第123話 トリエント戦

さてと、トリエントは古樹が意志を持った存在。そして、木精霊でもあります。


「条件は、さっきとほぼ同じだな。」


グレンは、小さくため息をつくと剣を抜く。


「攻撃パターンを、探りたい所っすね。」


ルーカスは、周りを見渡し死霊を飛ばす。


「まあ、最終ボスだし範囲攻撃はあるだろうね。」


ゼタは、バフポーションを飲んでから言う。


「まあ、ヘイト集めは任せろ。この、筋肉で受け止めてみせるぜ!ガハハハハッ!」


ポアレは、明るく笑い飛ばす。


「えっと、僕の仕事が増えるので程々にしてくださいね。取り敢えず、小手調べと行きましょうか?」


ルイスは、困った様にポアレに注意する。そして、思わず笑顔を浮かべてから和服に変更。久しぶりの八雲の狩衣、それと月光の短刀などの装備である。


「あれ、そっちに八雲に戻すのか?」


グレンは、キョトンとして聞いてくる。


「聖光信仰着は、防御や攻撃をしやすい様な設定なのですが…僕の戦闘スタイルとは真逆なのですよ。まあ、このまま戦闘スタイルを変えずにやっても、特に問題は無いのですが。やっぱり、回避補助とバフ上昇効果のある八雲が僕には相性が良いんです。それに、他の素材も集める必要もあるので、手っ取り早く終わらせたいって理由もありますね。」


ルイスは、考える様に言ってから笑う。グレンは、納得した様に頷く。ルーカスも、ニコニコである。


「では、始めましょうか小手調べ。」


ルイスが、そう呟く。すると、剣を既に抜いていたグレンが無言で走り出す。追う様に、ルーカスとザイン少しだけ遅れてポアレが走り出す。


「奏でるよ!【聖者の行進!】3・2・1!」


ゼタは、リュートを奏でる。グレンが、トリエントに攻撃すれば地面から木の根が出て来る。そして、鞭の様に上からバチンッと振り翳される。グレンとルーカスは、左右に回避。ザインは、火矢で牽制すれば、根は地面に戻ってしまう。


「根っこ鞭は、単体攻撃っぽいな?通常か?」


グレンは、真剣な表情で言えば…


「基本、範囲を引き摺り出すには、HPを3分の1は削る必要が有るっす。ポアレ、よろしくっす!」


ルーカスは、暢気に笑いながら答えポアレを見る。


「タゲ取りだろ?任せろ!」


ポアレは、挑発を発動させてひたすら殴る。怒りの叫び声を、上げるトリエントを見てルイスは被ダメ半減の補助をかける。そして、ポアレを回復。ゼタも、バフとデバフを交互掛けしている。


「うーん、嫌な予感がする。」


ゼタは、険しい表情で呟く。


「そうですね。こう、何かざわざわします。」


ルイスも、思わず顔を曇らせて言う。


「取り敢えず、距離を取るべきかな?」


そう、ゼタが言った瞬間に体を震わせる。すると、粉っぽい何かが出て来る。ルイスは、素早くキュアを発動させるが、花粉は常にあるので焼石に水。


「一旦、離れて!くっ、継続ダメ有りなの…。」


「すみません、ポーション投げます!」


ルイスは、素早くポーションを投げつける。グレン達は、素早く攻撃を再開する。レッドゾーンのHPが、フル回復するがじわじわ減る。


それを見て、ルイスはHPが半分になった瞬間に継続回復に切り替える。そして、効果時間を言う。


「継続回復、効果は240秒です!」


「「「「「了解!」」」」」


ルイスの声に、全員が頷く。暫く、継続回復と回復とポーションを投げて、何とかHP管理するルイス。


暫くすると、花粉が消える。


「すみません、【瞑想】します。」


ルイスは、目を閉じる。


「OK!各自、ポーション回復で!」


それを見て、ゼタはグレン達に言う。ポーションではなく、瞑想を使うのは長期戦を予想しての事だ。ポーションは、飲み物判定があるので当然ながら、飲める量も限界がある。なので、MP回復スピードが上がる瞑想にしたのだ。


