第88話  イベントデイリーとルイスの事情

さてと、今日もイベントデイリーを頑張って行きますかね。初心者の街、その桜道を進むと難易度高めのデイリースポットがあるそうです。


おや、初心者が多いですね。どうやら、何度か失敗もしているみたいです。うーん、どうしましょう?


「あ、ルイスさん。高難易度を、初心者の為に消しに来たんですか?実は、僕もなんです。」


「おや、アベル君。錬金術は、どうですか?」


ルイスは、暢気に笑いながら言う。


「実は、僕には難しくて…サブ職業は、一回だけ変えられますよね。なので、剣士に変えました。すみません、色々と教えてくださったのに……。」


アベルは、本当に申し訳なさそうに言う。


「いえいえ、人には苦手もあります。どうせゲームなら、楽しめるジョブを選ぶべきだと僕は思いますよ。なので、気にしないでください。」


ルイスは、笑顔で言うと料理のデイリーを受ける。レアリティ7の料理、という鬼畜設定だったからである。ルイスは、鼻唄を歌いつつ料理をする。


「あ、僕もそろそろ行かなきゃ…。それでは、ルイスさんまたホームで会いましょうね。」


「はい。お気をつけて、行ってらっしゃいです。」


ルイスは、暢気に手を振り料理を再開する。ベテラン含めた料理職業が、ルイスの料理を見るべく集まって来る。ルイスは、少しだけ困ったように笑う。そして、レシピを取り出して簡単に作る。混雑してて、周りの人達が迷惑そうだったからだ。


「さて、終わりました。おや、レンジさん。」


レンジが、手を振っていたので首を傾げる。レンジ達は、人混みを押し退けてルイスの抜け道を作る。


「助かります。レンジさんは、これから討伐ですかね?初心者が5名に、ベテラン勢の編成ですか。」


「おう、良かったらルイスも行かないか?回復職不足でな。広場じゃ、回復職の取り合いでカオスな事になってるぜ。まあ、周りの野次馬どもも、ルイス狙いで来たんだろう。でっ、どうする?」


な、なるほど…。回復職は、実は割合的に1番少ない職業ですからね。基本、攻撃職や魔法攻撃または魔法支援が多いです。そして、この時期に起こるのが回復職不足です。回復が、いないとバランスが取り難い為…任務やデイリーに失敗しやすいのです。


また、初心者向けの職業では無いのも理由です。


と言うのも、回復職は基本…初期段階で攻撃が出来ません。誰かと、一緒では無いと即死案件です。


しかし、初期段階の回復職はメンバーとして人気がありません。寧ろ、邪魔者扱いすらされて、やめてしまう人が多いのですよ。ちなみに、特殊回復職は例外です。例えば、祈祷師や教皇や神子など。


まあ、神子はβ限定の特殊回復職ですけどね。


このまま、断れば囲まれるのは確定ですし。うん、やる事もありませんし、行きましょうか。


「では、僕で良ければ喜んで。」


すると、嬉しそうにレンジは笑うのだった。


ちなみに、師弟の腕輪をつけて何とかクリア!初心者さんが、死にかけては回復してました。まあ、回復職は、もう2人程居たので少しは楽でしたが。


それから、全てのデイリーを終わらせました。


1人で行動し、野良パーティーを組んでデイリーを終わらせる。そんな充実した、久々の冒険者ライフも今日で終わりです。ちなみに、2匹は花妖精衣装で可愛いらしくなっております。服を着ると、妖精の羽がはえるものでキラキラ花が舞うエフェクト。


これは、最高な一枚が撮れそうですね。


「うちの子が、可愛いです。」


お店も、春物に変更。BGMも、変えてみました。まあ、イベント期間だけにしますけど。


「あっ、あの!すみません、デイリーを手伝ってくれませんか!その、失敗が続いてクリアが…」


さて、頑張ってお手伝いしましょう!それから、同盟メンバー全員が忙しく手伝いを。何故ですか、初心者達がキラキラした目で見てくるのですが!?


