第142話 肩慣らし

封筒を開く、キリア。


俺の依頼は、ブラッティマウス(血塗れの鼠)か。とても、動きが素早く小回りの出来る魔物だな。昔の俺なら、数分でクリア出来る自信はあるが…


「やっぱり、少しだけ鈍っているな。まさか、ルイス様はそれを理解した上でこの依頼を?これは、全力で取り組まねば!ルイス様なら、失敗しても怒らないのは理解してるが…それは、甘えだしな。」


キリアは、少しだけ楽しそうに笑うと、ナイスを片手に走り出した。が、目的の素材であるルビーアイをドロップせず、苦戦する事になるのだった。




封筒を開くバロン


ん?俺の依頼は、サンダーバードの尾羽?これは、つまり空の敵をやれと?うーん、自信がないな。


「取り敢えず、対空装備の調達からか?」


バロンは、槍を投げたり投げナイフしたり…


「当たんねぇー…。うーん、ん?」


バリスタを見つけて、何度も位置を調整して撃つ。


「少し右か、風の動きを見るならもうちょい下。」


真剣な表情で、何度も何度も繰り返している。当たっても、ドロップしてなくて苦笑する。バロンは、こりゃまた面倒だと言いながらも笑うのだった。




封筒を開くランコル


さてさて、私の依頼は何でしょう?主人の事です、きっと皆さんの役に立つ依頼なはずです。


信仰の花を、開花させる事…。


なるほど、聖職者でも高い信仰心を持つ者しか咲かせられぬ花ですな。私も、ずっと信仰関係から離れていました。なので今一度、その信仰心を高めて心を磨けという事ですね。確かに、ルイス様の留守期間は私が、仲間を治療しなければなりません。


心を磨けば、治癒効果や効率…攻撃火力も上がります。ルイス様、私の為にありがとうございます。


「さあ、祈りの時間です。」


ランコルは、目を閉じて詠唱しだす。




封筒をレンジは開く。


俺は、余りホームに居ないけど可愛い弟分の依頼。頑張って、クリアしないとな。と言っても、俺はあと少しでこのゲームを辞めるんだが。


ルイス達は、少しだけ寂しそうだけど応援してくれた。妻が、妊娠して家事が大変そうだから、俺も少しだけど手伝う事にしたんだ。子供が産まれたら、子育ても大変だって聞くし妻だけに任せたくない。


だから、リーダークエストまで頑張る!


依頼は、お店での買い取り仕事だ。今まで、自由に行動してたんだ。頑張って、貢献するぞぉー!




封筒をアベルは開く


ルイスさんには、初心者の時に助けて貰った恩がある。それに、ホームには必要最低限しか顔を出してない。けれど、ルイスさんは除名しないでくれている。本当なら、除名対象なのにも関わらず。


取り敢えず、依頼はレッドストーン?


うっ…、知らない素材だ。後で、調べよう。


これが終わったら、迷惑をかけられないので抜けよう。これから、ログインが不定期なるし。


就活に失敗したので、頑張らないとだ!




封筒をカリオストロは開く。


何気に、アイツからの頼み事は初めてだ。付与とかも、俺からやっているし。さて、何が書いてある?


月光鉱石…。なんだ?ゴーレムを、作るにしては勿体無い素材だし、調薬には使えないよな?錬成ならば、使えるだろうが…。ルイスは、鉱物を使った錬成を余りしない。というか、少し苦手意識がある。


それは、ルーカスの得意分野だしな。


まあいい、取り敢えず月光鉱石は夜の一部の鉱山でしか採掘が出来ない。寝る必要がなく、騒がしいのが苦手な俺に配慮した依頼なんだろ。それに、俺は採掘が余り得意ではない。あいつ、良く見てるな。


カリオストロは、深いため息を吐き出した。




封筒をドラコフは開く。


ふーむ、虹色羽根か。厄介な…


あれって、チョウチョ系の魔物だよな?鱗粉が、うざいから嫌いなんだよ。でもカリオストロが、鱗粉もついでに集めとけって言ってたな。


何でも、錬金素材だからルイス様が喜ぶんだと。


それを聞いたら、少しだけやる気が出た。ルイス様って、遠慮してるのかお願いとかしてくれないし。戦闘関連も、無理強いはしないし出たい人はどうぞ的なノリだ。まあ、いつでも行くけどさ…。


さあ、ターゲット発見!行くぜ!




封筒をガリレフは開く。


さてと、ルイス君の依頼かぁ。どれどれ、浄化万能薬の調薬…。ルイス君、たまには毒以外も作れって事で良いのかな?うーん、素材集めからか…。


浄化水で、良くない?いや、ちゃんと意味があるのかも。彼って、そこら辺は抜け目ないし。


だとするなら、僕も本気で頑張ろかな。


たまには、大人らしいかっこいい事しないとね。ルイス君は、気にしないだろうけど好感度は下がる気がする。それに、このタイミングでの依頼だよ?


