第114話 決着

「彼は、彼は…元特殊NPCなのですよ。」


ルイスの、悲しそうな言葉にグレンは驚く。


「つまり、キリアさん達と同じタイプのNPCなのです。それを、素材とした禁忌のホムンクルス。」


「禁忌の?」


グレンは、ルイスを見て聞く。


ホムンクルスには、死体を素材に作る物と、科学的に造るものの2パターンがあります。


死体から造る、ホムンクルスは歳を取れません。更に言えば、体が丈夫なうえに学習能力が通常のホムンクルスを上回ります。しかし、MPと HPは生前の肉体に引っ張られるので成長しません。


科学的に造る、ホムンクルスは歳を取ります。しかも、基本は短命で病弱な存在でかなり弱いです。しかし、育て方でHPとMP量そして学習能力が変わります。言わば、親の育て方で優劣がついてしまいます。そして、親が優秀であれば全てにおいて死体からのホムンクルスを凌駕してしまいます。素材次第でも、かわりますけどね。


「死体を使った、ホムンクルスが生前の自我を保つ事が出来ません。けれど、彼は自我を保っていました。つまり、死んでない状態からホムンクルスになった。これは、残酷な事をしますね。」


ルイスは、険しい表情で言う。


「私が、望んだ事です。」


ザインは、素早く剣を振るいながら言う。しかし、グレンが素早く割り込む。ルイスは、グレンに迷いが見えて覚悟を決めた。ここで、ザインを殺さなければもっと彼は苦しむでしょう。


おそらく、ザイン君は賢者の石によって生かされている。何故なら、ルーカス君は錬成が苦手だからです。なので、力技で命を繋げています。おそらく、賢者の石はルーカス君が持っているのでしょうね。


「それで、来ないんですか?」


ルイスは、真剣な表情でルーカスを見る。


「さっきから、亡霊が…」


ルーカスは、亡霊がルイスから逃げようとするのを見て驚く。それは、そうである。ルイスは、錬金王であり聖王…言わば、彼らの天敵である。


「ゲレティー様、お手出し無要でお願いします。」


ルイスは、ため息をつき崖を見上げると、ゲレティーがニコニコと笑顔で座っている。つまりは、運営が動いた事を意味しています。ここで、ゲレティー様の制裁が入ればルーカス君は完全アウト。


ならば、此処で激闘して時間を稼ぐしか…


「おや、僕は優秀な信者を守っただけだよ?でもまあ、決着がつくまで手は出さない事にするよ。」


ゲレティーは、ニコニコとルイスを見ている。


つまり、決着がついたら裁かれる。管理NPCで、この世界の主神であるゲレティー様が、優しい対応をしてくれるはずが有りません。ここは、運営を引きずり出し交渉しなければ。まあ、運営にも落ち度があるので助かる可能性も高いはず……。


さてさて、何処まで伸ばせば来るのでしょうか?


ルーカスは、悪霊を此方に放つ。ルイスは、素早く回避するとルーカスに短刀で斬りかかる。大鎌の攻撃を回避し、酸を投げつける。ルーカスは、酸を回避して悪霊を呼び出す。激しい攻防戦だ。


しかし、ルイスの攻撃がルーカスに当たった時に、何かが壊れる音がする。青ざめるルーカスに、ルイスは自分が賢者の石を破壊した事に気づく。


ザインは、剣を落として苦しみ出す。


ルーカスは、慌てて駆け寄り庇う仕草をする。ルイスは、試験管を取り出し近づく。


「負けを認めるっす…。だから、ザインを殺さないで欲しいっす。俺の相棒を、殺したくないっす。けど、ルイス兄貴に勝てる気がしないっすよ。」


「そのままだと、苦しみ続けるだけですよ。」


ルイスは、立ち止まりルーカスに聞く。


「どうすれば、このままだとザインが…」


ルーカスは、かなり焦っている。すると、プロメアが現れる。ルイスは、素早く試験管を隠す。


「プロメア?」


「…ザインお兄ちゃん、何処か痛いの?苦しいの?ねぇ、パパ?これは、パパがした事なの?」


プロメアは、恐る恐るルイスに聞く。


「いいえ、ザイン君…いえ、ウルレザイン君はもともと体が弱く病気になってました。痛みや死の恐怖から逃げる為に、ルーカス君に助けを求めたのだと思います。しかし、賢者の石が壊れた以上は…。」


ルイスは、ストーリーを思い出しながら言う。ルーカスは、混乱状態で必死にノートに書き込んでは、泣きそうな表情で破り捨てる。


「パパなら、どうにか出来ないの?」


「生命霊薬なら、彼の病気を治せるでしょう。そして、万能薬と神秘の聖霊薬ですね。しかし、集まる頃には彼は死んでいるでしょうね。」


ルイスは、真剣な表情で言う。


実は、生命霊薬は神秘の種で代用出来ます。神秘の聖霊薬も霊宝の破片で代用出来ます。万能薬は、イベント報酬で持っています。けれど、シラユリの蘇生素材でもあります。一応、失敗した時の為に集めた素材を使えば、助けられるでしょう。