「もう、小手調べするとかの問題じゃないよね?」


ゼタは、そう呟く。ルイスは、目を開き言う。


「かなり、消耗してますからね?なら、やる事は1つです。所でゼタさん…、スリル有る戦闘はお好きですか?僕的には、絶対に避けたいのですが。」


ルイスは、少しだけ嫌そうに言う。


「好きだね。寧ろ、大好きだよ。と言う訳で、大人しく諦めて龍人になりなさい?」


ゼタは、素晴らしい笑顔で諭す。


「うぅー、温存が出来ません!」


ルイスは、泣く泣く指輪を外して龍人になる。


「圧倒的、人手不足だよ。それに、これって運営の悪戯だよね?運営さん、見てたら改善してよね!」


ゼタも、装備変更してリュートを構える。


「あれ、全員で突撃っすか?」


ルーカスが、暢気に言いながらもコンボを稼ぐ。


「これ、運営の悪戯の可能性が高い。」


「マジかよ!?確かに、このクエストする人は余り居ないから初バトルだったのか…やばいな。」


ゼタの言葉に、苦々しく拳を放つポアレ。


「1番最初のは、特別に少しだけ強くしとくね☆ってやつな。納得だ、長期戦はさけられないな。」


グレンは、げっそりした様に言う。


「こうなれば、ヤケクソなのです!」


「だね。というか、君の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。もっと、こう…お上品な…」


ゼタは、驚いてルイスを見ながら最後は口籠る。


「??」


ルイスが、キョトンと首を傾げる。


「君は、そのままで良いと思うよ。【死音】!」


小動物みたいな、仕草に頷きながら攻撃魔法。


「は、はい…。あ、補助します!」


ルイスは、戸惑いつつ強化補助をかける。


HP残り、3分の2になった時にトリエントに変化。ルイスは、被ダメ半減を素早くかける。そして、予備動作を見て空歩を発動。素早くザインを、空中に避難させる。NPCである、ザインが死ぬのはやばいと思ったからだ。4人も、飛ぶ事で回避したが…。ルイスが、予想した通り長いスタンプ攻撃だ。


対空時間が、限られるグレン達にダメージが入る。


それも、予想済みなので対空時間は全力回復する。なので、全員が何とかギリギリ生き延びれる。プレイヤーですら、この様な有様なのだ。プレイヤーより、劣るNPCが生き残れる筈はない。ルイスは、自分の直感が間違ってなかった事に安堵する。


「ルイスの兄貴、ザイン回収と回復ありがとうっすよ!かなり、設定がバグってやがるっす!」


ルーカスは、笑顔で言う。


「流石に、MPが…。【瞑想】する、余裕は無いのでポーション飲みます。全員、各自回復を!」


ルイスは、ポーションを飲み攻撃に参加する。そして、トリエントHP残り100を削ろうとしたタイミングで、再びまたまた変化が現れる。地面から根っこが棘の様に広範囲に突き出して来たのだ。


ルイスは、申し訳ないと思いつつ、ザインとゼタを範囲外まで放り投げる。勿論、ちゃんと意味があるのだ。ザインは、死亡回避。ゼタには、全力バフを掛けてもらう為だ。グレンは、防御の構えている。ポアレは、【燃える魂】と言う起死回生のスキルと【根性】で耐久。ルーカスは、【死神の天秤】と言う確率で死亡した場合蘇生される確率スキルで無事蘇生。ルイスは、龍人だったので防御力が上がっていた。なので、被ダメ半減のスキルもあって、ギリギリだが生き延びれる。回復をする余裕もない、無慈悲な攻撃にルイスは苦笑してしまう。


「バフるよ!」


ゼタは、バフをザインは牽制をする。何故なら、ルイスを含めて全員がHPギリギリ状態である。


ルイスは、素早く回復すると全員で同時攻撃。


「くっ、疲れたぁー!」


ポアレは、叫ぶ様に言う。


クリアの文字に、グレンは大の字でゴロン。ルーカスも、その場に座り込んでしまう。ポアレも、棒立ち状態である。ゼタは、安堵に深くため息。ザインも、苦笑して座る。ルイスは、満腹度を見て簡単な食事と飲み物を出す。こちらも、ギリギリだ。


「くそぉー、運営許すまじ…」


グレンは、悲鳴じみた声音で言う。


「まだ、全てのプログラムは無理でしょう?けど、見てたなら真面目にやめて欲しい。消して…」


ゼタも、へとへと気味に言う。


「ご飯が美味しいっす!」


ルーカスは、ガツガツ食べている。ザインも、頷きながら笑顔で食べている。


「お2人とも、今回は本当にありがとうございました。お2人と遊べてとても楽しかったです。また、何処かで会った際はよろしくお願いしますね。」


「おう、何かあれば呼ぶんだぞ!」


ポアレは、笑いながら言う。


「僕も、久々に楽しかったよ。また、何かあれば一緒に冒険しよう。僕も、呼べば手伝うよ。」


こうして、2人とフレンド登録して解散した。

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