第90話 フラワーフェスティバル、花精霊の祝福
さて、今回のイベントはストーリークエストです。という訳で、フラワーフェスティバルの会場で花精霊をスカウトしなければ。さて、花精霊はたくさん居ますけど…。ビックリマークの花精霊は、話しかけられる様ですね。ふむ、誰をスカウトしましょうか?ルイスは、ゆっくり会場を歩き出す。
ちなみに、精霊は子供5〜7歳くらいの容姿と大きさです。とても、可愛いらしい衣装もあり写真を取る人も多少は居ます。やり過ぎは、ペナルティがあるので、知り合いには声をかけて止めるルイス。
リルとソルは、噴水に座り楽器を奏で微笑みを浮かべる、百合のモチーフの少年花精霊を立ち止まり見る。百合の花精霊は、リルとソルの視線に気付いたのか、驚いてから儚げながら穏やかなメロディーを奏でる。そして、可愛いらしく手を振る。
ルイスは、キョトンとしてから2匹が精霊獣だと思い出す。そして、2匹の頭を軽く撫でると言う。
「彼と、話してみましょうか。」
同意する様に、2匹は小さく鳴く。
「おはようございます、少しだけ良いですか?」
『えっ…僕?勿論、良いけど。』
百合精霊は、何故?という雰囲気で頷く。そして、楽器を膝に置くとルイスを見上げる。ルイスは、隣に座り少年の楽器を見る。ゲームにありがちな、可愛らしいデザインだが普通に使えそうだ。
「それは、リュートですか?」
『うん、僕の家族に受け継がれるリュートだよ。』
百合精霊は、嬉しそうに楽器をルイスに見せる。リルとソルは、じっと百合精霊を見ている。すると、リルは珍しく悲しそうな鳴き声をする。ソルは、リュートを見てからソルを宥める。
ルイスは、リュートをもう一度見る。
よく見なければ、見落とすくらい薄っすら黒いモヤが見えたのだ。しかし、百合精霊はそれを聞いても手放す気は無いらしい。ルイスは、浄化を使うが弾かれる。衝撃に、思わず呻く。百合精霊は、驚いて立ち上がりルイスを心配そうに見る。
「僕(聖王)でも、浄化不能とは…。武器(御旗)が、無いと無理そうですね。困りました…。」
『僕の為に、ありがとう。でも、無理しないで。』
ルイスは、覚悟を決めると百合精霊に名を聞く。
「百合精霊さん、君の名を教えてください。」
『駄目だよ、君は平和な世界に居るべきだ。』
このフレーズ…。やっぱり、胸糞展開は確定な様ですね。でも、運命を変える力をプレイヤーは持っている。瘴気に汚染された、精霊楽器と彼の真剣な表情。そして、リルの悲しそうな鳴き声とソルの視線を感じながら、ルイスはどう動くか考える。
「……嫌です。僕って、かなり我儘なのですよ。」
ルイスは、薄く微笑みしっかり言う。
『やめて、君まで失いたく無い!』
百合精霊は、青ざめて必死に説得する。
「僕は、この世界の住人では有りません。君が、名前を教えないならば、僕は自力で探します。」
ルイスは、その説得の全てを聞いた上で受け流す。そうしないと、先には進めないからだ。百合精霊の少年も、これには白旗を上げるしかなくなる。
『え?え?ちょっ、分かった!分かったから勝手な事しないで!僕の名は、シラユリだよ。』
「ではシラユリ君、よろしくお願いしますね。」
ルイスは、素晴らしい笑顔で御節介を決意する。
さて、任務が解放されました。未知の花園、その情報を求めて。周りのハテナマーク、それが浮かんだ精霊に話をかける。ルイスは、素早くマップを確認して、1番近いハテナマークを目指す。
「さて、行きましょうか。」
ルイスは、シラユリを抱えるとソルに乗せる。そして、後ろに乗ると走り出す。リルは、子供化してシラユリに抱っこされている。まずは、植物精霊の長老から話を聞く。長老を見つけたので、降りてシラユリと手を繋いぎ歩き出す。
