠に、生産職は全員がルイスの事を尊敬して従ってたからな。ルイスが居れば、揉め事を起こす前に回避してたし。本当、この可愛い系天然カリスマ聖職者が…。ファンが、増えたらどーすんだよ。」


トキヤは、深いため息を吐き出して早口で言う。


「あはは、凄い言いようっすね。」


ルーカスは、楽しそうに笑う。


「こいつ、天性の人たらしだよな。本人に、自覚が無いのがまた…な?クールだと、コミュ障だが。」


グレンは、明後日の方向を見て言う。


「ん?そこで、こそこそ何を話しているんです?」


ルイスは、キョトンと首を傾げる。


「いや、落盤事故とか起きなければ言いなって。」


トキヤは、素晴らしい笑顔で言う。


「ひでぇー、なんか凄い酷いぞ。」


グレンは、笑いながら言う。


「おいおい、裏切るつもりか?」


トキヤは、冗談っぽく言う。


「何か、良く分かりませんが…元気になったのなら何よりですね。さあ、行きましょう!」


ルイスは、優しく微笑む。


[おう!]


全員が、頼もしく答える。


入ろうとすると、坑道の壁を叩く音がする。


「うあぅ…、幽霊?幽霊なのか?」


変な声を出して、カタカタ震えているグレン。


「んー、ラップ音にしては…違和感があるっす。」


ルーカスは、真剣な雰囲気で言う。


「ノッカー」


ルイスが、思わず呟けばトキヤは思い出した様だ。


「けど、あいつらって精霊だよな?」


ガイアは、壁に手を置き目を閉じる。


「入り口は、まだそこまで影響が酷くないみたい。だから、ノッカー達は此処で入ろうとする人達を追い返そうと音を立てているみたいだよ。」


ノッカーは、コーンウォール地方の鉱山に棲むとされる妖精の一種で、その姿は人間の鉱夫の服装をした小さなスプライト(精霊)であったそうです。


自分たちのために、錫や金などを掘っていたが人間の鉱夫にも伝えたとされてます。


善意のあるゴブリンまたは鉱山の精霊で、鉱夫達が穴を掘っている時、「コンコン」と岩肌を叩く音をたて、鉱夫達に良質の鉱脈を知らせるとか。時々、その姿を見せる時もありますが、ノッカーは私生活を覗かれるのを嫌っているので、見られると鉱山から出て行ってしまう。そうなると途端に鉱山が枯れてしまうので、その姿を覗いてはならないとされています。他の良い妖精と同様、プライヴァシーを尊重し、採掘したものの「10分の1」をとるという条件をのみ、気前の良い者へは辛うじて接触をすることがあるそうです。良い精霊さんですよね。


この精霊たちとよい関係を築くために坑道のなかでののしり声を上げたり口笛を吹く、十字を切る等は控えたといいます。ノッカーはこれらのもので気分を害するとされたからです。また、ある怠け者の鉱夫、バーカーが彼らを観察した所によれば、彼らは安息日、クリスマス、万聖節には休暇を取るとか。


彼らへ、獣脂と食べ物を備える習慣があるそう。


ルイスは、獣脂と食べ物を置くと言う。


「心配、ありがとうございます。でも、どうしても行きたいんです。どうか、止めないでください。」


すると、ガイアは驚いた表情になる。


「マスター、その…彼らが呼んでる。けど、マスターにだけ来て欲しいみたい。姿を、見られたくないから。だから少しだけ、進んで話してみて。」


ルイスは、頷くと無言で歩いて行く。


『頼みがある、逃げ遅れた仲間を助けて。ノッカーだけじゃない、ノームも取り残されてるんだ。』


ノッカーは、泣きながらルイスに言う。


「出来るだけ、頑張ります。」


『鉱夫は、真っ先に逃した。けど、逃すのを優先したノッカーやノームが…取り残されたんだ!』


妖華は、猛毒…恐らく、取り残されたならば…。


『妖華は、魔物を操る。精霊も、支配されているなら毒の影響を受けてないはずだ。』


ルイスの表情をみて、真剣に説明するノッカー。


「努力は、します。期待は、しないでください。」


ノッカーは、頷くと姿を消した。

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