第91話 七龍との話とマルチ推奨大規模レイド戦

さて、七龍様に会いに来ました。ルイスは、座り七龍に挨拶してから本題を話す事にした。未知の花園での出来事、それと精霊の雫について。


「精霊の雫は、霊宝の泉の神代の前に満月の夜置いて、神楽を舞えば夜神がどうにかするだろう。」


「ぐっ、神楽ですか…。確か、祈祷師も取得できますが。あれって、秘匿スキルだった気が…。」


「お前は、龍人ぞ?龍神神楽を、教えてやろう。」


え?えっと、そんなにあっさり良いんですか?


「ルイス、確実に神楽は習得しなければならんぞ?本来は神に捧げるものだが、祈祷師の神楽は我らにも恩恵があるのだ。何せ、祈祷師は神の代行者である役職。神御旗を手にし、一度祈れば天地を揺るがし、屈強な敵と戦う勇敢な者達の導となるだろう。勿論、味方が多ければ多い程…お前は強くなる。」


炎龍は、ルイスを見て力説している。


うへっ…。まあ一回だけでも、間違えず舞えればスキルを貰えるとの事なので、気合を入れてしっかりと擬人化した七龍の動きを見る。そして、時折試しに舞って指摘をこまめに修正していく。


たまに、シラユリも真似して踊っていた。


かっ、可愛い…。何気に、七龍様はスパルタなので最高に癒されます。何とか、三大神楽である神龍・神王・神霊の神楽を習得しました。よかった…。


「神楽といえば、舞装や舞衣。これを、やろう。」


「いや、それは申し訳ないので…」


あの、やめてくださいね?嫌な予感しか、しないのですが!それ、もしかして舞衣は女性用なのでは?


「残念だが、男女兼用だ。」


心、読まれてる!?しまった、龍の瞳は嘘偽りを見抜き心を読むでしたけっけ?油断しました、心のガードは外すなって言われてたのですが……。


「それに、この装備で神楽を舞えば、プラス効果もあるぞ?取り敢えず、着て舞ってみよ。」


わーあ、凄く高性能ですね。いま装備している、神聖なる八雲の狩衣と同等の代物ですよ。しかも、役職と種族補正付き!でも、僕が装備したらぁ…


絶対、女性に間違えられそうです……。


しっ、仕方なくです!シラユリ君の為、ここは僕も覚悟して装備変更!さて、舞は成功しました。


『ほぇ…、とても神秘的で綺麗だった。』


「神代聖職者の神楽舞装、一応はβ時代も有りましたが没になったと聞いてました。なるほど、この効果は凄いですね。だから、特殊クエストでしか使えない設定なのですか。ふむふむ、なるほど。」


ルイスは、納得する。そして、装備を戻す。


「さて、神楽に時間を取られましたが七龍様。精霊喰らい、それについての情報を教えて欲しいのですが?出来れば、どうすれば良いのかもです。」


「ふむ、彼女はもともとは母精霊の1人で、とても優しく美しい女性であったのだ。」


炎龍は、悲しそうに言う。


「しかし、精霊の楽園に瘴気が蔓延した。」


氷龍は、辛そうに言う。


「彼女は、浄化を得意とする光の母精霊だった。」


大地龍は、真剣な表情で言う。


「うむ、しかし限界だったのだ…。瘴気に蝕まれ、かの母精霊は自身を見失った。いまや、あれは守るべき者をくらう化け物となったのだよ。」


煌龍が、悔しそうに言う。


「彼女は、救いを待っている。まだ、心までは失ってはいない。ずっと、聞こえるのだ泣き声が。」


暗龍は、目を閉じてからルイスを見る。


「しかし、ずっと浄化に失敗している。」


暴風龍は、苦々しい表情で言う。


「どうか、あの者に救いを。ルイス、お前と共闘する者達ならきっと、彼女を解き放てるだろう。」


ルイスは、考える表情をする。


ポポーン


特殊試練 霊宝防衛戦が解放されました。


ギルド・クラン・フリー・全員の選択が出来ます。霊宝の泉にある、霊宝7つを30分間防衛しきれれば勝利です。なお、3つまでは壊されてもセーフとします。4つ目が、破壊された時点で敗北となります。また、神楽を舞う人が3回死ぬのも敗北です。参加条件は、今回のイベントに参加しているプレイヤー。レベルや人数制限、装備品やアイテムの制限もありません。さあ、仲間と一緒に頑張ろう!


