第208話 革命イベント3日目

ルイスは、内心は緊張しながらヴァンの前に立つ。出来れば、このまま葛葉の姿でやり過ごしたい。ルイスが、目立つのはいろいろと困るのだ。


「んー…、交渉って?」


ヴァンは、敵意もなく笑う。


「もう、中立派を襲わないと誓ってください。」


すると、ヴァンは驚き少しだけ落ち込む。


「僕だけじゃ、判断が出来ない。一応は、持ち帰るけど貴族達がやりたい放題だからね。いろいろ、計画を狂わされてジェイドも苦しんでいる。」


ヴァンは、考える雰囲気で苦々しく笑う。


「でしょうね。そういう時は、物理で話し合いをした方が早いですよ。獣王国は、戦闘力の強さで階級が決まりますから。ぶっちゃけた話、殴って黙らせるのが1番手っ取り早いのですよ。」


葛葉の言葉に、ヴァンは驚いている。


「それと、仲間にするならヴィトニ公爵家です。彼らは先祖代々、王族を殺す事を許された一族ですから。そのため、表上は居ない一族扱いされてます。けれど、仙樹林(せんじゅりん)に住んでいます。」


葛葉は、過去のイベントなどを思い返して言う。


「なぜ、そんな事を教える。」


「それは、秘密です。」


すると、ヴァンは剣を一閃する。葛葉が引けば、前に出て上から下に一閃。しかし、葛葉は接近すると腹に拳を入れる。振り下ろされる前に、素早く拳を入れたので剣撃はキャンセルされる。つまり、葛葉はノーダメージである。葛葉は、座り込んだヴァンを見て驚く。HPが、削れ始めるヴァン。


「満腹度が、ゼロになって飢餓状態になったと。」


「もう、無理!こんなの、無理ゲーだ!」


ぴえーん!っと、なりながら言うヴァン。


「ちょっと、物資補給部隊の奇襲を止めましょうかね。これでは、本命を撃てませんし…。」


葛葉は、思わずやりすぎたと目を逸らす。


「帰る!けど、情報はありがとう。」


どうやら、座っている間に嘘かどうか調べていたらしい。別に、嘘は言ってないので葛葉も頷く。


「えーと…、帰るまでHPが待ちますか?その、凄い勢いで削れてますけど。ポーションとかは?」


「むぅー!無理だ、何処かで補給しないと。」


ヴァンは、怒った雰囲気で言う。


「えっと、僕から買います?」


「お金ない!」


え?え?ちょっ、え?待って、待ってくださいな。どれだけ、追い詰められているんでしょう…。


「一応、そちらの経済状況をお聞きしても?」


「生活に必要な物は、自分で買ってくれって感じ。食糧も水も、全て貴族達に持っていかれる…。」


これは…、酷い。しかし、それも先程の情報で何とかなるはず。取り敢えず、これで戦況がフェアになるはずです。これ以上の干渉は、利敵行為なのでここで引きましょうか。取り敢えず、水と携帯食だけ置いて撤退しましょう。それと、5000G置いて情報料とします。にしても、これだけ好き勝手にされればジェイドさんもお手上げでしょうね。


まあ、僕がルイスなのもバレてなさそうです。


「いいの?やった、ありがとう!」


目を輝かせ、ヴァンは食事している。


「にしても、あっさりとバラしましたね。」


「どうせ、隠しててもバレる。革命軍には、優秀なお狐様とロゼの懐刀が影で動いてるだろうから。」


そう言って、真剣な雰囲気で葛葉を見るヴァン。


「あはは…、私はただの商人ですよ。」


そう言うと、葛葉は笑って流す。


「こっちも、聞きたい。ルイス、どんな人なの?」


ヴァンは、探る雰囲気だ。流石、抜け目がない。


「……そうですね、いつも花を飛ばしそうなくらい能天気でもふもふした動物が好きなロリコンでしょうか?後は、食べる事が大好きな食いしん坊。」


その言葉に、水を噴き出しそうになるヴァン。


「おや、失礼。」


「じゃあ、テントに引き篭もっているのは、連れて来た動物をもふもふしてるから?何それ、使えないやつじゃん!しかも、食いしん坊とか…」


あり得ない!っと、驚いているヴァン。しかし、これは葛葉もといルイスの情報操作である。


「ロゼさんは、優秀ですから何とかなりますよ。」


葛葉は、笑って手を振り中立派の敷地へ向かう。ヴァンも、素早く立ち上がり帰るのだった。

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