第106話 クリスマスイベント2

何とか、採掘が終わりクリスマスツリー用の、樹を貰えましたね。次は、再臨山で幻獣華と夢遥草そして氷華結晶を採取。後は、サブクエストで幾つか納品クエストがあったはずです。


「あ、ルイス。」


グレンが、片手を上げて挨拶する。


まあ、悪目立ちしたので、クラスメイトの2人は離れて行きます。なので、控えめに挨拶してから、無言で歩く。邪魔しては、いけませんしね。


すると、ウルフが3体襲ってくる。


どうやら、巻きぞえをくらったみたいです。数人がしに戻り、グレンは剣を構えて暴れる。ルイスは、短刀を抜き、浅く深呼吸する。そして、素早く斬り込む。やはり、ウルフ2匹は直ぐに倒せ、1匹が遠吠えを使おうとする。ルイスは、聖結界でウルフを囲む事で無効化。ルイスは、解除してウルフが逃げようと背中を見せた所を斬る。ため息を吐き出す。


周りは、ルイスのソロ戦を始めて見たのか驚く。


「さて、採取ポイントはどこでしたかね?」


ルイスは、マップを開き少しだけ考える。そして、カイロで暖をとるとゆっくり歩き出す。


「ルイス、俺にカイロ売ってくれ。」


トモ達が、暢気に言ってきたので売る。


「にしても、凄かったな。古代兵器5体相手に、勝つだなんて驚いた。けっこう、あの罠クエストで死に戻りした奴らは多かったからな。」


「そうなんですね。」


ルイスは、頷く。そして、話を切り上げて歩き出した。幻獣華は、フェンリルさんから貰えるそう。ルイスは、最後に行くことにする。夢遥草は、近くにあるので採取で取る。ちなみに、夢遥草は睡眠薬や夢異常を解除する薬になります。なので、多めに採取しておきます。取っても、減らないですから。


氷華結晶は、氷属性武器の仕上げ素材です。錬金加工すると、武器の全ステータスが上がります。


もっと、上の方を目指さなければ。ちなみに、森で取ってくる様に言われた採掘物。赤岩石、青岩石、黄岩石…、絵の具や塗料の素材です。ちなみに、絵の具や塗料も錬金術で作れちゃいます。


今回のサブイベも、たくさんの素材が入手できるようなので、全力でやっている次第です。


取り敢えず、集まったので山小屋に行きます。


あ、ここが空いてますね。暖炉に火を入れ、キッチンへ入る。すると、ホーム扱いなのに気づく。


そうです、リルとソルを呼べるではありませんか!


直ぐに、呼び出して料理を作ります。今回は、シチューとふわふわパンとサラダになります。さてと、それでは気合を入れて頑張りますかね。


料理をしていると、ノックがしてドアを開ける。


初心者っぽいですね。


「あの、一緒に入れて貰っても良いですか?」


「どうぞ。」


小屋は、全て貸し出されていて、止まる場所に困っていたのでしょうね。さてと、料理を仕上げねば。


「あれって、ルイスさんじゃ?」


「マジ?あれが、噂の…」


噂ですか…。うーん、深く考えない事にします。


「君達、満腹度は大丈夫ですか?」


ルイスは、料理が完成したので言う。


「あ、食料ないじゃん!」


「では、シチューが出来たので食べましょう。」


ルイスは、初心者3人と夜ご飯を食べて、夜狩りに備えて寝る事にした。3人は、まだ嬉しそうに食べている。ルイスは、奥の寝室の右2段ベットの下に入って寝る。下で寝るのは、奇襲されても対応が出来る様にだ。何せ、今回のイベントはプレイヤードロップがある通り…PKありなのだから。


ルイスは、短刀を枕のしたに置き、リルとソルは寝っ転がるだけ。どうやら、見張りをしてくれる様である。ルイスは、微笑み暫く寝る事にする。


目を覚まして、装備変更すると暖炉の部屋へ。


3人は、起きていたのか驚く。動画が動いている。ルイスは、どうせ出掛けるからと笑う。


「あの、出掛けるんですか?」


「はい、少しだけ夜狩りしてきます。」


リルとソルは、お店の方に帰還させる。小さくあくびをして、少しだけ考える。


夜狩りは、魔物が強化され古代兵器は森から消えます。そのかわり、知能の高い魔物が増えますが。僕一人では、少しだけ辛い気もしますね。ここは、ゴーレム……いえ、ドールですかね?うーん、予想よりレベルが高いのでドールでも技量が……。


と、なると…やはり、ホムンクルス。


ルイスは、悩むように考える。ルイスは、ホムンクルスを作る事が本心では嫌なのだ。


生命の神秘、それを全否定する禁忌…。


ルイスは、カリオストロの弟子時代……ホムンクルスの錬成に失敗してから、ホムンクルスを作る事を全力で避けていた。今ならば、失敗はしない。


だが、いまだに思い出すだけで動揺するのだ。


「ルイスさん?」


「ん?」


ルイスは、ハッとして3人を見る。


「顔色が、悪いですが大丈夫ですか?」


3人とも、ルイスを心配する様に言う。


「ありがとうございます、大丈夫ですよ。」


ルイスは、嘘をついた。そして、深呼吸する。


夜狩りの最大の脅威は、PKプレイヤーです。集団襲撃、夜間戦闘は絶対に避けられません。一応、素材はホームに全て送ったので大丈夫ですが。


覚悟を決めるしかない様ですね。


ルイスは、錬成道具を用意する。どうか、今から産まれる我が子に祝福あれ……。出来れば、不幸にはしたくない。させない…。だから……。


初心者達は、映さない様に移動する。


「光るので、目を閉じてください。」


3人は、頷くと目を閉じる。


「錬成…、我は禁忌を世界に刻む。誕生せしは、生命の神秘……その罪を我は受け入れ、我が子に愛を捧ぐ。汝の名は……、そうですね初代の名を受け継いでプロメアにしましょう。誕生、おめでとう。」