『おや、若いの…ワシに何か用かな?』
「未知の花園、それについて知りたいのです。」
すると、長老は険しい表情をしてルイスを見る。
『また、お前達は花園を荒らすつもりか!』
「……話を聞いても?」
ルイスは、少し考え長老を見る。長老は、嘘をついている様には見えない。ルイスは、真剣な表情で詳細を求める。その姿に、長老は感心するが怒りを込めた口調で、睨む様に出来事を語り出した。
『未知の花園は、どんな獣や人も寄せ付けぬ特殊な結界に囲まれていた!しかし、それを冒険者が破壊した!そのせいで、精霊を喰らう化け物が!精霊喰らいが、花園を荒らした!更には、その冒険者が精霊の雫という精霊王の宝玉石を奪って行った!』
なるほど、荒らされたのは仕方ない、けれど宝玉石は取り返す必要がありそうです。取り敢えず、どんな冒険者だったのか特徴を聞く必要がありますね。
「その、冒険者の特徴を教えてください。」
長老は、特徴を教えて最後にこう言う。
『冒険者の名は、弓師がザガン。剣士が、ドル。魔術師をアルヤ。回復術師が、ローアンと言った。ローアンは、精霊喰らいに殺されとる。アルヤも重傷だったから、そこまで遠くには行っとらんはずじゃが。精霊の雫は、無事では無いじゃろうな…。』
ルイスは、礼を言うと近場の村をマップで確認。そして、ここから一番近い街に移動する。
「すみません、ドルという者は知りませんか?」
「ん?そこの宿に、泊まってる厄介な客だね。」
村人は、深いため息を吐き出して言う。
「彼は、何かしたのですか?」
「宿泊費、まだ払ってないんだ。言えば、剣を抜いて暴れるし。正直、負傷者も出て困ってる。」
なるほど…、それはそれは…お仕置きのしがいがありそうですね。シラユリ君には、待って貰いましょうかね。どうやら、荒事になりそうですし。
「シラユリ君、リルとソルとお留守番です。2匹とも、宿から離れて遊んでくださいね。」
すると、大人の姿のソルがシラユリを強制的に、背中に乗せて草原の方に歩き出す。リルも、飛び跳ねるように花咲き誇る草原に向かう。ルイスは、思わずクスクスと笑い見送る。そして、真剣な表情になると宿へ入って行った。意外にも、ドルは居た。
「ドルさん、精霊の雫を返してください。」
「ふんっ、くれてやるよ!」
そう言って、割れた精霊の雫を荒々しく机に置く。ルイスは、険しい表情をするが。深呼吸…。
「所で、宿代はいつ払うんです?」
「うるせぇ!」
剣を抜くが、ルイスは王水で溶かす。たかが、鉄の剣だ。あっさり、溶けてしまう。ルイスは、短刀を取り出してブラックオーラを放ちつつ言う。
「おやおや、怖いですね。荒事は、好きでは有りませんが。何か、言い訳があるなら聞きますよ?」
「ひっ!?まっ、待ってくれ!魔術師が、負傷してて治療薬を買ってるから払えないんだ。」
へぇー…、治療薬ですか。どうやら、嘘では無さそうです。ですが、その治療薬とやらは本当に効果が有るのでしょうか?仕方ないです、NPCであれ見捨てるのは嫌ですからね。ジョブを、薬師に変更。
「何処ですか?」
「へ?」
「負傷者は、何処です!さっさと、案内してください!どこの、ヤブ薬師か知りませんが、薬があってなければ死にますよ!さあ、急いでください!」
ルイスの険しい表情に、男は慌てた様に案内する。弓師の男が、魔術師を心配そうに見ている。
「ドルさん、飲ませている薬を見せてください。」
「これだ。」
鑑定すると、デタラメな調合薬だと分かる。
「はぁ…、やっぱりですか。」
「どうしたんだ?」
