第77話 クリスマスとワールドクエスト

さて、シスターダリアはもう暇ですかね?


「あら、聖王様。いえ、ルイス君どうしたの?」


おばあちゃんシスター、ダリアは優しく微笑む。


「「え?」」


驚いて、こちらを見る双子。ルイスは、曖昧に笑うとシスターに静かにのジェスチャー。


「別に、気にしなくても良いですよ。それより、今回はクリスマスクエストをしに来ました。」


「あらあら、全部で3つあるけど。」


そう言って、紙を渡す。


1、ダナブ教会で、クリスマスの歌を歌う。


2、奪われた、サンタの袋を探せ!


3、真っ赤なお鼻の迷子のトナカイを導け。


☆、???


☆、???


ん?星で、クエスチョンマーク?なるほど、全てクリアすると、解放されるみたいですね。


よーし、行きましょう!


まずは、ダナブ教会で歌を歌うですね。あ、ピアノがあります。ふむ、ジングルベルくらいなら弾けますし歌は双子に任せましょうかね。


「歌う?」


「歌うの?」


「では、ジングルベルは知ってます?」


双子が、頷いたのでピアノを弾く。


「「「ジングルベル〜♫ジングルベル〜♪」」」


3人で、歌うと幽霊の子供達が現れて歌い出す。歌い終わると、楽しそうに去って行く子供の幽霊達。ルイスは、ポインセチアをその場に置いて歩く。


「置いていくの?」


「お店で、使った余りですが。親が、花が好きで。だから、花言葉とかも良く教えてもらうんです。」


ルイスは、少しだけ寂しそうに笑う。


「花言葉は?」


「ん?確か、聖夜とか祝福でしたっけ。あ、それと『私の心は燃えている』というのもありました。」


今は、分かりませんが。と、ルイスは笑って手を差し出す。すると、嬉しそうに手を繋ぐ。


「そう言えば、君達の名前は?」


「負けた時、奪われたから無いよ。名前は、存在を示すもの。存在を、固定するものだし。でも、お兄ちゃんが僕らを認識してくれた。だから世界が、僕達の存在を認めてくれたんだ。僕達は、消えずに済んだ!ありがとう、お兄ちゃん。」


「それと、さっきの歌で逃げちゃったみたい。」


ん?えっと、いったい何がですかね?


「あのね、7つの罪が帰ったの。その代わり、7つの獣が解き放たれた。罪を司る、獣たちが……。」


「……偶然ですよね?」


すると、神託スキルが発動する。


『まあ、クエスト最終日だったしね。君が、ラストだったからかな。歌のおかげで、神聖な力が集まった。だから、逃げ出したのかもね。』


つまり、その罪を司る獣を討伐せよと?


傲慢 ルシファー【グリフォン】

憤怒 サタン【ユニコーン・ドラゴン・オーガ】

嫉妬 レヴィアタン【マーメイド】

怠惰 ベルフェゴール【フェニックス】

強欲 マモン【ゴブリン】

暴食 ベルゼブブ【ケルベロス】

色欲 アスモデウス【サキュバス・インキュバス】


ふむ、これは厄介ですね。まあ、サンタの袋を回収してからでも、遅くはありませんし。よし、行きますか?あれ、袋がもう既にありますね。


いつのまに、その袋を取って来たんですか?


あ、さっきですか…はい。


では、そこにいるトナカイさんと一緒にサンタさんを探しましょう。どうやら、街に居るようですね。


では、急いで行きましょうか。


悪魔の件、無くなっても仕事は忙しいかもですね。しかも、ユニコーンとフェニックスは蘇生薬の素材がドロップします。何が何でも、参加しなくては。


ルイスは、トナカイをサンタに返して歩く。


ポポーン♪


おや、プレゼントを送ろうですか。もう、送ったのですがどうせなら、探してみるのも良いですね。


もう一つは、この世界にしか存在しない、希少植物であるスノーフラワーの採取ですね。どうやら、皆さんは此処でリタイアしている様です。


見た目は、氷結晶の様な美しい花。氷山の秘境、その奥深くで密かに花咲かす希少植物です。


確か、錬金・料理・強化・補助などなど…。色んな事に、使える万能素材なのですが。それを守るは、神殺しの獣フローズヴィトニル。


いえ、有名な名前は……フェンリルでしたね。


そうです、リルの名前の由来になった神獣です。どうやら、倒す前提で掲示板では話してますね。


素材とかドロップとか、どうしてそうなるのでしょうか?うーん、少し血の気が多過ぎませんか。暫くは、戦闘イベント少な目でしたからね。


でも、騒ぎたいならレイドでどうぞ。


ふーむ、困りましたね。取り敢えず、お店が気になるので戻りますかね。双子も、休ませたいですし。


お店に戻ると、視線が突き刺さる。


「お帰り、その双子は?」


「緊急ですが、双子の名前募集します。一応、隠しクエストで仲間になりました。この子達、疲れているのでお願いしますね。僕は、ネーミングセンスが壊滅的なので。ん、キリアさん?ランコルさん?」



2人が、驚いて固まる。あ、ランコルさんは教皇。キリアさんは、何で驚いているんでしょうか?


