第89話 チーターVS

次のイベントまで、期間があり新メンバーを迎えた僕達ですが…最近、チーターの話題がチラホラと見受けられます。チーターとは、チートをする人つまり不正行為をする人って事ですね。


ちなみに、チーターを撃退出来る人をチートキラーと言います。はあ…困りましたね。


おや、チャットがきましたね。誰でしょう?


グレン:すまん、チーターに絡まれたヘルプ!


ん?えっと、そんな大々的チートを披露してるんですか?運営は、そういうの厳しいはずですが。


「ふむ、少しだけ出かけてきます。」


「ルイス様、どちらへ?」


キリアは、キョトンとしてキッチンから顔を出す。トキヤは、ルイスの苦笑を見て悟る。


「厄介事か?なら、急がないとな。」


すると、ガリレフがルイスの後ろに立つ。


「なら、僕も暇だし着いて行くよ。」


「ん?1人でも、大丈夫ですよ?」


ルイスは、キョトンと首を傾げる。


すると、深いため息を吐き出すトキヤ。ガリレフとローアンも、困った様にルイスを見ている。


「ルイス君、君は同盟の盟主でありこのクランのリーダーだよ。護衛も付けず、行動するのは避けるべきだ。じゃないと、囲まれるだろうしね。」


ガリレフは、真剣な表情でルイスに言う。


「今の時期は、特に単独行動はやめとけ。」


ローアンは、苦笑して言い聞かせるように言う。ふーむ、過保護過ぎでは?いえ、ですが囲まれるのは嫌ですし、ガリレフさんだけなら良いですかね。


「俺も、一緒に行く。厄介ごとなら、居た方が良いだろ。いろんな場所に、顔がきくからな。」


ローアンは、暢気に言う。キリアさんが、少しだけ落ち込んでる…。取り敢えず、グレンが心配ですし急がなければ!場所は、中央広場でしたね。


ルイスは、急いで行けば困った表情のグレン。


「わっ、私は行きません!」


「そんな事、言わないで行こうぜ!」


絡まれていたのは、何とコマチさんでした。


「こんにちは、彼女と待ち合わせしてたのでやめてくれませんか?それ、迷惑行為ですよ。」


「るっ、ルイス君…待ってました!」


コマチさんは、素早く察して手を振る。そして、少しだけ赤面してルイスを見る。


「は?邪魔すんなや!いくら、有名人だからってぶっ殺すぞ!どっか、行けよ!雑魚!」


ふむ、かなり自信がある様子ですね。そして、この態度には心当たりがあります。チートで、勝てたため慢心しているのでしょう。困ったものですね。


「売り言葉は、いつもなら買いませんが、身内が被害を受けているのなら話は別なのですよ。殺せるものなら、僕を殺してみてはどうですか?馬鹿さん。と、言う訳で…覚悟はよろしいですね?」


ルイスは、笑みを浮かべて短刀を構える。


「あ?ぜってー殺す!」


相手は、録画を起動させる。ルイスも、素早く録画を起動する。すると、相手は驚く。おや、驚かなくても良いじゃないですか。チートの証拠は、撮っておくと後々有利なんですからもちろん撮りますよ。


「さて、まずは…」


ルイスは、素早く相手に斬り込む。勿論、当たらない。ルイスは、素早く防御の姿勢になり下がる。


「追撃なし、相手はびびってますね。」


「びびってねぇよ!」


背後から足音、前のは幻覚ですかね?いいえ、チートでしょう。皆んなにも、見えてる様ですし。ざっと、周囲に視線を一瞬だけ向ける。ルイスは、軽くステップを踏み、振り返りつつ後ろに下がる。武器が、近くで空を斬る音がする。思わず笑う。


「なるほど…」


だいたい、ロングソード一本分離れてますね。ぶっちゃけ、視界の情報は役にたたません。ならば、ロングソード一本分だけ距離を詰めれば良いだけです。よし、受け流せました!少しだけ、距離を修正して次ですね。おや、驚いてますね。何故です?


