第98話 三途の川?!(2日目)

眠りにつき、日付が変わり始めた頃…。運営の魔の手が、ゆっくり着実にルイス達に迫っていた。


眠っていると、プニプニ肉球をつかってルイスの頬をペチペチ。ルイスは、朝が苦手なので苦笑。すると、ソルが掛け布団に潜り込み、ルイスのお腹に乗る。そして、リルが続いて潜り込み頭を脇腹辺りにグリグリと顔を押しつけ小さく何度も鳴く。


ルイスは、起き上がり素早く敵索をする。すると、NPC全員が勢い良く起き上がり、戦闘準備する。すると、何かを察したトキヤが素早くテントから出て行った。恐らく、何も知らないだろうマッキーさん達に、危険を知らせに行ったのだろう。


ルイスも、アレンを優しく起こす。


「ん?まだ、早朝…というより深夜だよ?」


「恐れていた事が、起きてしまったようです。」


ルイスは、拳を握りワナワナ震えながら言う。


「ごくり…えっと、そんな深刻な問題?」


ルイスは、無言で頷く。アレン達も、着替える。


「えっと、何があったの?」


「運営さんの、悪戯が始まりました。えぇ、分かってました。分かってましたよ!運営が、のんびりと普通のキャンプや海イベントをする訳がないと!」


ルイスは、苦笑しながら愚痴を漏らす。アレンは、運営さんの悪戯と聞いてもピンと来ない様だ。


「運営の悪戯?何それ、聞いた事無いんだけど。」


ルイスは、深いため息を吐き出す。そして、うーんと考える仕草をする。そして、満面の笑顔。


「大丈夫です!一緒に、体験すれば分かります!」


「へっ?」


アレンは、間抜けな声を出して固まる。すると、キリアとバロンとローアンが偵察から帰ってくる。


「ルイス様、残念なお知らせだ。」


バロンが、苦々しくいえばキリアも困った様に笑っている。ローアンも、深刻そうな表情である。


「今回の敵も、みんな大好きアンデット集団!」


マッキーが、はっちゃけた様に言う。


「ゴミ、寄こしてんじゃねーよ!バーカ!」


グレンが、泣き言の様に言う。


「また、お掃除ですか?」


ルイスは、苦笑して詳細を皆んなから聞く。


「お掃除?えっと?」


アレンは、ルイスを見て聞く。


「アンデットは、基本は素材が無いので、骨折り損になるのですよね。要するに、スライム同様に弱点が魔核石だから、困りものですよねって話です。」


ルイスは、困ったように笑い。深呼吸すると、気を取り直して皆んなに指示をだす。3人は、冥府の回避札を持ってない。ルイスは、3人の配置に悩む。


「あー、確かに。でも、スライムは粘液と酸液をたまにドロップするよね。属性によっては、毒とか溶岩とかも。あれは、普通のスライムじゃないか。」


「ふふっ、そうですね。さて、まだ暗いので足元には気を付けて、急いで現場に向かいましょうか。」


ルイスは、キャンプテント近くにある深さのある川を見て、険しい表情をすると聖域を展開させる。そして、御旗を取り出すと地面に突き刺し、聖域を広げ強化する。そして、指輪をストレージになおす。


「おやおや、アンデットとはいえ龍人ですか。武器は、槍で武装してます。骨は、武器や細工にも使えるようです。ちなみに、倒せれば…ですがっ!」


龍人アンデットの、素早い一撃を短刀でギリギリ振り払う。ルイスは、苦笑する。何と、短刀がへし折れたのだ。すぐに、予備の短刀を出して愚痴る。


「何て、馬鹿力…。腕が、痺れました。」


「ルイス、あの龍人アンデットがボスか?」


マッキーは、真剣な表情で聞いてくる。トキヤも、真剣な表情で見ている。龍人アンデットの背後、川の向こう側は濃ゆい霧に阻まれており、その全容は全く何も見えない。しかし、アンデット特有の音が聞こえるのだ。ルイスは、深呼吸をして呟く。