「雑草の絞り汁、こんなので完治する訳が有りません。取り敢えず、もう薬は買わなくて良いです。お金に、少しでも余裕が有るならば、今すぐ宿代を払ってきてください。僕は、彼を治療しますから。」
ついでに、ヤブ薬師もお説教しましょうか。
ドル達は、深く頭を下げる。ドルは、宿代を払いに行く。それを見送り
ルイスは、治療しながら弓師であるザガンに状況を聞く。ザガンが言うに、精霊喰らいは目覚めかけで喰われかけた精霊を助けた所、誤って封印を解いてしまったらしい。そして、精霊王が精霊喰らいを押さえている間に、どうにかして精霊の雫を守ろうとしたが壊されたと。もう、どうすれば良いか分からない。出来れば、助言が欲しいと。
ふむ、困りましたね…。まずは、精霊の雫をもとに戻さなければ。さて、誰に聞くべきですかね。精霊と仲の良い、龍とかですかね。七龍様なら、知っているでしょうか?文研も、多少はあさってみましょうか。取り敢えず、彼らに指示を出さなければ。
「今回の件、精霊側は勘違いをしてます。なので、話し合いするべきです。間違いや、勘違い…そしてです、今後の方針を決めなくてはです。」
ルイスは、立ち上がり蜂蜜酒を出す。
精霊の大好物、そして話し合いに持ち込む為の切り札でもある。これは、精霊樹の花を使った蜂蜜酒。お店では、売れる物では無いので個人用ですけど。一応、裏メニュー扱いで同盟では売ってます。
「これは、特別な蜂蜜酒です。これを、渡して話し合いをしてください。これは、逃げてしまったあなた達がやらなければいけません。頑張って。」
ルイスは、残り2つのハテナマークを見に行くが、大した情報は無し。ルイスは、シラユリを連れて店に入りホームへ。すると、グレンが泣き言を言う。
「灼熱ルビーって、何処にあんだよぉー!」
「名前からして、火山地帯じゃないか?」
トキヤは、暢気に紅茶を飲む。隣には、三つ編みおさげのチューリップの花精霊が居る。グレンに、呆れた視線を向けているのが薔薇の花精霊だ。
「一応、探したんだぜ?周りにも、聞いたし。」
「俺も、月の祝福ってアイテムを探せとさ。」
ルイスは、キョトンとする。
「月の祝福って、シリーズ物ですよね?おそらく、精霊ですし月光杖でしょうけど。厄介ですね。」
「ルイスは、どんな感じ?」
「うーん、精霊の雫を取り返したのですが。壊されていて、何とか修復する手段が無いか探している所ですね。七龍様なら、何か知ってるでしょうか?」
ルイスは、余計な事を言わない様に言う。シラユリは、話を聞いてルイスに心配そうな視線を向ける。
『七龍に、会うって簡単に言うけど…大丈夫?』
すると、トキヤとグレンはジト目でルイスを見る。
「あー、バタバタしてて忘れてました。」
ルイスは、首に掛けた指輪を外し微笑む。シラユリ達は、固まった後に納得する。ルイスは、指輪を首にかけて紅茶を飲む。そして、精霊達は眠そうなので部屋に案内する。ルイスは、考える仕草。
「ルイス、今回のイベント一番最初に選んだハテナマークキャラで、ストーリーエンドが決まる。」
「どうやら、ヤバそうなのを引いたみたいです。」
ルイスは、小さく息を吐き出す。トキヤは、優しく微笑む。周りも、ショボーンとしているルイスを、優しく見つめる。ルイスは、苦笑して呟く。
「みたいだな。お前は、まだ探し物を指定されてないし。まあ、あれだったら手伝うからな。」
「ありがとうございます。さて、そろそろログアウトしますね。宿題が、まだで。では、また明日。シラユリ君の事、よろしくお願いしますね。」
ルイスは、ログアウトするのだった。
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