第230話 カーバンクル

さてと、カーバンクルですね。


民間伝承においては、原典での姿が不明瞭なこともあり、姿はサルやリスに近い姿など一定していません。額に真紅の宝石を持っており、その宝石を手に入れた者は富と名声を得るといわれる。これが伝承における唯一の共通点として挙げられてますね。何人もの探検家が、カーバンクルを探し求めており、富と名声に関する伝承が生まれた後はさらに多くの探検家がカーバンクル捜索に挑んだがそうです。まあ、成功した例は確認されていないそうですが。


日本では、ゲームのキャラクターとしてある程度、知名度が高まっていますね。ゲーム内では、貴重なアイテムを持つ、多くの金が得られるなど、希少なモンスターとして扱われることが多いのですよ。


さてと、入ればノームがツルハシを構えてます。しかし、攻撃はせず通せん坊しています。


ルイスは、ノームに近づいて言う。


「どうしても、通してはくれないのですか?」


ノーム達は、うんうんと頷く。


ルイスは、試験管を出し開けるとノーム達は眠る。


「ごめんなさいね。」


そう言うと、ノーム達に毛布と食糧を少し置いて先を急ぐ。この世界のカーバンクルは、もともと魔鉱石を食べてしまう害獣でした。では、なぜこの国ではカーバンクルが守護幻獣なのか…


この国じたいが、大きな魔力溜まりだからです。邪龍戦でも話した、マナスポットであります。


そのせいで、魔鉱石が大きくなるのが早いんです。


カーバンクルは、多くなり過ぎた質の低い鉱石を食べる事で、鉱夫達と友好的な関係を築いてました。しかし、事件は起きてしまいました。


そう、落盤事故です。


うっかり、魔鉱石を食べ過ぎて坑道の側面の壁が崩れてしまったのです。焦ったカーバンクルは、一生懸命に鉱夫を助け出しましたが…。友好的な関係には、亀裂が入ってしまう結果となった訳です。


しかし、その仲を取り持ったのがノームなんです。


自分達が、落盤しない様に補強するから、どうか彼らを怒らないでとノームの長が言ったのだ。


それからも、トレジャーハンターからカーバンクルを匿ったり。色んな欲望の魔の手から、ノームと鉱夫はカーバンクルを守っていました。


その代わり、カーバンクルは希少鉱石が大きくなるのに、邪魔になる鉱石を食べた。他にも、坑道に魔物が入って来ない様に、撃退したりして鉱山の守護幻獣となったのですよ。これが、この鉱山の歴史。


しかし、もうカーバンクルは1匹しかいません。


僕達が、この世界を離れてから何があったか。誰もが、口を閉ざすので分からずじまいですね。


魔物は、居ませんね。ノーム達が、倒しました?


『心優しいお友達、いらっしゃい。』


大きな、白い毛のリスが優しい声音で言う。


「聞きたい事が有ります、他のカーバンクルは?」


『死んだよ。僕、1人になっちゃった…』


ポロポロと、涙を流して悲しそうに言う。


『ミリカとの約束だから、教えられないけど。』


ミリカさん?えっと、女性の名前でしょうか?


「ミリカさんって、誰なんだ?」


『神聖者の一人で、撲殺の聖女と呼ばれたヤバいドワーフだよ?聖職者なのに、喧嘩大好きなんだ。』


すると、全員が驚いた。


『妖華の咲く廃坑の先に、君達が知りたい真実があるよ。けど、君達で行けるかな?』


カーバンクルは、心配そうに見ている。


「それでも、行かなければいけません。」


ルイスは、真剣な雰囲気で言う。


『なら、僕を倒してみて。』


カーバンクルは、攻撃体勢になる。


「えっと、では胸をお借りします。」


『僕、神様のせいで不死身だから安心して。』


それでは、戦闘開始です!


カーバンクルは、ルイスに素早い蹴り攻撃をする。それを、グレンとトキヤが受け止め入れ替わる様に、住民達が一斉に攻撃する。ルイスは、バフとデバフをかけ聖域を作り出す。そして、グレンとトキヤを回復すると温存の為に待機する。


激戦する事30分…


『すごい、この実力なら行けるかも…』


カーバンクルは、嬉しそうに言う。


ルイス達は、疲れた雰囲気だがカーバンクルは息も切らしておらず元気だ。カーバンクルは、猫くらいのサイズになると、嬉しそうにルイスに抱きつく。


『お願い、彼女の遺品を取り返して…。僕は、精霊じゃないけど匂いが駄目。酔っちゃう…。そこの、獣人さん達も酔うかもしれない。だから、鼻と口もとはタオルが何かで隠す必要があるかも…。』


そう言いながら、特殊解毒の素材をくれる。




ちなみに、ノームを倒すと怒り狂って戦闘になる。


『よくも!僕のお友達を殺したなぁ!死ねぇ!』


負けイベントです。この場合、勝てません。ノーム達を、傷つけず無効化するのが条件みたいなので。




ルイスは、薬を作る為に宿に帰るのを提案。全員が頷いて、カーバンクルに果物を置いて帰る。


『君達の未来に、最高の祝福を…』


カーバンクルは、小さく呟くと目を閉じて座る。


『大丈夫だよ、あの精霊王子も居るし。にしても、怖かったな。挨拶で、抱きついただけなのに。』


鍛治師の家に居た、ノームの少年が言う。


『ノームの長リケ、お久しぶりだね。彼らは、この国を救ってくれるかな?見捨てたりしないかな?』


不安そうに、挨拶してから呟く。


『精霊王のお気に入りで、主神ゲレティーの信者。ゲレティー様は、信者は少ないけどその全ての信者が良い人だからね。ミリカも、そうだったし。』


カーバンクルは、目を開き祈る。


『『僕は、子達を信じてる。』』


2人は、微笑むのだった。

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