第119話 再びイギリスサーバーへ

蒼夜は、少しだけ考えてから言う。


「やめとけ。」


さっきとは、雰囲気が違う。ルイスは、興味がある雰囲気で次の言葉を待っている。


「元プロゲーマーとして、言わせてもらう。出来るだけ、顔は出さない方が良い。出来れば、音声も入れない方が良い。家庭音や環境音で、場所を特定されたり個人情報が漏れる事がある。それに、グレン君とルイス君は受験生だろ?下手すれば、受験校の合格取り消しにされる可能性もある。だから、音声は無しにして配信時間も最長で1時間くらいが良いだろう。息抜きくらいなら、少しは大人達も目は瞑ってくれるはずだしな。その代わり、審判しながら解説して俺達が盛り上げるから。自分を、危険に晒すなんて怖い事はしない。それと、させない!」


蒼夜は、大人メンバーを睨みながら最後を言う。すると、反省する大人メンバー。ルイスは、とても嬉しそうな表情である。そして、流されそうになった自分に反省する。グレンも、なるほどと頷く。


「それに、やっと平和になったんだろ?火のないところに、煙を立たせる様な事はやめとけ。俺としても、ゲームなんだし楽しく過ごして欲しいしな。」


少しだけ、最後は照れた様に言う。


「はい、ありがとうございます。」


ルイスは、本心から感謝を告げる。


「話し合いは、此処で終わりだよな?」


トキヤは、時間を見てから言う。


「では、これで終わります。」


ルイスは、終わりの挨拶をして解散…となる筈だった。蒼夜は、トキヤとマッキーを掴む。


「じゃあ、大人諸君は残りたまえ。あ、ルイス君達は別サーバーでやる事あるんだろ?大丈夫、この馬鹿な大人達とお話しするだけだから。君達は、まだ子供だしルーカス君も俺と同じ反対派だから行ってよし。それと、いつでも安心して帰って来てくれ。まあ、暫くは戻って来ないんだろうけど。」


蒼夜は、優しい表情である。


「はい…、ありがとうございます。」


ルイスは、どう反応して良いか分からず頷く。流石は、元プロゲーマー。風格に、思わずルイスは息を呑むのだった。そして、少しだけ格好良いと思ったのだった。何にせよ、今回の運営を率いるのが目の前のこの青年なのだ。言動からしても、頼もしいの言葉しか出ない。ルイスは、立ち上がる。


「それでは、メインサーバーは日本なのでこれからよろしくお願いしますね。その、迷惑をかけない様に努力します。その、迷惑かけたら済みません。」


ルイスは、少しだけ苦笑して言う。


「普通は、迷惑かけそうになったら大人がフォローするものだ。だが、ルイス君も気をしっかりな。少しだけ流され気味だし、自分を持つというのは大切だと思う。何せ、このゲームの方向性は自由で開放的だ。流されれば、自分を見失うぞ?自分らしく、尚且つ迷惑をかけない程度に楽しめば良いさ。」


蒼夜は、純粋にルイスを見てから励ます様に笑う。ルイスは、思わず笑顔になる。


「うーん、ちょっと上から目線になり過ぎたか?まあ、あれだ……そう、近所のお兄さんからの言葉として聞いてくれ。運営としては、少し不味いかもしれんし。うん、そうしてくれると嬉しいかな。」


すると、ルイスは頷いてその場を去るのだった。




イギリスサーバーに戻り、ルイス達は宿を取る。


「ルイスの兄貴、蒼夜さん格好良かったすっね。」


ルーカスは、素直な感想を述べる。


「はい、安心して帰れそうです。」


ルイスも、頷くと机にお茶菓子を出す。すると、ザインが入って来て珈琲を置く。


「ちなみに、神秘の種と霊宝の破片はこの国でゲット出来る訳ですが。取り敢えず、神秘の種から集めましょうか。といっても、メンテナンス後です。」


ルイスは、珈琲を飲みながらのほほんと言う。すると、ルーカスは袋に入ったお金を机に置く。


「万能薬は、希少ドロップっす。一応、調べてドロップしないか挑戦したっすけど……。なので、買い取ったという形になるっす。その、えっと…」


ルーカスは、俯いてからオロオロしている。


「万能薬は、僕も作れます。他の人に取っては、非常に価値ある物ですが僕には価値がありません。それに、ドロップ薬は効果が弱目なのです。なので、持て余した物を消費したに過ぎません。だから、気にしなくて良いです。それでも、気になるならそうですね。困った時に、クエストでも手伝ってください。それだけで、僕は嬉しいので。」


ルイスは、優しく微笑むと珈琲を飲む。ザインも、ホッとしている。ルーカスは、無言で頷いた。


「神秘の種は、戦闘関連だったな。」


グレンは、暢気に笑いながら話を続ける。


「そうなのです。4人では、少しきついのでギルドで2人程ですが、募集して行く必要が有ります。」


ルイスは、暢気にクッキーを齧りながら言う。


「え?2人は、少なくないっすか?」


ルーカスの言葉に、ザインが言う。


「ルーカス様、私も行くんですよ?どんな、クエストかは知りませんが、6人居れば大抵は行けると思うのですが。その、詳細を教えてください。」


すると、ルイスはニヤリと笑う。


「まず、推奨レベルは180です。推奨参加人数、10人。そして、戦闘クエストですね。森の入り口から、襲って来る敵NPCや魔物NPCを倒して進みます。クエストボスの特殊ドロップが、神秘の種になります。ちなみに、特殊ドロップを落とすには条件が有るのですよ。それが、推奨参加人数より少人数でジョブチェンジ禁止なんです。」


すると、ザインは固まる。


「あの、私は184レベルなのですが……。ちなみに、他のクエストの推奨レベルを聞いても?」


「エルフの国は、留守番をお願いします。っと、だけ伝えておきますね。推奨レベル190なので。」


すると、今度はルーカスが固まる。


「俺のレベル、195なんっすけど!ひぇええ!」


「あははは…、何にせよたのしみましょう。」


そして、この日はログアウトするのだった。




そして、3日間も難なく過ごした。


「さあ、ギルドで募集しますよ!」


「「おー!」」


4人は、宿屋を出るのだった。

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