第184話 夏イベ6日目 レイド討伐戦

さてと、今回もやって来ました討伐の時間です。久しぶりの和服に、思わず心が引き締まりますね。


「おはよう、ルイス。」


マッキーが、笑顔で声を掛ける。


「おはようございます。」


「風シャボンってアイテム、使って一回試しに海に行ってみたけど…。ダメだな、打ち上げられる。」


マッキーが言えば、隣でセロンも頷く。


「ふむ…、どうしたものでしょうかね?」


ルイスが座ると、同盟の代表者達も座る。すると、フィンが鞍を着けて入って来る。そして、風シャボンを見ると右足を出して着けてという。


ルイスは、着けると体勢を低くして乗る様に言う。


既に、仲間は呼んであり待機状態だ。


フィンは、ルイスを乗せて海に全力ダッシュ。ルイスは、思わず悲鳴をあげるが風シャボンが動き、空気の泡が水に触れる前にルイスを包む。フィンは、スキルで泡を安定させて海中を飛ぶ。


「もしや、風属性の騎獣だけ可能なんですか?」


すると、そうそうとフィンは上機嫌に頷く。そのまま、今回のレイドボスの確認をして帰る。


「どうやら、今回の敵はクラーケンです。」


クラーケンとは、ノルウェーに伝わっていた海の怪物です。島と間違えられるほど巨大で、一度出会ってしまったら、一人残らず食べられてしまうという伝説がありますね。ちなみに、クラーケンはタコ類またはヒトデ類だと考えられてました。しかし、近年では学者達によりクラーケンはダイオウイカではないかと考えられる様になりました。


さて、海中戦はなるべく回避したいのですけど。


ルイス達は、大量の魚を放り投げる。すると、海面から出てくる巨大タコ。その迫力に、思わず全員が戦闘体勢になっている。ルイスも、苦笑している。


「でっ、でかい!」


悲鳴じみた声で、グレンは言っている。


「物理攻撃は、通らないから魔法かスキルを使ってくれ。MPは、こまめに自己回復でよろしく。」


マッキーは、真剣な雰囲気で言う。


「プロメアちゃん達、少しだけ緊張してない?」


セロンは、気遣う雰囲気でプロメア達を見る。


「まあ、過去のやらかしを引きずってるんだろ。」


マッキーは、少しだけ苦笑して言う。


「流石に、フォローは出来ないぞ?」


トキヤは、不安そうに言う。


「大丈夫ですよ。少なくとも、今のプロメア達は昔とは大違いです。その証拠に、敵との力量差を理解しています。前みたいに、無鉄砲な事はしないでしょう。それでは、始めましょうか。」


ルイスは、神託の御旗を取り出して堂々と言う。


『おー!』


蛸足が、ガイアに振り下ろされそうになる。プロメアは、小型爆弾を投げて爆風で蛸足を弾く。素早く回復薬をメウロに投げる。ガイアも、素早く回復補助を発動。メウロは、プロメアに襲いかかった蛸足をスキルで切り捨てる。ガイアは、仲間にバフかけプロメアは蛸足にデバフポーションを投げつける。


ルイスは、真剣にそれを見ていたが『合格』と心の中で言いながら静かに微笑む。そして、戦況をじっくりと見つめて考える。グレンとルーカスも、安定した戦いの様子に安堵する。そして、戦闘に意識を引き戻す。全員が、真剣に攻撃している。