「まさかの、聖夜の双子を連れて来やがった。」


バロンは、疲れた様に呟く。


「あれー?もしかして、有名だったりします?」


「この世界では、誰もが聞かされる国民的な御伽話だからな。しかも、聖夜にしか現れないのに1日早く会えるとは。幸運と祝福、それを司る天使でゲレティー様の孫になる。神と人間、半神だったが悪魔との戦いで、多くの血を流し天使となった。」


ん?ゲレティー様、貴方は凄く若く見えますが。いったい、何歳なんですかね?そして、双子も、見た目通りの年齢では無いんでしょうね。


「お兄ちゃん、年齢についてはヒミツだよ☆」


「あ、はい……。取り敢えず、名前募集中です。」


すると、バロンは首を傾げて呟く。


「ん?名前なら、あるはずだろ?確か…、天使図鑑にも……何でもないぞ。うん、昔の事で忘れた。」


天使図鑑?ふむ、後で調べる必要がありますね。バロンが、いきなり青ざめたのを見つつも言う。


「取り敢えず、双子を部屋に入れてください。」


「分かった。で、ルイス様は?」


ルイスは、少しだけ迷うと言う。


「うーん、同盟メンバーで暇な人!」


「ん?俺が、暇だけど何かあんの?」


マッキーは、キョトンとしている。ルイスは、少しだけ考えてから周りを見て、もう一度だけ言う。


「他に、同盟メンバーで暇な人!」


すると、キリアが暢気に言う。


「では、私が行きます。午後から、バロンと店番交代なのでフリーになります。それに、ルイス様の間近でお役に立てるチャンスですからね。」


「それは、気にしなくても良いですよ。でも、目的地に、着くまでは魔物だらけですから。だから、とても期待してますね。さあ、行きましょうか。」


ルイスは、明るく笑うと言う。


「なら、俺も行こうかな?」


その声に、ルイスは固まり勢いよく振り返る。


「へ?爆裂兄さん?」


「久しぶりだな。ルイス、元気にしてたか?」


爆裂は、優しい目でルイスに挨拶する。すると、ルイスは子供らしい明るい笑顔で言う。


「兄さんも、来てくれるんですか。嬉しいです。」


「ごめん、日本に帰って来れなくて。せめて、空いた時間に会おうと思って。今日から、1週間だけちょいちょいだけど様子見に来る事にしたんだ。」


なるほど、ちょいちょい……。でも、それでもやっぱり嬉しいです。あれ、そういえば周りが静かになりましたね。すると、お客様の暖かい視線が集まっている。サッと、血の気が引くルイス。


うっ、少しだけ喜び過ぎました。思わず、赤面して恥ずかしさを堪えつつ咳き込む。


「こっ、こほん。では、行きましょうか。」


「いや、そこは喜んでも良いだろ。爆裂が、来ない事を1番ショックに思ってたのはお前だし。」


マッキーは、ニヤニヤしながら言う。


「うわぁー、言わないでくださいぃ!」


「何か、こんなルイス様は新鮮ですね。」


思わず、キリアは笑う。バロンも、頷いて笑う。


「取り敢えず、営業の邪魔ですから行きますよ!」


ルイスは、怒ってますという表情でムスッとする。子供らしい、そんな可愛い仕草に笑う保護者組。


「もう、驚きました。何で、兄さんがいるなら教えてくれないんですか?まったくもう……。」


「こらこら、機嫌直せよ。今から、冒険だろ?」


爆裂は、ルイスの頭を撫でながら言う。


「分かってます。さて、説明しますね。今回の目的地は、氷山の秘境であるフロスト山です。採取目標は、その奥深くで密かに花咲かす希少植物です。」


ルイス達は、魔物とエンカウントしながらも、フェンリルの元に辿り着く。フェンリルは、威嚇する。


「フェンリルさん、僕達は確かにスノーフラワーを取りに来ましたが。一本だけで、良いです。一本だけ、スノーフラワーを分けてくれませんか?」


「……正体を、隠す怪しい奴にか?」


ルイスは、苦笑してから龍人になる。


「なるほど、同類か。良いだろ、私が切ったスノーフラワーのみを取っていくが良い。」


「フェンリルさん、ありがとうございます。」


ルイスは、フェンリルの後ろをついて行く。だが、爆裂達は入る事を禁じられてしまう。


「それで、何か話したい事が有るのでは?」


「お前、聖王だな?」


ふむ、なるほど。スキルですかね?


「そうです、今代の錬金王でもありますが。それでは、本題を話してください。回りくどい会話は、お互いに好きではないでしょう?」


「話が、分かる奴で何よりだ。」


スノーフラワー、その花畑に子狼が倒れている。


「なるほど、病気ならば薬師で呪いなら祈祷師で。どちらでも、解決できますね。」


約束通り、スノーフラワーも貰えてクリア。


帰り、その日は解散となりました。

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