第217話 本気の戦い終わり!

さてさて、どう戦いましょう?


ヴァンは、剣を構えて葛葉を見ている。葛葉になると、龍人のスキルは封じられちゃうんですよね。


暫く睨み合いすると、ヴァンはジョブを変える。


「剣は、見切られてるから弓師(アーチャー)なら大丈夫だよね。龍人じゃなくても、手加減なんてしないよ。絶対、今度こそ勝つんだ…。」


そう言って、弓を構える。


「サキエル!」


そう、天使の名を持つ弓を…。


サキエルは、ユダヤ教やキリスト教における天使ですね。水を司る天使とされてます。ユダヤ教では七大天使の1体、キリスト教の智天使の1体とされる。


サチエル、ザドキエル、ツァドキエルとも呼ばれますね。西洋占星術ではサキエルは木星に結びつけられました。そこから、射手座、木曜日、富、慈善事業などと関連づけられる様になりました。


「なるほど、天使の名を持つ武器は世界に9つ。私が知る限り、槍のアルミサエル。大剣のアブディエル。短剣のアズライール。楽器のイスラーフィール。剣のザバーニーヤですね。槍と弓と大剣は、キリストの天使。短剣と楽器と剣は、イスラムの天使。残りの天使は…、いえ仏教では天使とは言いませんね。残りは、どんな童子がいるのやら。」


興味深い内容だったのか、静かに聞くヴァン。


「おいおい、かなり調べてんな。」


マッキーは、言う。ちなみに、槍の情報はマッキーから得たものだ。他のは、曖昧な情報だった。


「武器は、適当に当てはめてあるものもありましたね。さてと、頑張ってみましょうかね。」


水属性の弓を、回避しながらアズライールを抜く。


「雨矢!」


雨の様な矢が、葛葉に降り注ぐ。葛葉は、何を考えたのか爆弾を自分の近くで爆発させた。勿論、錬成壁を3枚爆弾の方向に置いて縮こまったのだ。


「おい、何してるんだよ!」


ビシャラは、思わず言ってしまう。爆風に、燃えながら散らされる矢。葛葉は、煙に隠れて音を頼りにヴァンに近づくと短刀を投げて格闘術で殴る。ヴァンは、回避するがそこに短刀が落ちてくる。しかし、弓でガードその時に弦が傷ついてしまう。


葛葉は、弾かれた短刀を手に取り構える。


ヴァンは、弦が傷つけられて焦っていた。いきなりに、耐久値が激減したからである。弦は、弓の生命線だ。なので弓幹(ゆがら)が、傷つくより損傷率が多くなるのだ、耐久値もゴリゴリと減ってしまう。


後、何回くらい弓が引けるだろう…。


ヴァンは、距離を更にとり弦を見る。少しだけ、傷にしては深めな痕が着いている。


まだ、戦えるよね?信じてるよ、サキエル!


サキエルは、答える様に弦を光らせる。


葛葉は、理解していた。ヴァンは、弓と矢を揃えているのだと。アズライールが、短刀と魔導書があるように弓と矢は別物なのだ。それを、合わせると強力なスキルを使える。さっきの雨矢も、通常より火力が違いすぎていた。爆弾でなければ、避けれない程だったのである。ならば、どちらか壊せば良い。


「雨切弓!」


威力の強く、早い弓に葛葉は回避を諦める。


凄まじい爆発と、砂煙に驚く周囲。ヴァンは、警戒している。奇襲は、拙いからである。


砂煙から、ノーダメージで葛葉は出てくる。


「嘘だ!絶対、当たってたはずだよ!」


ヴァンは、思わず葛葉を睨む。


「まったく、うるさいですね。」


葛葉は、深いため息を出してバフポーションを叩き割る。そして、短刀を片手にヴァンに攻撃する。ヴァンは、バックステップを踏みながら牽制矢を放っている。勿論、葛葉は、必要最低限だけ弾いた。


「チャージショット!」


ルイスは、子狐になり回避する。着地した瞬間、葛葉になりそのまま最大火力で攻撃する。


受け止めた弓幹が、ピシリと変な音を立てている。


「そ、そんなの狡い!」


「私、商人ですので。狡賢く生きなきゃ、商売にはならないのですよ。これは、本気の手加減なしの戦い。なので、なんとでも言ってください。」


葛葉は、小さく笑うと短刀で攻撃する。


「むぅー!水塵爆破!」


ヴァンは、必死に弓を放つが…。


「くっ…」


ついに、MPが切れてしまった。MPは、ポーションでしか回復方法がない。自然回復は、遅いからだ。


葛葉は、爆弾を投げる。


すると、ついにヴァンの弦が切れてしまう。ヴァンは、絶望的な表情で弓を見ていた。


「勝者、日本サーバーの葛葉!」


武器破壊で、葛葉の勝利である。


「ごめん、サキエル…。」


「もしや、武器強化をしてませんね?」


葛葉は、弓を見ながら怒った雰囲気で言う。


「だって、そのお金がなくて…」


葛葉は、ルイスに戻ると深いため息をつく。


「安心してください、バイト代は支払いますから。真っ先に、修理と強化するんですよ?」


無言で、うんうんと頷くヴァン。


「何か、ルイスって強いだけじゃないんだね。」


「狡賢いって事なら、聞く気は有りませんよ。」


ルイスは、そう言うと指輪を首に掛けて人間に。そして、トキヤ達の所へ歩いて行く。


「強いだけじゃなく、安心が出来る何かを持っている。これが、カリスマって言うのかな?」


ヴァンは、小さく呟くとウキウキした笑顔だ。


「さてと、これで終わりですね♪」


ルイスは、嬉しそうに言う。


「待ってくれ、戦闘スタイルとスキルについてを教えてくれ。ずっと、考えて来ていた事なんだ!」


「僕も、情報が欲しい!」


ルイスは、嫌そうな表情で運営に言う。


「これで、解散で良いですよね?」


「そうだな、元の世界へ戻そう。」


蒼夜の合図で、世界が壊れて元の世界になる。運営さんは、いつの間か消えていたのだった。

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