クラーケンは、スタンプ攻撃をする。


プロメア達は、回避できずスタン(気絶)して動けなくなってしまう。そこに、蛸足が襲いかかる。


「リル!」


ルイスが、鋭くいうとリルは大きくなり蛸足を凍らせる。そして、勢いよく蛸足を噛み砕く。プロメア達が、立て直し出来る様にソルも噛みついて攻撃。


スコルとハティは、目を輝かせて見ている。


グリフォン軍団も、風魔法で補助や牽制をする。勿論だが、フィンが的確に指示している様だ。


プロメアは、気絶が切れると異常回復ポーションを2人に投げる。ルイスは、素早く3人を回復。すると、3人は武器を構えて真剣に攻撃を再開。


「まだ、少しだけ危なっかしいが、戦闘スタイルは固まっているみたいだな。これからの、成長に期待だ。流石、お前の娘なだけに解析力もあるな。」


トキヤが、暢気に剣を振りながら言う。


「本当はあの子、昔から解析力は凄かったんですよ?ただ、願望に素直で爆弾魔になってただけで。本当に、もったいないと思っていましたが…。」


ルイスは、バフを入れながら言う。


「苦労して、冷静さと判断能力を高めたな。」


グレンは、笑いながら言う。


「極めれば、かなり強くなりそうっすね。」


ルーカスは、大鎌で蛸足を切りながら呟く。


「私、魔力が少ないの。」


プロメアは、鞄からMPポーションを取り出しながら言う。メウロは、ヘイトを奪い防御の構え。


「牽制するから、回復して。」


「補助するね。」


ガイアは、防御力上昇のバフをかける。


こうして、撃退には成功する。ルイスは、深いため息を吐き出す。すると、フィンは隣りに着地。


「どうやら、第二ラウンドは海中神殿になりそうです。前に、うっかり落ちたダンジョンがある場所なのですよ。フィン、よろしくお願いしますね。」


そう言って、フィンの頭を撫でる。フィンは、『任せろ!』と小さく鳴いて体勢を低くする。全員が、自分達の相棒グリフォンに騎乗する。今回は、プロメア達も1人でグリフォンにのっている。


そして、海中にて…


クラーケンは、神殿前で待ち構えている。火属性は使えず、他の属性や攻撃も火力を削がれる海中エリア。上手く攻撃が通らず、悪戦苦闘する。


ルイス達でさえ、悪戦苦闘するのだ…。


プロメア達は、もっとひどい状態である。蛸足が、プロメアの泡を握り潰そうとしている。グリフォンは、必死に抵抗して空気を操り潰されない様に頑張っている。ここで、泡が弾ければ死んでしまう。


プロメアを乗せたグリフォンは、このままではどちらも死ぬと悟る。そして、ガイアのグリフォンに何とか近づき泡をくっつけると、嘴でプロメアを咥えて放り投げる。次の瞬間、泡が弾けて引き摺り込まれるプロメアのグリフォン。フィンは、動揺する。


「フィン、行くよ。」


ルイスの声に、フィンは冷静なり真剣に頷く。ルイスは、ホーリーショットを撃つ。海中で、光と闇だけが制限を受けない。そして、ルイスは通常は光でアズライールを使えば闇になる。


「大丈夫、まだ間に合うよ。僕を、信じて。」


ルイスの言葉に、加速するフィン。ルイスは、アズライールを使い攻撃。クラーケンは怯み、プロメアのグリフォンを手放す。フィンは、急いで仲間を掴むと急上昇して海面に仲間の頭を出す。


急いで、砂浜に引き摺り出す。気絶した、仲間に珍しく泣きそうな声で呼びかけるフィン。


「フィン、僕は薬師ですよ。任せてください。」


ルイスは、いつもの口調で薬師になり治療する。


「シャルムさん、任せてもいいですか?」


海中から、出て来たシャルムに言う。


「勿論、任されたわ。」


ルイスは、フィンを見る。フィンは、闘志を燃やしている。そして、再び海中へ。ガイアは、プロメアを乗せているので後ろに撤退している。


ルイスは、ガイアの泡に自分の泡をくっつける。そして、プロメアを回収した。


「さてと、仕切り直しましょうか。」


神託の御旗は、海中では使えない。なので、ルイスは静かに思考を巡らせる。そして、セロンとマッキーとトキヤを見る。3人は、警戒しつつ待つ。


「僕とグレン、ルーカスで全力攻撃。勿論、最大火力でゴリ押しましょう。保険で、ミスした時のタゲ取りをトキヤさんとマッキーさん、そしてセロンさんでお願いします。他メンバーは、そのまま攻撃を続行してください。次のステージがラストです。」


何とか、撃退して神殿にてラストバトル。ここは、空気のあるフィールドなので降りて戦う。海中でないので、神託の御旗を構えるルイス。


そこからは、一方的な攻撃が行われる。


そして、海面に浮かび砂浜に全員集合。戻って来る頃には、プロメアのグリフォンは起きていた。フィンは、素早く駆け寄り心配そうに声をかけている。


プロメアは、感謝と謝罪を言うのだった。


こうして、ギリギリながら勝利するのだった。

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