第112話 ルーカスとザイン
ルーカスは、木に背を預け目を閉じる。ここは、ルーカスにとって、大切な場所なのだ。だが、目的の為に此処を最終的には壊すつもりでもある。
「ルーカス様、その…ルイスさんは来ますかね?」
「来るっすよ。何せ、兄貴は昔から俺達のお誘いを断った事がないっすから。時には、研究を中断してから困った様に笑って付き合ってくれたっす。」
ルーカスは、懐かしむように笑う。
***回想***
カリオストロは、壁に背中を預けて本を片手にルイス達を見ている。ルイスは、錬成板で苦手な合成練習をしている。ルーカスは、走り回って薬草を集めている。エレナは、調合のコツをルイスに聞く。
「うっ…、また失敗…。えっと、調合の素材レア度がエレナさんに見合って無いのかと。」
ルイスは、落ち込んでからエレナにアドバイス。
「えー、でもどうすれば。」
エレナは、不機嫌そうに言う。
「わざと、素材を傷物にするんです。すると、レアリティが下がるので。あ、でもやりすぎると…」
「きゃあー!私の素材がぁー!」
光になって、消えてゆく素材に悲鳴をあげる。
「最後まで、人の話を聞きましょう!?」
カリオストロは、思わず笑いを堪える。
「びえーん!」
「ルイスの兄貴、俺もやってしまったっす。」
果実の錬成、失敗したのか全身が真っ赤である。
「「ぎゃあああー!」」
ルイスとエレナは、悲鳴をあげてしまう。
「おいおい、何してるんだよ。」
カリオストロは、ルーカスを風呂場に連れて行く。
「「素材が足りない(っす)!」」
エレナとルーカスは、カリオストロを見る。カリオストロは、残念ながら七王会議がこの後あった。なので、予定があると言う。そして、チラッとルイスを見る。ルイスは、精霊宝玉の合成研究中だ。
「ルイスは、忙しそうだな。今日は、諦めろ。」
カリオストロは、ため息を吐き出して言う。
「「ルイスの兄貴(さん)、素材集め手伝って!」」
2人は、真っ直ぐにルイスへ突撃。
「ふぇっ、えっと何ですか?」
ルイスは、失敗したら怖いと精霊宝玉を合成鍋から取り出す。そして、座り直しキョトンと言う。
「素材集め手伝って欲しいっす!」
「素材が無くて困ってるの!」
挙手しながら、元気よく言えばルイスは苦笑する。カリオストロは、困った様にため息を吐きだす。
「俺は、会議があるから行く。」
「はい、いってらっしゃい師匠。」
そして、ルイスは道具を片付けながら言う。そしてから、仕方ないなと困ったように笑う。
「じゃあ、行きましょうか。」
ルイスは、錬金術師の戦闘服に装備変更。ルーカスは、死霊術師にジョブ変更。エレナも、神官にジョブ変更する。魔法系で、サポート枠だと思われがちだが違う。死霊術師は、バリバリのパワーアタッカーだ。錬金術は、バッファーでありサポーターでもある。神官は、回復と遠距離術師なのだから。
「うりゃー、行くっすよ!」
大鎌を振り回して、亡霊を先行させるルーカス。
「ちょっ、回復が追いつかないわよ!」
慌てたように、エレナが遠距離を撃ちながら言う。
「あはは…、僕も回復しますね。」
ルイスは、乾いた笑い声でポーションを投げる。
「ありがてぇーっす!」
「余り、離れ過ぎないでくださいね。」
ルーカスの感謝に、ルイスは困ったように注意。しかしながら、テンションの上がったルーカスは、全力で暴れ回り。エレナも、装備を変更して火力を上げている。確かに、素材は大量だった…。
「2人とも?何か、言う事ありますよね?」
仁王立ちで、素晴らしい笑顔のルイス。2人は、恐る恐る振り返り固まる。そして、全力で謝る。
「はぁ〜…、言いたい事がたくさん有りますが。残念ながら、ログアウトの時間なので見逃します。」