一応、後で集めなければですね。まだ、素材も集まってませんし。仕方ないですかね。


「死霊術を使えば…」


「やめとくべきです。完全に死ねば、取り返しがつきません。まったく、仕方ないですね。彼を助けますが、条件として運営と話し合ってください。」


ルイスは、道具を取り出して薬を作る。


「了解っす。あの、ルイスの兄貴?」


ルーカスは、ルイスに声をかけるがルイスは無視している。そして、ザインに薬を飲ませる。


ザインは、痛さや苦しみが消えた事に驚く。


「ルイス、良かったのか?その素材は…」


グレンは、気づいていた。ルイスは、無言で静かにのジェスチャー。グレンは、驚き無言で頷く。


「さて、ゲレティー様。こちらは、全部解決しましたよ。なので、運営とバトンタッチです。」


ルイスは、少しだけ強い口調で言う。


「そうだね。壊すべき物は、全て君が壊したし。けれど、彼を見逃すと思っているのかな?」


「ふふっ、言うと思ってました。けれど、僕は彼のストーリーを進めたに過ぎません。別に、これはルール違反でも何でも無いと思いますが。それに、これは言わば兄弟喧嘩です。神である、貴方様が干渉する事ではありません。そうでしょう?」


ルイスは、笑顔でゲレティーに応戦する。


「なるほど、兄弟喧嘩…ね。まあ、禁忌や真理を正攻法で潰してるし、確かに僕からは言う事はないかな。けど、遺跡の件は怒ってるからね?」


その言葉に、ルーカスは青ざめている。


「大丈夫です。同盟メンバーを中心に、そちらの対応も順調ですから。運営とルーカス君が、話し合いをでき次第ですが僕達も参戦する予定です。」


ルイスは、冷静な表情でしっかりゲレティーを見ている。すると、ゲレティーは困ったと笑う。


「まったく、見逃すのは今回だけだよ。それと、ルーカス。君は、兄弟子に感謝すべきだよ。もう少しで、制裁を僕がする所だったからね。」


そう言うと、ゲレティーは姿を消した。そして、運営の人が来てルーカスを連れて行った。ルーカス達は、ルイスに何か言いたそうだったが無視する。


「さて、グレン行きますよ。」


「おう、大丈夫か?」


ルイスは、ステータスを見てため息をつく。異世界の罪人を、庇ったのだ…ペナルティーが無いはずがない。ルイスは、無言で頷き走り出した。


「ルイス、ペナルティーは何だ?」


「え?グレンにも、ペナルティーが?」


ルイスが、驚いてグレンを見ればグレンは深いため息。そして、ルイスはハッとしてから苦笑する。


「無いぞ?けど、さっきステータス見てただろ?」


「だっ、大丈夫です。大した事では、無いです。」


ルイスは、視線を逸らしながら言う。


「よーし、きびきび吐け!」


グレンは、ルイスを捕まえて言う。


「えっと、1ヶ月魔法回復の効果を受け付けないですよ。けど、ポーションがありますし…」


「それ、まずいじゃん!」


ルイスは、アタフタ言いグレンは怒る。


「でも、最近は僕も引き篭もってますし。えっと、大丈夫なはずです。うん、この程度で済んで良かったですね。そう、思う事にしましょう。」


ルイスは、あたふたしてからポジティブに言う。グレンは、深くため息を吐き出した。


「トキヤさん、お待たせしました。」


「何とか、押さえてる。ルイス、回復を頼む。」


トキヤは、真剣な表情で言う。


「了解です。」


そして、トキヤとマッキーは何かを見て驚く。ルイスだけ、HPが回復しないのだ。そして、見事な勝利を勝ち取った。ホーエハイムは、姿を消した。


「ルイス、何やった?」


「それ、普通のペナルティーじゃないよな?」


ルイスは、笑って誤魔化す。後で、グレンから聞き出したトキヤに怒られた。マッキーも、苦笑。




ルイスは、自室にて紅茶を飲んでいる。久しぶりの1人時間である。トキヤ達は、レイドへ。プロメアは、ずっとシャルムさんの場所から帰ってない。


また、バレンタインイベントも関係ない。


ルイスは、つい暇になり小さくあくび。HP回復、それが出来ないので戦闘には連れて行けず。取り敢えずは、お留守番を預かっているしだいです。とはいえ、キリアさんが買取役で居るので、暇を持て余しております。うん、暇すぎます!


ポーションも、作り終えて料理のストックも、粗方作り終えてしまいました。うーん、寝ましょう!


起きると、プロメアからのチョコが置いてありました。隣を見ると、プロメアがぐっすり寝てます。


ルイスは、ゆっくり抜け出し微笑む。


ちなみに、チョコは苦かったです。ビター…、では無さそうですね。まあ、娘からのですから全部食べましたよ。ちょいと、異常にかかりましたけど。


今度、料理を教えてあげましょう。


さて、紅茶でも飲んで…


「ルイス様、ルーカス様が来てますが。」


キリアが、真剣な表情で言う。


「おや、早い解放でしたね。呼んでください。」


ルイスは、お茶の用意をしながら言う。


「えーとっ、その…お久しぶりっす。」


「はい、お久しぶりですね。」


ルイスは、後ろの運営さんにも紅茶を出した。そして、2人が座ったのを見て自分も座るのだった。












作者から読者様へ

最近、たくさんのフォローとコメントありがとうございます。何か、アドバイスとか書いてあり嬉しく思っております。(*´ω`*)


また、作品を読んで盛り上がってくださる方も。作者としては、とてもありがたいです。


ざっくりしか、読めてないので良いタイミングで、じっくり読んで書き直しすべき場所とか考えたいです。とにかく、嬉しくて書いてしまいました。


これからも、フリー・ライフ•リベレイションをよろしくお願いします。ではでは…(*゚∀゚*)

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