第187話 交渉決裂

さてと、どーしたものでしょう?あ、別に思い詰めている訳では有りませんよ。運営にお願いして、話し合いをして平和的な解決をはかりました。


結果、話し合いは断られ喧嘩を売られましたと。


「その、ごめんなさい。まだ、学生さんである君にストレスを感じさせるなんて。」


飛梅は、頭を下げる。


「この程度なら、面倒なだけでストレスは感じないです。前の方が、やばかったですからね。」


ルイスは、書類仕事をしながら言う。


「君、私が言うのもあれだけど苦労人だね。」


飛梅の言葉に、ルイスは苦笑する。


「取り敢えず、何故に全権利を渡したかなど教えてください。情報をまとめて、考えてみるので。」


「実は、仕事の都合でベトナムに2週間だけ滞在する事になって。ネット環境が、安定していない場所だったから、誰かにクランを任せようって…。」


ルイスは、無言で続きを促す。


「レナに、全権利を渡したけど、裏切られて追い出されちゃった。今のリーダーは、レナの彼氏だよ。その、友達だとずっと思ってたのに……。」


飛梅は、悲しそうに俯いている。ルイスは、静かに飛梅を見ていたが少しだけ考えて言う。


「何故、自分に嘘をつくのですか?」


「…え?」


飛梅は、驚いてから固まる。


「レナさんが、貴女を利用しているのを、理解しているのに気付かない振りと。それが、そんなのが果たして友達と言える存在だと断言できます?」


すると、飛梅は少しだけ怒る。


「別に、それとこれとは…」


「逃げないで。」


ルイスの真剣な顔に、息を呑む飛梅。


「だって、レナちゃんは学生時代から唯一の友達だったんだよ。それを失ったら、まだ一人になっちゃう…。1人になるのは、怖いし寂しいよ…。」


泣きそうな、弱々しい声にルイスは険しくなる。


「トキヤさん、リアルで飛梅さんをカウンセリングに通わせた方が良いかも知れません。もはや、これは洗脳といっても過言では無いですよ。」


トキヤも、余りのレナへの過信に戸惑っている。


「取り敢えず、信頼できる女性陣に協力をお願いしてみる。しかし、なるほど…。レナは、仕事場を移動させるべきだな。今度、上司に相談しとくか。」


「飛梅さん、本当に君は1人なのですか?」


ルイスは、無言で頷いてから言う。


「え?その、どういう事?」


「もし、君が本当に1人なら何故に相手が好き勝手に動けないんでしょう?普通なら、ホームの物を売ったりホームを売るものですよね?」


ルイスは、書類仕事を再開する。


「え?え?売られてない?どういう事なの?」


「君の右腕が、必死に抵抗しているというのに。これでは、ホームを守ろうとしている彼女らがかわいそうです!左腕たる彼らも、影で貴女の帰る場所を守ろうとしているのに、貴女は何を怖がる必要があるのですか?本当の仲間、友達を見捨てますか?」


ルイスは、静かに飛梅に説教をする。


「そんな…。そんな、私…皆んなが…。」


「貴女は、貴女が思うほどに孤独じゃない。今の貴女は、盲目的で周りを良く見れてないんです。こんなにも、貴女を慕い頑張ってくれる仲間が居るんです。見せかけの友情なんて、要らないでしょう?」


ルイスの言葉に、涙が溢れて無言で頷く飛梅。


「もともと、ダリア同盟は足りない所を支え合い、高みを目指す事を目的に作った同盟だよ。上位クランに、妨害や攻撃を仕掛ける為の同盟じゃない。」


飛梅は、まだ怖いのだろうが気持ち奮い立たせる。


「貴女は、彼女達と合流してください。同盟の顔である、貴女が居るだけでも違いますからね。」


ルイスは、優しく微笑む。


「ありがとう、何か心に突っかかっていったものが取れた感じだよ。まだ、怖いけどこの壁を乗り越えないと前に進めない気がするから…」


「交渉は、決裂してますから。どの道、相手を潰す事には変わりありません。明日、不動産屋で待ち合わせしましょう。僕に、考えがあります。」


ルイスは、興味ないと切り捨て要件を伝える。


「分かった。私も、頑張ってみるよ。」


そういうと、飛梅は部屋を去るのだった。


「キリアさん、バロンさん…彼女の護衛を気付かれない様にお願いします。たぶん、心を折るか潰しに来るはず。さて、烏丸さんこんばんは。」


「例の情報を、届けに来たでござる。」


そう言うと、紙を渡すとドロンと消えた。ルイスは暢気に、紙を見て少しだけ考えて頷くのだった。

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