おや?今度は、早い動きになりましたね。


しかし、僕って回避型回復職のステータスなのですよ。なので、何とか着いて行けます。あら、フィールドの壁にぶつかりましたね。速すぎて、対応が出来ないとみました。隙も多いし、ここで仕掛けるべきでしょうか?いいえ、もう少し遊ばせましょう。


さてさて、幻覚チートに加速チート。次は、どんなチートが来るでしょうか?引き出しますか。


攻撃を予測して、聖なる障壁を使うルイス。だが、男は真っ直ぐ突っ込んで来る。ルイスは、険しい表情。そして、素早く壁から距離を取ると聖なる槍を撃ち込む。スキル貫通は、技にある。しかし、男はスキルを使うでもなくしてきた。貫通チート……。


しかし、聖なる槍の牽制攻撃にぶち当たり、渾身の貫通パワー攻撃も無効化される。


ルイスは、ふむふむと頷く。


野次馬は、何で戦えるの!?って雰囲気だ。勿論、グレンやコマチ達もだ。ルイスは、短刀を手元で遊ばせて余裕な表情で無邪気に笑う。


「何で、反応できるんだよ!クソ!」


「余り知られてませんが、β時代…僕はチートキラーとしても有名だったのですよ。何せ、生産職最強の称号は美味しい経験値と思われてましたから。」


ルイスは、素晴らしい笑顔である。グレンは、そんなルイスを見て退治されたチーターに、思わず同情してしまう。ルイスは、男に視線を向けて微笑む。


微笑むと、一括りに言ったが無感情で冷ややかな微笑み。思わず、寒気を感じて男はじわじわ後退る。


「僕、言いましたよね。勿論、覚悟は出来てますよね?大切な身内が、この世界で傷つくのはとても許せないんですよ。だから、遊んであげますね。」


ルイスは、いつもの口調で話すのだが、その表情はいつも以上に素晴らしい笑顔。ガチキレ…、グレンはそう思い困った表情をする。ルイスは、めったにガチキレはしない。もともと、性格的に激怒する様なタイプでは無いからだ。


グレンは、少しだけ思う。


普段、怒らない人程…怒ると怖いものであると。


ここまで、幻覚・加速・貫通の3つですか…。


「ふんっ、やられるかよ!」


乱撃して、距離を取り重撃を撃ち込む。ルイスは、素早く距離を取るが重撃で割れた、地面の破片がルイスを襲う。素早く、聖結界を張るが全ては防げない。しかも、一気にHPの半分を持っていかれた。


ダメージ量が、明らかにおかしい。


「継続回復…。」


「なんだ?もう、降参か?」


強化チートなんて、初めて見ましたね。これは、警戒が必要です。そして、嫌な予感がします…。


攻撃が、当たらない。というより、当たり判定が無いです。これでは、ダメージを与えなれません。まあ、焦りは有りますが深呼吸して落ち着かせます。


冷静に見て、相手のPSは判定DかE辺り。チートのレベル判定的には、BからCなはずだからレベルと判定からして使いこなせないはず。という事は、やはりアバター自体が弄られてる?ステータス的には、そう強くないので決定打撃さえ入れば勝てます。


しかし、相手に攻撃判定がありません。


かなり、防戦一方になりますね。貫通するので、魔法防御は捨てて回避優先します。MPは、継続回復にガン注ぎ。防げない攻撃は、あえて当たりに行きます。どうせ、回復しますし。距離が開くと、反動が増してスタンが入る可能性があります。攻撃の種類によっては、継続ダメージが酷くなるのでわざと当たります。本当に、装備が自動修復付きで良かったですね。はぁ…、さて解析していきますか。


「ははっ、ボロボロじゃん!弱いな!」


「……ふっ」


ルイスは、挑発する様に笑う。


「お前、殺す!しぶといが、とどめだ!」


タメ攻撃、スキルは?もしかして、弄ったアバターだと使えないとかです?いや、有り得ない温存ですかね。まあ、僕を倒せばメンバーが黙ってないでしょうしね。まあ、確かに手札は多い方が良いです。


多い方が良いのですが、少し僕を舐め過ぎてませんか?ちょいと、プライドが傷ついたのですが。


いや、使わないのなら別に良いんですが。これでも僕、レベル200に近いレベルですよ?いくらです、回復職だとしてもその攻撃力は重いですよ?うーん、当たり判定が無いからって思考が浅い。


やはり、チートで僕に防戦一方に出来たから?