プロメアは、白い髪に紅い瞳の可愛らしい少女だ。


「パパ、初めまして…よろしくお願いします。」


「これが、錬金術の三大禁忌の1つ…生命錬成。」


ルイスは、悲しそうに呟くと微笑む。そして、思い出した様に服を渡す。メルヘンチックな、ロリータ服ではあるが気に入った様だ。黒いウサミミリボンが、ユラユラ揺れて一回転くるりとまわる。


「パパ?」


褒めて欲しくて、ルイスを見ると真剣なので呼ぶ。


「プロメア、この世界には僕以外にも錬金術師は居ます。でもどうか、何を見ても絶望しないでください。例え、ホムンクルスの悲劇を見たとしても。」


ルイスは、プロメアの頭を撫でて呟く。


「プロメアは、パパを信じるよ。何があっても。」


プロメアは、少しだけ難しい顔して唸り暫し考えてから言う。ルイスは、困ったように笑う。


「ふふっ、ありがとうございます。それと、よく似合ってますよ。とても、可愛いです。」


「やったー、パパに褒められた。」


3人は、驚いて固まっている。


「あの、俺達も夜狩りに参加しても良いですか?」


「PKに狙われますよ?僕達では、君達を庇える程の余裕は有りませんし。それでも、良いならば。」


3人は、頷く。ルイスは、プロメアにお菓子を渡しながら言う。ルイスは、プロメアに防寒コートと手袋そしてマフラーと耳あてを渡す。ロリータ服に、合わせた可愛らしいデザインである。


「それで、良いです。ちょっと、ドロップ預けてきます!5分で戻りますから!」


3人は、山小屋から慌てた様に出た。ここで、トキヤから呼び出しがかかってしまう。


『ルイス、映像を見た……良かったのか?』


トキヤは、静かな声音でルイスに問う。


「吐き気がしそうです。」


ルイスは、ものすごく苦しそうに言う。


『……そうか。でも、プロメアはそこに居る。だから、泣きたい気持ちは隠せ。これは、ゲームだ。深く考えれば、沼に落ちてしまうからな。』


トキヤは、β時代のルイスを知っている。最高の錬金術師でありながら、この世界の錬金術の真理を知ってしまったルイスの苦しむ姿を。その、嘆きや悲しみの全てを。ルイスは、無言で頷くと笑う。


「それにしても、イベントは出来そうです?」


『無理!で言うか、何で1人なんだよ?』


トキヤは、真剣な声音で言う。


「いやー、グレンがモテモテ過ぎまして。他の皆さんも、予定が入ってて無理でしたし。このイベントって、PK有りなのでNPCは参加出来ませんし。」


ルイスは、やれやれって雰囲気でふざける。


『ふーん、ほーん……つまり、クリボッチと。』


トキヤは、ニヤリと笑うと言う。


「ぐはっ!い、今の攻撃は効果ありですよ。」


ルイスは、動揺した振りをすれば互いに笑う。


「では、良い聖夜を…」


『おう、良い聖夜を!最高の錬金術師に、溢れんばかりの祝福あれ!後、プロメアちゃんにもな。』


トキヤは、明るい声音で祝福する。


「パパのお友達さん、ありがとう!プロメアも、祝福する!頑張って、パパのお友達さん!」


『よし、これで仕事頑張れる!』


え?仕事の途中?トキヤさん?え?え?


『ルイス、突っ込むなよ?』


「トキヤさん……。まあ、頑張ってください。」


ルイスは、微妙な表情をするのだった。3人も、帰って来たのでルイスも冬装備に変更する。


「プロメアは、何になりたいですか?」


「プロメアは、パパと同じ錬金術師!」


ルイスは、仮継承の腕輪を渡す。


「これで、プロメアは僕と同じスキルが使えます。けれど、基礎ステータスとのギャップがあるので、使い所を間違えれば自爆します。だから、僕から離れないでくださいね。フォローしますから。」


ルイスは、プロメアにユニコーン短剣を渡す。


「はーい、パパ行こう!」


プロメアは、初めての外にウキウキしている。


途中、レア個体に襲われた初心者達を助けたり、感情的にはしゃぐプロメアに振り回されたり。


「さて、素材がたくさん集まりましたね。」


「パパ…。」


プロメアが、不安そうな声音でルイスに抱きつく。ルイスは、プロメアを撫でると小さくため息。


「そろそろ、君達は帰ってください。」


「ルイスさんは?」


ルイスは、素晴らしい笑顔で言う。


「大物を狙いに行きます。ですが、君達は……」


足手纏いだと、視線を向けると納得する。


「プロメアちゃんは?」


「やだ!プロメア、ここに残る。」


ルイスは、無言で頷くと初心者達を見る。


「ルイスさん、まさか…」


どうやら、バレた様である。


「分かったなら、撤退してください。」


ルイスは、短刀を抜くとプロメアを庇う様に立つ。


「分かりました、ごめんなさい。」


3人は、走って逃げていった。ルイスは、PKに囲まれてしまった。ルイスは、プロメアを聖なる障壁で囲むと、PK達が一斉に動き出すのだった。

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