第111話 過去の真実と激動

さて、再ログイン!おや、プロメアも帰ってます。さてと、ホーエンハイムさんに聞くことがあるんですよね。それは、古代遺跡の損傷率です。


β時代、損傷率のワールドクエストがあったはず。


「ホーエンハイムさん、古代遺跡の損傷率は?」


「確か79だったかな?」


やられたぁ!くぅ〜…、大災害を起こす気ですか!


すると、その場のβプレイヤー全員が青ざめる。古代遺跡解放クエスト、その時に少しだけ仄めかされていた話です。実は、うっかり建物にダメージを入れてしまいゲージが減ったのです。その時に、一瞬だけワールドクエストを示す、特殊アラートなるものが鳴ったらしいです。小さな音でしたから、殆どのプレイヤーが聞き逃し都市伝説扱いされてます。


ちなみに、80で古代遺跡の防衛機能します。


全ての古代遺跡に設定されており、アメリカサーバーの魔術の古代遺跡では発動して、ゲーム内のプレイヤーやNPC含む73%の人口が死にました。


まさに、地獄絵図が出来上がった訳です。


プレイヤーは、デスペナが重なり、持久戦も長くはもたず。別サーバーから、応援を呼んで鎮圧したそうなのです。これは、もしや寸止めされてる?


ホーエンハイムさんが、離れたタイミングを狙っていたとしたら……修復や掃除どころじゃないです!


ワールドクエスト、怒れる錬金塔の住人。


これより、3日後に大災害を発動します。戦いに備えて、準備し迎え撃ちましょう!


特殊アラート〜♪


「やられましたね。さてさて、どうしましょう。」


「パパ?大丈夫?」


ルイスは、プロメアを見てから悩む…。


「パパ?」


「プロメアは、今回はお留守番ですかね。」


ルイスは、複雑な表情をする。しかし、プロメアは知っている。この表情をする時は、必ずプロメテア関連だと言う事。プロメアは、真剣に問う。


「何で?プロメア、戦えるよ!同じ、ホムンクルス相手でも負けない!パパ、私も行きたい!」


「なら、言わないといけないですね。君の姉、プロメテアが犯した禁忌の実験を……。」


すると、トキヤも含めて全員がルイスを見る。ホーエンハイムも、ルイスを真剣な表情で静かに見る。


「一言で言うなら、プロメテアは人体錬成をしたんですよ。更に、詳しく説明すれば自分を素材に。」


すると、全員が驚く。ルイスは、悲しそうに言う。とある錬金術師の、アニメでも出てきた禁忌です。


「足が動けるように?」


プロメアは、震えながら聞く。


「……最初は、そうだと思います。」


ルイスは、苦しそうに呟く。


「どういうこと?」


その質問に、ルイスは黙り込んでしまった。


「なるほど。それは、行かせられないね。」


ホーエンハイムは、ルイスの頭を優しく撫でる。


「まさか、大災害にはアレも出て来るのか?」


カリオストロの、心から驚いた声が聞こえる。ルイスは、無言で頷く。そして、1枚の写真をホーエンハイムに渡す。古代遺跡、鏡の部屋の壁画である。


キメラ、ゴーレム、ドール、ホムンクルスの他に…ホムンクルスキメラなるものが。


真理を覗きし者が、作れる古の化物だ。


「何で、お姉ちゃんは錬成し続けたの。」


「ごめんなさい、プロメア。怖くて言えない。でもね、絶対にしないで。君まで、殺したくはない。」


ルイスの言葉に、ホーエンハイムは驚く。プロメアは、その言葉に激怒してから言う。


「なら、良いもん!ルーカスお兄ちゃんに聞く!」


その言葉に、ルイスはやっぱりかと苦笑する。


「やっぱり、ルーカス君と会ってたんですね。」


「だって、何でも教えてくれるもん!」


ルイスは、深いため息を吐きだす。


「分かりました。好きに、して良いですよ。」


「おい!何故、止めない!」


カリオストロは、ルイスに怒る。プロメアは、泣きながら外に走り出してしまった。


「どのみち、本物の賢者の石の影響下では、僕の声は届きません。無理に、引き離せばプロメアが死んでしまいます。どうする事も、出来ないんです。」


「っ!?」


ルイスは、真剣な表情で言う。


「たぶん、ルーカス君も想定外でしょうね。彼は、本物の賢者の石の怖さを知らない。僕でさえ、錬金王の知識範囲でしか知らないのですから。」


「だが!もし、プロメアが知ったら。」


すると、トキヤはルイスを見てから言う。


「ええっと、ホムンクルス素材にした人体錬成すると、キメラホムンクルスになるのか?」


「そうです。そして、低確率で錬成素材になった魔物のスキルを受け継ぎます。ホムンクルスの、完成度が高ければ高い程スキルを受け継ぎやすくなります。たぶん、彼女はそこに目を付けたのでしょう。けれど、錬成は良いことだけではないのですよ。」


