第71話 決着と選択

入ると、血だらけのバロンさんと副マスター。そして、暗殺者15に呪術師が3召喚師が2である。


ガリレフは、余りの多さに踏み止まる。


それを見て、ルイスは指輪をストレージに戻し。龍人の身体能力で、加速して空歩でバロンの隣に。


着地すると、長い髪がフワリと揺れて黄金の瞳に睨まれれば、蛇に睨まれた蛙の如く動けない。ルイスは、静かな雰囲気で短刀を抜くと龍の威圧を発動。


「……『龍の威圧』。」


呻く、暗殺者達。目を輝かせて、ニヤリと笑う呪術師。召喚師は、防御結界を作りルイスを見ている。


ルイスは、素早くバロンを聖結界で囲む。そして、バフとデバフの指示を出す。バロンは、驚いてルイスを見上げる。ルイスは、真剣な表情で回復する。


「な…んで?」


「黙ってて。」


ルイスは、素っ気なく言うと蘇生薬をかける。


そして、立ち上がるとバフとデバフを掛ける。キョロキョロと、周囲を忙しく見回しては細かい指示を出していく。表情は、勿論だが無表情に近い。


「珍しい、龍人の素材を手に入れるチャンス!」


呪術師は、呪文を詠唱し始める。ガリレフは、ルイスを庇おうと動こうとするが間に合わない。


「せめて、スペルマスターになってから出直してください。今の貴方達では、全く話になりません。」


ルイスは、呪術師の呪いを詠唱途中に完封。


スペルマスターとは、全ての魔法職マスタースキルの1つである。スペルマスターは、自分の役職スキルを全て習得・取得・獲得・継承などした時に貰える。主に、魔法使用時のAP消費半減やMP回復速度上昇などの効果があり、魔法職業が喉から手が出るほど欲しい称号スキルである。


他にも、属性マスターと秘匿術式マスターがあり、魔法職の三大称号マスタースキルと呼ばれている。


勿論、獲得は至難。しかし、ランカー上位者や隠れ強者では稀にだが獲得している場合がある。ルイスは、後者で隠れ強者なのだ。何気に、1人の時間が長かったので冒険の中で獲得。


「わぁー…、怖い。」


思わず、素でガリレフは呟く。ローアンも、冷や汗ながら無言で頷く。バロンは、ルイスを見ている。一方、トキヤとマッキーはギロリと呪術師を見る。


「「今、何て言った?」」


ルイスは、ハッとして2人を見る。


「あー…、プレイヤーですし素材は無理かと。」


ルイスは、少しだけ苦笑して言う。


「うん、知ってる。けど、明確にルイスを傷付けると言った。なら、俺達がやる事は1つだよな☆」


トキヤは、剣を抜き素晴らしい笑顔。


「そうそう、盟主が狙われてんだし。俺達の前で、ルイスを殺すなんて馬鹿な事を言うから……。」


マッキーは、剣を抜き怒りを押さえた笑み。


ルイスは、助けを求めるようにローアンとガリレフを見る。2人は、視線で会話すると頷き合う。


「「そいつら、譲る。」」


ルイスは、思わず頭を押さえて深いため息。2人はといえば、素晴らしい笑顔で感謝して斬り込む。


「「ありがとう!」」


「もーう、お2人とも!相手は、呪術師なのに!」


ルイスは、素早く解呪を用意。そして、2人の補助にまわる。周りは、思わずといった雰囲気で笑う。


トキヤは、斬り込むが相手は棒術で対応。パワープレイで、何とか杖を圧し折る事に成功するが、呪物を出されて素早く距離を取る。そして、相手の隙を窺いながらも魔法を回避する。


マッキーも、杖を燃やす事で破壊する。しかし、呪物を出されて反射的に下がる。そして、軽いステップを踏んで魔法を回避しつつ反撃に備える。


ルイスは、旗を取り出すと聖域展開させる。ゲレティーが、降臨するエフェクトとともに広がる神域に近い聖域。とても、幻想的で美しい聖域である。


呪術師の低級呪物は、灰になって消えてしまう。


ルイスは、2人に強バフと異常無効を、呪術師にはステータスダウン系のデバフを。


機会を窺ってた、2人は勢いよく飛び出して無双。


呪術師3人、瞬殺してしまった。ルイスは、軽い現実逃避をしながら周りを見る。ローアンは、驚きに固まりガリレフは祈りを捧げている。


「まさか、龍人様で神の代行者様とは知らず…」


「ガリレフさん、やめてください。」


ルイスは、いじけるように言えばガリレフは笑う。


「はいはい…。じゃあ、ルイス君。今回は、協力ありがとう。とても、助かったよ。」


「いいえ、まだ終わらない様ですよ。」


召喚師が、何かを召喚しようとする。すると、バロンとキリアが素早く暗殺。残るは、副リーダーのみとなった。ガリレフとローアンは、素早くナイフを構えて斬り込む。しかし、相手も手練れ。


