第215話 本気の戦闘

ルイスは、装備を戻すと指輪を外す。すると、蒼夜が現れて驚くルイス。隣は、外人2人と鬼崎だ。


「出来れば、俺達も見させてくれないか?実は、革命イベントの動画が日本に送られて来てな。今後の種族、それとスキルや設定の参考にしようと思ってな。せっかく、龍人3人が全力で戦うんだし。」


蒼夜は、優しくルイス達に聞く。


「俺は、構わない。」


「いーよ。」


2人は、ゆっくりとルイスを見る。


「どうぞ、参考になるかは分かりませんが。」


トキヤ達は、ルイスがあっさり頷いたのに驚く。すると、蒼夜の合図で世界が塗り替えられる。ジェイドは、槍を構えている。ルイスは、詠唱する。


「これは、呼び潮…。」


すると、阻止すべく走り出すジェイド。


「身近に、輝くマナの煌めき。」


ルイスは、無表情に続ける。


「灯せ灯せ、生命の灯。」


すると、光の粒が現れ渦を巻く様な感じになる。ジェイドは、焦り槍を投擲した。加速して飛来する槍を、回避して詠唱を続ける。次の瞬間には、ジェイドの手元に槍が帰ってくるが数秒でも時間はかかってしまう。なので、ルイスは詠唱を止めない。


「我は、素を巡らせる起源の錬金術師…。我が、言葉は自然の理なり…。いざ、呼び起こせ元素の輝き。満ちれ、満ちれ…。」


すると、髪がフワリと靡く。足元には、錬成陣が広がる。ルイスが、このフィールドを支配した。


完成した瞬間、飛んできた槍は聖結界で防ぐ。聖結界に、亀裂が入ったが時間稼ぎには充分だ。


「チッ…」


「では、参ります。」


ルイスは、素早く前に出る突き出された槍を受け流し、後ろに下がりながら斜め上に振り上げられた槍を回避して短刀を突き出す…素振りを見せる。


ジェイドは、自分を守る様に原初の白龍を発動。


しかし、ルイスは直ぐに突き出す素振りをやめて、空歩を発動しジェイドの頭上を飛び越えたのだ。そして、死角から素早い一撃を与える。


短刀を突き出す、フェイントに騙されたのだ。


「ぐぅ…」


ルイスは、素早く距離を取ると試験管を取りだす。そして、床に叩き付けると素早さUPと火力UPである。そして、ちなみに双神の刃はリセットしてあった。どうやら、サーバーを超えると使用回数がリセットされる様である。なので、アズライール発動。


ジェイドは、アズライールを阻止しようとしたが、ルイスが魔法で牽制するので接近ができない。


呼び潮がある限り、ルイスはMPを消費せずバフを盛ることが出来る。更に言えば、MPを消費して更にバフを盛る事も可能だ。だが、それをする様子はない。ルイスは、短刀を片手に突っ込む。


また、原初の白龍で受け止めようとするが、ルイスは原初に当たる直前に原初の黒龍を発動させる。次の瞬間に、原初の白龍は砕かれルイスは原初の黒龍の効果を切る。そして、格闘術で蹴り飛ばした。ルイスはまた距離を取り短刀を握り直す。


すると、ジェイドは槍を変える。


「くそ…」


ルイスは、息を整えてから走り出す。


「天の槍!」


空から白い槍が、降ってくる。ルイスは、加速してスレスレを回避していく。降ってこれる槍の数は、だいたい15本で着弾位置の軌道修正は出来ない。ならば、次が降るまでの数秒で更に加速すれば良いのだ。ルイスは、短刀を強く握り原初の黒龍発動。


ジェイドの槍を受け流して、思わず発動した原初の白龍を力技で砕く。ジェイドは、素早く距離を取ると更にスキルを使おうとしている。ルイスは、原初の黒龍を解除して体勢を整えている。