ルイスは、疲れたようにカリオストロのアトリエに戻りログアウト。2人も、ログアウトした。
******
当時を、思い出したのか思わずニヤける。
「ルイスさんは、とても優しい人なんですね。」
ザインは、微笑むと珈琲をルーカスに渡す。
「そうっすね。俺の憧れの人で、そして今回の件で一番傷ついて悲しませる人っす。出来れば、俺だけで完結したかったっすけど。ルイスの兄貴が、錬金王になったのなら奪う必要があるっす。」
ルーカスは、心苦しそうに呟く。ザインは、心配そうにルーカスを見上げる。ザインは、ルーカスの作ったホムンクルスだ。しかし、普通のホムンクルスではない。見た目も、彼の髪は黒髪で青い瞳だ。
「私も、全力で頑張ります。」
「期待してるっすよ。まあ、ザインを見ただけルイスの兄貴は苦しむっす。その、造り方を知っているだけに。あの人は、優しいっすからね。」
ルーカスは、弱々しい笑みを浮かべて言う。
「ルーカス様も、とても優しいです。」
「優しい人は、目的の為とはいえ相手が傷つくと、苦しむと分かっている事はしないっすよ。恩を仇で返す、まさにそれっすね。ああー、嫌だな。ルイスの兄貴に、絶望されたくないし、嫌われたくないっす。これも、全部が全部…運営のせいっす!」
ルーカスは、根本に座り込み俯く。
「ルーカス様…。」
ザインは、ルーカスを見て何か考えるのだった。
ルイスは、懐かしいと思いながら歩く。
「ルイス、おかしくないか?」
「そうですね、いささか静か過ぎます。」
さてと、ルーカス君が笑顔で手を振って言う。
「ルイスの兄貴、お久しぶり!」
「えっと、いつもの口調はどうしたんですか?」
ルイスは、キョトンとしてから言う。
「俺、気づいたんっすよね。この口調が、無ければモテるんじゃないっすかと。どうっすか?」
ドヤッと、言うルーカス。
「あははっ……」
そうですね。でも、中身が残念なのでモテないと思います。えっと、これは言わぬが花ですかね。
「それにしても、お久しぶりです!元気でした?」
ルイスは、本心からルーカスに言う。
「元気っす。所で、お隣は剣王様っすか?護衛にしては、かなりの大者な気がするっすけど。」
ルーカスは、心配そうにルイスを見る。
「錬金王関連で、いろいろありましたから。」
ルイスは、少しだけ困った様に笑う。
「……なるほど。そう言えば、ルイスの兄貴に聞きたい事があるっす。嘘偽りなく、ちゃんと答えて欲しいっす。この世界の、真理についてどう思うっすか?俺は、かなりの激物だと思っているっす。」
「そうですね。かなり、オカルトチックで笑えない内容も多いです。僕も、運営に問い合わせたのですが……対応中だと言われました。」
ルイスの言葉に、嘘わなくルーカスはため息。
「錬金王でも、駄目だったんっすね。」
「そうです。役に立たなくて、ごめんなさい。」
すると、ルーカスは大鎌を掴み攻撃して来る。
「やらせねーよ!」
グレンが、素早く間合いに割り込む。
「ルーカス君、何故ですか?」
ルイスは、悲しそうな表情で言う。
「……ごめん、ルイスの兄貴。」
ザインが現れ、ルイスを襲う。ルイスは、目を丸くして回避すると青ざめゆっくりルーカスを見る。
「何でですか?こんな、こんな…」
「ご安心を、これは私が望んだ事です。」
グレンは、ザインからルイスを庇う様に対応する。
「ルイスの兄貴、楽しもうっす!」
すると、轟音と共にゴーレムが、3体も現れるのであった。ルイスは、意を決して短刀を抜いた。
「これは、厳しい戦いになりそうですね。」
「おいおい、こんなのどうすれば。」
グレンも、頭が痛そうに言うのだった。
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