2人相手に、苦戦はしているがやられない。


そして、何かを取り出すと飲み込む。歪に、変形した顔にオーク並のでかさ。呪物を、使ったのだ。


「援護します!」


ルイスは、旗を掲げてから構える。


「ありがとう」


「頼む」


相手は、呪いのせいで頭が鈍い。ルイスの、聖域のおかげもあり激戦ながら何とか討伐に成功。


「バロンさん、これからどうします?まだ、僕らのクランのメンバーですが。戻らない、と言うのであれば引き止めはしません。僕は、メンバー個人の意見を尊重します。勿論、考えても構いません。」


ルイスは、優しく笑うとバロンは驚く。


「あんた、自分の利益とか考えないの?」


「え?別に、そんなの考えてませんよ。そもそも、ポーションも作るのが好きだからです。売るのは、欲しい人が居るから。ただ、それだけです。」


すると、笑う周囲の人達。


「……やっぱり、あんた変人だな。でも……」


やはり、勝手に飛び出した事を思うのでしょうね。でも、あれは仕方ないのでは?まったく……


「では、お決まりの言葉を言います。バロンさん、良ければもう一度だけ……僕のホームを、帰る場所にしませんか?僕達は、貴方を歓迎しますよ。」


ルイスが、笑顔で言えばバロンは驚き泣き笑いを浮かべる。キリアも、少しだけ安堵した雰囲気だ。


「元暗殺者、バロン。この命、貴方の為に捧げる。また、よろしくお願いしますルイス様。」


すると、ルイスは優しく笑うと言う。


「バロンさんに、敬語はやっぱり似合わないなぁ。いつものように、軽い感じで良いのに。」


「いや、今までが不敬だっただけで……」


ルイスは、聞いてない。指輪を、ストレージから出して首に掛ける。そして、奥の方へ歩き出す。


そこには、鉄檻があり5人の子供達とチビジャックが。子供達は、ルイスを見て安堵の表情をする。


「あ、あの…」


「君達、怪我はないですか?」


ルイスは、キリアから鍵を受け取る。そして、開けてから心配そうに見る。子供達は、泣きそうな顔でルイスの周りに集まる。ルイスは、優しく頭を撫でて子供達の様子を見る。そして、チビジャックに近づく。子供達を、庇って怪我をしたらしい。


「大丈夫、僕は薬師ですから。任せてください。」


すると、チビジャックは弱々しく頷く。


「よし、終わりましたよ。」


すると、チビジャックも抱きついてくる。


「ちょっ!?こらこら、離れてください。」


子供達も、一緒にべったりなので身動きが取れないルイス。困った表情で、周りに視線を向けるが。


「ルイス、人気者だな。」


「少しだけ、そのままでお願いね。」


ローアンと、ガリレフに言われて困ったように笑うルイス。バロンは、壁に寄りかかる。


「なあ、ルイス様。俺に、あげた曼珠沙華の意味って。結局、どういう意味だったんだ?」


ルイスは、聞こえてない振りをする。


すると、ローアンは思わず笑う。ガリレフは、優しく笑うとルイスを見ている。ルイスは、赤面している。ガリレフは、そんなルイスを微笑ましげに見てバロンを見る。そして、ゆっくりと話し出す。


「バロンに、祈りの花をあげてたの?ふふっ、バロンも大切にされている様で良かった。」


「祈りの花?」


バロンは、キョトンとしてガリレフを見る。


「バロン、曼珠沙華はな1日流水につけると、球根から毒が抜けるらしい。つまり、流水を時の流れに見立てればこうなる。自分達と、過ごす中でバロン…お前の心根を、苦しませる毒が少しでもやわらげば良いな。という、祈りが込められてたんだ。」


「………っ!?」


バロンは、驚きルイスを見る。ルイスは、恥ずかしさに俯き顔を隠す。周りの人達も、驚き優しく微笑む。キリアも、嬉しそうである。


「さ、さて!そろそろ、ハロウィンの準備を!」


ルイスは、動揺しながらも指示をだす。子供達も、お菓子を貰い笑顔が戻る。チビジャックは、ルイスの前に立ち『トリック・オア・トリート』と言う。


ルイスは、お菓子を渡して冗談で言ってみる。


「チビジャック、トリック・オア・トリート!」


すると、チビジャックは鞄から手紙を出す。


ワールドアナウンス


プレイヤーが、ハロウィンパーティーに招待されました。条件が、揃えばハロウィンパーティーに招待されます。パーティーで、限定キャラを仲間に出来ます。ジャックや幽霊の、デフォルメキャラなど。


なお、条件は誰かに話すと無効になります。


「アーゲール!ショウタイ!マッテル!」


「僕、またやらかした様です。」


ルイスは、遠い目で呟くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る