まあ、良いです。作戦的には、肉を切らせて骨を断つ行為ですが、やる事は変わりませんし。


肉を切られても、僕の場合は回復が出来ますし。ゾンビ戦法では、有りませんが万が一に死んでも蘇生できちゃうので。クールタイムも、ポーションや蘇生薬で稼げちゃいますしね。さて、来ました。


ルイスは、小石を握り。重撃を回避した、その一瞬で小石を投げる。すると、当たり判定がでたのだ。


ルイスは、表情に出さないように距離を取る。


「ちっ、すばしっこいな!ゴキブリかよ!」


「……君が、遅過ぎるだけでは?」


敢えて煽り、馬鹿にした様に嘲笑う。


「マナーが悪いぜ、ゴキブリプレイヤー…。」


「君がチーターの時点で、此処はもはや無法地帯ですよ。今更、マナーだのなんだの言っていても、全くの無意味なのですよ。ここでは、強い者が正義であり正しい。ただ、それだけです。簡単でしょ?」


ルイスは、スキルを使用する。発動まで、時間はかかるが現時点で聖職者最強の魔法…。


《血塗れの乙女》ブラッディーメイデン


「なるほど、なら俺がお前を殺せば解決だな。」


「そうですね。まあ、出来ればですが。」


ルイスは、クスクスと笑い挑発する。さて、もしもHPが減らないチートだとしたらどうしますかね。


さっきから、僕が攻撃してるのに減りません。


おや、流石に運営さんも来ましたね。さて、そろそろ終わりにしたいので、頑張りますかね。


ルイスは、ニヤリと笑うとナイフを構える。


重撃を受け流し、取り敢えずナイフで斬り込む。しかし、男は受け止める。その瞬間に、ルイスは詠唱する。後は、発動するだけなのだ。


「穢れを祓いし、血塗れの乙女よ。神託に従い、祈祷師ルイスが汝に命じる。ブラッディメイデン!」


レイピアを持った、血塗れの乙女は険しい表情で素早く男に一撃。一瞬の出来事に、対応できずチートも発動出来ずに吹き飛ばされる。


一瞬で、男のHPは消えてしまった。


野次馬からは、褒め言葉が飛び交う。ルイスは、深い溜め息を吐き出す。そして、ナイフをなおす。


グレンが、手を振ったのでガリレフとローアンを手招きで呼ぶ。そして、グレン達の元に向かう。ルイスは、疲れた表情で深い溜め息をまたつく。


「ルイス、お疲れ様。取り敢えず、何処か個室のある店に入ろうぜ。じゃないと、絶対に囲まれる。」


全員が、同意する様に頷いたので、近場のカフェに避難する。そして、やっとひと息。


「すみません、私のせいで巻き込んで…」


コマチは、本当に申し訳ない表情。


「大丈夫ですよ。困った時は、お互い様ですし。それより、コマチさん達とはフレンドになってませんね。この際ですから、フレンドになりません?」


「え、逆に良いの?やったー!」


フレンド登録をし、ゆっくりお茶をする。そして、暫くして、各クランのお迎えが来て解散した。


ルイスは、アトリエでポーションを作る途中で寝落ちしたのは言うまでもない。そして、久しぶりにポーション作りに失敗したのであった。


ちなみに…


カリオストロに、アトリエで仁王立ちで説教を受ける、ルイスを見たとか見てないとか。

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