「おそらく…。」


龍人アンデットは、暫くルイスを見ると小さく笑った気がした。ルイスは、ゾワッとして御旗を見る。すると、御旗が倒れそうになっていたのだ。素早くランコルが、支えルイスを見て任せてくださいと頷く。ルイスは、ホッとして龍人アンデットを見る。


「まったく、厄介な…。待ってください?あの龍人、僕の聖域に入って無事なんですか!?って事はです、前世は聖職者って事ですか。そう言えば、七龍様から邪龍化した白龍人が居ると聞きました。」


「マジかよ…。取り敢えず、1匹相手に、乱戦はしたくない。だから、少数精鋭で行くことにする。」


すると、リーダー陣が頷き武器を構える。そして、素早く攻撃を仕掛ける。しかし、さすが龍人。素早い動きで回避すると、水面を駆け抜けて鋭い攻撃。流石に、水場は足を取られて苦戦する少数精鋭陣。ルイスは、空歩を発動させて水面を走る。そして、短刀と槍が火花を散らして、激しく撃ち合う。


流石に、槍がリーチが長いため、ルイスは後退して槍を回避。そして、隙を狙う様に一閃。しかし、相手も手練れなのかバックステップで回避。


周りは、隙を狙って遠距離攻撃。


「なるほど…。」


ルイスは、小さく呟くと短刀を龍人にビシッと向ける。そして、何と投げつけたのだ。勿論、槍で弾くのだが。ルイスは、久しぶりの格闘術を使う。腕を掴み、勢いよく投げて水面に叩きつける。


「ありゃ、水をかぶっちゃいました。」


ルイスを、頭を振って水を落とす。そして、ホーリーショットを上から龍人アンデットに撃ち込む。


龍人アンデットは、最後ルイスに近づき途中で、敵意は無いと槍を捨てる。そして、淡く光だし白い龍人の姿になる。そして、何か呟くと優しくルイスを抱きしめる。そして、力を失ったかの様に骨になり崩れる。ルイスは、驚いて固まる。


「えっ?」


ルイスは、間抜けな声で呟く。


『君だけは、同じ運命を辿らないで……』


そう、聞こえたのだ。後半の言葉は、聞き取れなかった。ルイスは、頑張って頭の中で言葉を繋げてみるが、文章にはならず仕方なく諦める。


いったい、どういう意味なのでしょう?そもそも、何故…彼の様な、力の強い龍人が邪竜化したのでしょう。普通は、有り得ない事だと七龍も言ってましたし。暇が出来たら、調べてみる必要が有りそうです。まだ、龍人の能力は不明点も有りますしね。


「ルイス!おい、ルイス!」


マッキーは、固まって考え出したルイスに声をかける。しかし、反応が無いため強い口調で言う。


「わゎっ!えっと、すみません。少し、考え事をしてました。えっと、取り敢えず骨を回収しますね。ちなみに、これどうしましょうか?」


ルイスは、周りを見て言えば小さなため息。


「お前が、倒したんだしいらん!皆んなも、お前が考え事してるうちに同意してた。それで、それはどうするんだ?加工不能って、書いてあるが。」


ルイスは、迷う事なく言う。


「お家に、帰してあげます。ずっと、帰りたくて…でも、アンデットになっちゃったから帰れなくて。とても、寂しかったと思うんです。だから、龍の国にある龍の墓場に埋葬しようと思ってます。」


そう、彼は同族である僕を見て、とても嬉しかったのでしょう。同時に、一緒に遊びたいとも思った。龍や龍人にとって、打ち合いや組み手は遊びの1つです。だから、アンデットなのに恐れず、遊んでくれる僕達に心から感謝した。旗を倒したのは、悪戯心からだと思います。遊んで満足した彼は、自分が浄化されるのを感じ取った。長年の孤独から、解放されると知った彼は最後の力を使って、何かを僕に伝えようとした。しかし、最後まで言えず消えた。


「取り敢えず、霧が薄れましたね。」


ルイスは、気持ちを入れ替え戦闘準備する。アンデット達が、小船でこちらに向かって来たからだ。


「取り敢えず、沈めるか。遠距離攻撃を、使える奴はどんどん撃て!陸に上がった奴は、その他の全員で迎え撃つぞ!ルイスは、範囲回復待機させてバフ優先させるか。デバフは、上陸した奴にだけ!」