ルイスは、悲しそうに言う。


「だろうな。そんな、都合の良い話があるはずが無い。それで、悪い事っていったい何だ?」


「素材には、素材になった魔物の残滓が残ります。穢れた力や魔物の意識などです。それらは、完全に浄化する事が不可能なのですよ。最初は、押さえる事が出来てもね。精神を侵食し、肉体を奪おうと荒れ狂う。錬成すれば、するほどその力は増していきます。最初は、肉体が人型を保てなくなります。そして、心が壊れ魔物たちの意識に呑まれ、自分を見失なう。最終的に、精神崩壊や肉体崩壊してしまうんです。けれど、崩壊の激痛は感じるようで、周りを破壊しながら暴れまわるんですよね。」


ルイスは、深刻な表情をする。


「親たる錬金術師は、周りに被害が出る前にこうなれば殺さなければならない。それが、唯一の救いだから。もう、救いようがないからです。」


なるほどと、トキヤは頷いてから言う。


「プロメアに、ルーカスは教えると思うか?」


「たぶん、教えません。」


カリオストロも、無言で頷くと言う。


「ルーカスは、プロメテアが好きだったからな。妹のプロメアが、傷ついたり死ぬ様な事はしない。」


「恋は盲目とは、良く言ったものです。まんまと、プロメテアの色気に騙されて素材を貢ぎ、殺してしまった訳ですしね。まあ、18歳の設定でしたからね。彼に、悪気はないとはいえ。はぁ〜…。」


ルイスは、頭が痛そうに呟きため息。


「トキヤさん、ワールドクエストはお任せします。僕は、ルーカス君の件で別行動しますから。」


トキヤは、頷く。ルイスは、疲れた表情である。


「なあ、俺もルイスに着いて行く。」


グレンは、真剣な表情で言う。


「そうだな、最近は別行動だったしいいんじゃないか?何せ、お前達は相棒なんだからな。」


トキヤは、笑顔で明るく言う。


「……相棒ですか。」


ルイスは、最近の出来事を振り返る。引き篭もり、単独行動してメイン活動はしていない。


「えっと、ルイス?」


何を勘違いしたのか、オロオロするグレン。


「ん?どうしました?」


ルイスは、キョトンとして首を傾げる。


「さっ、最近は別行動だったけど相棒…だよな?」


「はい、勿論ですよ。」


ルイスが、暢気に笑えばホッとするグレン。その様子を、ホーエンハイム含める大人達は微笑ましく見ている。すると、知らない人からチャットが入る。


ルーカス

ルイスの兄貴、今から始まりの場所で遊ぼ!


これは、言葉通りでは無さそうです。プロメアは、ルーカス君と会えなかったのか、帰ってきて部屋に立て籠ってしまう。ルイスは、無言で立ち上がる。


「さてと、何が待ち構えてるか分かりませんが。彼方から、招待してくれるのなら、今は手のひらで踊ってあげましょうかね。僕も、やられっぱなしは癪なので、全力で抵抗させて頂きますがね。」


「ルイスさーん、その明るい笑顔が怖い!」


グレンが、茶化す様に言う。


「良いぞ、全力ではっ倒せ。」


カリオストロは、俺の分までよろしくとばかりに言う。ルイスとグレンは、装備変更すると外へ出た。


「何か、この感覚は久々だな。」


「そもそも、僕は誰かと行動するのが久々です。」


グレンの言葉に、鈍ってたらどうしようと、ルイスは苦笑している。そして、ゆっくり歩き出した。


目指すは、錬金術師の始まりの場所。


賢者の森モルガン、カリオストロのアトリエがあった場所である。ルイスは、深呼吸するのだった。

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