「穿ち雷光!」


槍が地面に刺さり、雷の波状攻撃が目眩しの光と共にルイスを襲う。ルイスは、空歩で上に逃げ音を頼りに攻撃する。まだ、目眩しは消えない。


ジェイドは、今だとばかりに攻撃する。ルイスは、聖結界と錬成壁を上手く使い防いでいく。


そして、目眩しの効果が消える。ここでも、ルイスは異常回復が出来たのにしなかった。ジェイドは、手加減されてるのかと不機嫌になる。


勿論、そんな事はない。


ルイスは、敢えて温存した戦い方をしているのだ。何故なら、互いの力が互角なら長期戦になれば困るのはルイスだからだ。だから、温存するしかない。


ルイスは、ジェイドの突き前に出ながらの振り払いを受け流して回避する。そして、原初の黒龍発動。


「させるか!」


原初の白龍を使い、また距離を取るジェイド。


今ので、ルイスに3回も原初の白龍を壊された事になる。ジェイドは、弱くはないだが相手が悪い。


そろそろ、ですかね。


ルイスは、追撃せずに距離を置く。すると、ジェイドのHPが削れ始めたのだ。そう、原初シリーズは代償に満腹度が消費される。考えて使わなければ、満腹度はゴリゴリと削られ飢餓状態になるのだ。


「く…」


ジェイドは、ポーションを飲む。


「焼け石に水ですよ。」


ルイスは、静かに告げる。普通のポーションでは、HPを回復する事は出来ても満腹度は回復しない。


飢餓状態である限り、死ぬまでHPは削れ続ける。


ちなみに、異常回復のキュアポーションでさえ飢餓状態は回復出来ないのだ。何故なら、飢餓状態は異常に含まれないから。過食もそうなのだから。飲んでも、ミリ単位で減りが穏やかにならない。


「さあ、HPが無くなるまでが勝負です。」


ここで、初めてルイスは微笑んだ。


周囲は、ゾッとしたが黙って見守る。ルイスが、ジェイドに食事の隙を与える訳がない。


しかも、ルイスはMP温存していて満腹度もまだ残っている。呼び潮は、まだあるしアズライールも解除していない。もはや、ルイスのする事は時間稼ぎで充分なのだ。窮鼠猫を噛むと言うが、牙が後何本くらい残っているのだろうか?


ジェイドは、焦りながらも全力で攻撃する。ルイスは、攻撃が当たっても回復してしまう。


もはや、ジェイドに勝ち目は無かった。


ルイスは、原初の黒龍を発動させるとトドメを刺したのだ。その事に、トキヤはほっとする。


このまま、HPが削れて死ぬなど悔やみしかないだろうとルイスは理解していた。最後に、ルイスがトドメを刺す事で精神的なダメージを緩和したのだ。


「勝者、日本サーバーのルイス!」


ルイスは、息を吐き出すといつもの雰囲気で呟く。


「うーん…、勿体ないですね。」


「何がだよ?」


トキヤは、優しくルイスに言う。


「彼の戦闘スタイル、あとスキルについてです。」


すると、全員がルイスを見ている。


「詳しく、知りたい。」


ジェイドは、ルイスをしっかり見ている。


「うっ…、話したくないのです。」


ルイスは、そう言うとトキヤの後ろに隠れる。


「ルイスの兄、爆裂はもともとは槍の使い手だったからな。まあ、いろいろ思う所もあるんだろ。」


トキヤは、笑う。すると、エレナが来る。


「兄弟子様、私からもお願い!」


「錬金王カリオストロ弟子、いったい何者だ?」


すると、トキヤは苦笑しながら言う。


「炎天神楽の生産頭、鬼才の名匠。錬金王カリオストロの一番弟子。生産職最強の異名を持つ男だ。」


すると、全員が驚いてから納得してしまう。


「見習い魔法使いが、大賢者に喧嘩を売ったもんだな。何せ、ルイスもβテスターだしな。」


ジェイドは、このゲームが始まって暫くしてからやり始めていた。経験の差が、運命を分けた。


「トキヤさん、話過ぎです!」


ルイスは、オロオロと言うのだった。


「次は、僕の番!ジェイドも、2回戦ったし2回戦いたい。葛葉に、リベンジしたいんだもん!」


「そうですね。まあ、分かりましたが。アズライールが、リセットされているのですが…。」


すると、蒼夜は頷く。


「全員、リセットされてるぞ。フェアな、全力の戦いをしたいんだろ?良い、参考になるな。」


こうして、ルイスはフィールドに戻るのだった。

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