トキヤは、率先して指揮を取る。と言うのが、ルイスが指揮を取る様子が無いから。ルイスは、人と関わるのが怖くなり、指示する事が嫌になっていた。


「ルイスさーん、そろそろ本領発揮してくれませんかね。俺は、今回の代表じゃないんだぞ?」


「むぅ…がっ、頑張ります。」


ルイスは深呼吸すると、御旗をランコルから受け取る。そして、戦況を冷静に見てから考える。


「遠距離攻撃は、火属性のみに。聖職者は、光属性でゴーストや幽鬼など物理無効を狙い打ってください。その他は、焼き払って構いません。それと、風属性持ちは、範囲攻撃しても良いですよ。船が、押し返されるでしょうし、火が広がって更に火力が増せば尚更良しです。弓職も、可能な限り打ってください。怯みはしませんが、良い足止めにはなるはずです。時間稼ぎには、持ってこいなのですよ。」


戦闘から数時間…。


薄っすら、朝日が見える。すると、アンデット達が光の粒になり消滅する。そして、数多くの灯篭が流れてきて幻想的な景色になる。ルイス達は、思わずカメラを構えて写真を撮る。ルイスは、思いついた様に衣装を神官舞装に変更し、魂送の舞を舞う。


すると、光が少しだけ明るくなり、空へ向かって飛んで行く。まるで、何かに導かれる様に。


「うぅーっ、終わりました!眠い!眠すぎます!」


「ルイス、朝ご飯を作ってから寝てくれよ?」


グレンが、素っ気なく言うとトキヤ達は笑う。


「確かに、食事は最重要だよな。」


「ルイス、頑張れ。」


マッキーとトキヤが、暢気に言う。


「もう、こんな時間…。すぅー、はぁー…。よっ、よし!がっ、頑張りますよ!」


「では、俺も手伝います。」


キリアは、腕まくりして言う。バロンとカリオストロは、寝落ちしたヒヨコ組をテントに運ぶ。


「まあ、俺もランコルさんも居るし、4人で頑張れば大丈夫だろ。取り敢えず、何を作るんだ。」


「simple is Bestで、行きましょう。豆腐とわかめの味噌汁とご飯、焼き魚と卵焼きとほうれん草の胡麻和えですかね。味噌汁と胡麻和えは、同時進行で行けますね。ご飯は、炊いている間が暇ですから、ついでに卵焼きを手伝ってください。焼き魚は、貼り付いて頑張って。僕は、味噌汁と胡麻和えを作ります。他は、お任せします。寝落ちしそうな、人達を優先的に食べさせて下さい。それと、ご飯は自分で取りに来てくださいね。配膳の余裕ないです!」


すると、起きてる人全員から返答が来る。


「なら、俺が焼き魚をやろう。」


ローアンが、素早く魚の下処理をしだす。


「では、私が卵焼きを作りますかね。」


ランコルは、素早くボウルに卵を割りだす。キリアは、米を洗うべく無言で移動する。


「ここからは、別の意味での戦いです!」


ルイスも、気合を入れて準備に取り掛かった。ご飯を食べた後に、ぐっすりと寝てお昼からのびのび過ごすのだった。勿論、夜には宝探し。そして、冷やし素麺を全員で食べてる。素麺は、運営の差し入れですね。文章は、次の様に書かれてます。


差し入れ(運営一同より)


皆さま、夏イベは楽しんで頂けてるでしょうか?今回も、少しだけ悪戯しましたが、これで勘弁して頂ければ幸いです。さて、そろそろ飽きてきた頃合いかと、運営達は思いましてイベントを追加致しました。生産職は、新しいレシピ。その他は、採取ポイント稼ぎや図鑑埋めを楽しんでくださいね。


差し入れ品

・素麺一人前

・風鈴

・扇



なるほど、確かに飽きて来ましたね。イベント追加は、大歓迎ですよ。特に、生産系は!

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