何とか、お助け期間が終わりましたぁ…


「ルイス、お疲れ様。紅茶で、良いか?」


トキヤは苦笑して、ぐったりソファーに倒れたルイスに言う。ルイスは、起き上がり座り直す。


「あ、ありがとうございます。」


「まさか、回復職不足が起きるとはな…。」


マッキーは、苦笑してティーカップ片手に、ルイスの右隣に座る。目の前は、ガルムとシャルムとセロンが座ってる。トキヤは、ルイスの前に紅茶を置いて左隣に座る。ティーカップを持った、グレンが心配そうにルイスを見る。全員が、苦笑している。


「うーん、暫く野良は行きたくないです。」


「それは、俺達もだな。」


マッキーは、思わず笑う。全員が、無言で頷く。


「次の日イベントまで、時間がありますね。たまには、一人でお出掛けするのも良いかもですね。」


「ん?何か、あんの?」


グレンは、キョトンとルイスを見る。トキヤは、本心を探すかのようにルイスを見る。


「実はですね、キリアさん達がお世話になってた孤児院、王都の孤児院が引き取ることになりまして。ガリレフさんとローアンさんが、フリーになったから雇う事にしたんですよ。それで、お出迎えに行こうと思いまして。ガリレフさんは、薬学者でもあり調合スキル持ちです。ローアンさんは、料理スキル持ちです。なので、必ずしも僕がお店に居る必要がなくなった訳なのですよ。わーい!」


すると、驚き嬉しそうなバロンとキリア。しかし、ランコルとカリオストロそしてドラコフは警戒。確かに、新しいメンバーが増えるのは良い事だ。しかしながら、ルイスがお店を不在になる確率が上がるのは喜べない。なにより、ルイスがお店を丸投げして姿を消せば…間違いなく、このクランは崩れてしまうだろう。同盟リーダー達も、複雑な表情だ。


「ルイス、それはどう言う事だ?」


トキヤは、複雑そうな表情だ。


「僕がログイン出来なくても、自立出来るのは良い事だと思うのですが。えっと、何か問題でも?」


ルイスは、ん?どうかしました?という雰囲気で首を傾げる。しかし、緊張感が高まる一方である。


「確かに、ルイスがログインしなかった事は、一度も無かったな。もしかして、今後ログインが出来ない予定でもあるのか?えっと、困り事なら協力するぞ?あれだったら、俺達3人はリアルで会えるし。いつでも、相談はのれるんだからな?」


「ふふっ、ありがとうございます。ですが、安心してください。万が一に備え、自立できる体制を作りたかっただけです。それに、今年は僕とグレンは受験生ですよ。志望校に受かるため、多少はログイン日数が減ると思われます。なので、申し訳ないですがトキヤさんにクランは任せっきりになります。」


すると、ハッとするトキヤ達。ルイス達は、今年で中3だ。つまり、志望校に受かる為の競走は既に始まっている。忙しい中、勉強と両立してルイスはログインしていた事に気が付いた。一方で、NPCは受験生の事を知らない。トキヤは、簡単に説明する。


「ルイスは、志望校は何処だ?」


「僕は、星秀冠高校の普通科です。」


ルイスは、暢気に笑う。すると、少しだけ残念そうな表情をするグレン。何故ならば…


「俺は、スポーツ科だから学科が違うな。」


グレンは、ため息を吐き出してしまう。


「そうですが、会えない訳では無いですよ?取り敢えず、まずは受かる事を目指さないとですね。グレンは、推薦ですが僕は一般ですからね。頑張らないとです!という訳で、ログインは減りますね。」


ルイスは、真剣な表情で頷く。


「ん?グレンは、推薦なんだ?」


マッキーは、暢気に聞く。


「一応、サッカー部のエースやってます!」


グレンは、どやっ!という雰囲気である。


「おおっ、凄いな。」


「ルイスは、美術部の部長になったけどな。」


すると、全員がルイスを見る。


「うちは、部員が少ないですから。ほぼ、コンクールがある時だけの活動です。それ用の絵を描いて、コンクールに応募して評価して貰うだけです。なので、実質は帰宅部と何ら変わりは無いですよ。」


ルイスは、紅茶を飲みながら微笑む。


「ちなみに、ルイスの部屋にはbreezeメンバーの絵がある。ちなみに、その写真がこれだ。」


グレンは、素早くウィンドを動かす。


「ちょっ!グレン、見せない約束でしたよね!」


ルイスは、慌てて立ち上がる。恥ずかしさに、赤面させてアタフタする姿は可愛い。しかし、両サイドにマッキーとトキヤがいる為、ルイスの描いた絵は見られてしまう。全員が、驚いている。


「うわぁーん、グレンの裏切り者!」


ルイスは、机に突っ伏し独り言を言いながら呻く。ちなみに、その後に頼まれてトキヤに画像を送る事となったのは、勿論だが言うまでも無いだろう。

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