ガリレフは、思わず笑みを浮かべる。


「思いっきり、試されてるよね?」




封筒をローアンは開く。


俺の依頼は、英雄の証というアイテムだ。秘境の宝箱から、出てくる貴重品で運任せな獲得率だ。


はっきり言おう、運任せな依頼は嫌いだ!


あの、宝箱を開けてガラクタだった時の絶望感。また、繰り返し作業をしないとと思うとな…。


いや、ルイス君が依頼するなら意味があるのだろうな。彼は、普段がゆるふわなイメージではあるのだが。いざ、何かあるとそのカリスマ性を発揮する。


故に、彼のこの手の依頼は手を抜いてはいかん。


全力で、失敗したならば彼は何も言わないだろう。寧ろ、優しい表情で誉めてくれそうだ。だから、嫌いだろが苦手だろうが全力で任務を遂行する!




トキヤは、リルとソルとフィンに言う。


「ルイスから、お願いだ。聖星の砂、聖陽の欠片、聖月の雫。その、3つの素材を集めてくれ。聖星の砂は、フィン。聖陽の欠片が、ソル。聖月の雫がリルが集まる素材な。間違えて、討伐されない様に忠誠の光ってアイテムを装備して貰うな。」


忠誠の光

主人の居る、魔物の証。これを着けると、プレイヤーやNPC…同類の魔物から襲われない。仮に、襲ってもダメージや衝撃を受けない。攻撃を受ける瞬間に、霊体化になりすり抜ける。デザインも良い。


お値段は、課金なので500円。


主従の輪

NPCから、貰える革製の首輪。柄も無く、可愛らしさもない。色も、赤と黒と白のみ。主人の居る証。しかし、攻撃は普通に受ける。一応だが、NPCは攻撃しない。それ以外は、自己責任である。


ルイスが、課金するの初めて見たかも。まあ、俺が頼らないばかりに、被害を出してるからな。


取り敢えず、3匹も出て行ったし店番はレンジが居るから。俺は、倉庫の整理して、様子見ついでに一狩り行くかな。よし、そうするか!


その前に、ご飯落ち。


「ルイス、ちゃんと仕事はしたからな。」


伸びをして、ログアウトするトキヤだった。





イギリスサーバーside


プロメアは、本と睨めっこしながら素材を確認。唸りながらも、時折に爆発させながらも頑張る。


「うーっ、何が違うのぉ?」


台パンしつつ、もう一度本と睨めっこ。


「どうやったら、爆発するんっすか?」


ルーカスは、オロオロしている。


「異物が混入して、上手く錬成が出来ない時ですかね。そもそもの話、基本的に本を読む机と錬成する机は別にすべきなのです。その本は、どこから持って来たんですか?って、話なのですよ。」


ルイスは、真剣な表情で世界樹の葉を刻むと言う。


「どこって、地下の物置…あっ。」


地下は、ゴミや埃が溜まりやすい。手で払っただけでは、ゴミは取れても埃はしっかりと取れない。


「そういう事です。基礎を怠れば、いかに優れた錬金術師だとしても失敗します。さあ、いつになればプロメアは気づくのでしょうね。」


ルイスは、静かな雰囲気でプロメアを見る。


「ルイスの兄貴も、錬金術に関してはプロメアちゃんを、甘やかすだけじゃないんっすね。」


ルーカスは、驚きながらも優しく笑う。


「科学の実験と同じです。あれ、少し間違えれば危険だったりしますよね?アルコールランプとか、ドライアイスや薬品関係など。扱いを、間違えれば大変な事になります。だから、厳しくしなければいけないのです。それが、プロメアの為になりますからね。ちゃんと、教えたのですが…まったく。」


ルイスは、困った様にため息を吐き出す。そして、立ち上がるとプロメアに少しだけ厳しめに言う。


「プロメア、錬金術は清潔な場所でしかしてはいけません。手元の本を、見てみてください。」


「……あっ!」


プロメアは、本を拭いて道具を片付ける。そして、机を拭いてから着替えてくる。そして、道具を出すと真剣に隣の机に本を置くのだった。ルイスは、それをみて微笑むと無言で自分の机に戻る。




グレンは、チョコマカと動き回るシルバースパイダーに苦戦していた。彼らは、臆病な性格なので、直ぐに逃げるし隠れてしまう。また、隠密や罠も得意とするので、面倒なのである。ロゼは、暇潰しと手伝っているが、これには苦笑するのだった。








作者の独り言…


メンバーの話、これ以上は書けません…


次は、日本サーバー帰還からのリーダークエスト本番になります。つまり、肩慣らしは終わりだぜ?


さあ、行ってみよぉーう!


という訳です。さあ、頑張るぞ…

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