マルチ推奨大規模レイド


今回、ソロは禁止とさせていただきます。


今回は、フィールドが切り替わります。レイドを発動させたプレイヤーは、招待状や救援状を送る事が出来ます。また、送られた相手は許可か拒否が出来ます。迷惑行為は、Ban対象です。許可すれば、自動で編成され拒否すればフィールドが切り替わり外に弾かれます。どんどん、招待や救援しましょう!


なるほど、取り敢えず帰って相談ですかね


ルイスは、深いため息を吐き出す。そして、顔を上げると七龍にお礼を言い帰る事にした。



**



さて、クランのホーム。どうやら、匿名でマルチ推奨大規模レイドが発動したとの、ワールドアナウンスが少し前にあったそうです。ちなみに、このレイドは僕が留守(不在)にしている間に2回発動したとか。なるほど、僕の他にも居たんですね。


しかし、トキヤは真剣な表情でルイスを見る。


「しかし、2回とも失敗してる。神楽を舞う、プレイヤーがとにかく狙われる。霊宝は、二の次だった感じだ。でっ、その動画を貰って来た。」


ルイスは、トキヤの隣に移動して動画を見る。確かに、霊宝は神楽を舞うプレイヤーを襲う途中で、邪魔だから壊している感じですね。


「なるほど、取り敢えず招待状を知り合いに送りますか。そして、救援状をフリー設定にしましょう。そうすれば、出入り自由ですからね。」


トキヤは、頷き笑う。グレンも、キョトンとしてから。少し考え、装備等を見ている。


「耐久値が、低くなってるし鍛冶屋に行くか。ガルムさん、今は大丈夫だろうか。」


「インは、しているので招待状ついでに、聞いてみましょうか?あ、返事が来ましたね。ふむふむ、グレン…今から、霊宝の泉に行って拠点に適した場所を、素早く見つけてくれませんか?その、拠点で無料でしてくれるらしいです。えっと、行けます?」


「勿論、一応だけどキリアとバロンを借りても良いか?魔物とか、居たら対応が難しいし。」


キリアは、キョトンとしてグレンを見る。


「師匠達に、任せた方が的確だと思うが?」


すると、グレンはニヤニヤしている。そして、紅茶を飲みつつ動画を見返すルイスを見る。暫くして、2人を見ると意味深な雰囲気で告げる。


「最近、活躍が出来てなかっただろ?ルイスに、自分達も使えるアピールはすべきだって思ったんだ。このままだと、師匠達にお前達のポジションを取られるだろ?それで、お前らは良いわけ?」


「「!?」」


2人は、驚いてからグレンを見る。そして、悩む様に深刻そうに眉を顰めるルイスを見る。ルイスは、自分の世界に、入り込んで考えている。


「「やる。」」


「よし来た!じゃあ、行こうぜ。」


グレンは、ルイスに声をかけてから歩き出す。ルイスは、ハッとして微笑むと行ってらっしゃい。っと明るく手を振る。グレン達は、気配を消してルイスを見れば険しい表情で悩む様な雰囲気のルイス。


「……こりゃ、事は深刻そうだな。」


グレンは、心配そうにルイスを見ている。トキヤ達は、同意の意味で無言で頷く。ルイスは、まだ空想論と現実論の中で戦っている様である。


「運営め…、絶対に許しません。」


ルイスは、ポツリ呟くと悔しそうに拳を握る。トキヤとグレンは、それで理解してしまった。ついに、聖王不在では難攻不落の戦闘になるようだ。そしてだ、ルイスが想像でそこまで追い込まれている。その事実に、トキヤとグレンは青ざめ息を呑む。


「ルイス、今回の勝率はいかほどだ?」


「15%です。かなり、厳しい戦いとなります。サーバーのプレイヤー、参加人数が7分の5以下で全滅確定からの、シラユリ達が確実に死にますね。」


その言葉に、全員が驚き固まる。ルイスは、険しい表情で話を続ける。みんなは、静かに聴いている。


「イレギュラーが、起きれば負けますね。」


「おいおい、運営やり過ぎだろ…」


トキヤは、頭が痛そうに呟いている。


「もう、聖王の能力は隠せませんね。」


ルイスは、苦々しい表情で覚悟を決める。


さあ、春の最終イベントが始まろうとしていた。ルイスは、ウィンドを閉じるとソファーに倒れる。トキヤは、少し考えて動き出す。すると、周りも自分のすべき事を見つけて動き出す。


ルイスは、疲れた様に目を閉じるのだった。

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