第68話 暗殺ギルドにて…
さて、やって参りました暗殺ギルド。ルイスは、ローブのフードを深く被り裏口に向かう。近くの壁を8回ノック、ドアを4回ノックするとドアが開く。そして、メイド服の女性に案内される。
「やあやあ、初めましてルイス君。」
「突然、呼び出してすまない。」
白髪に、青い瞳の細身な男性で陽気そうなガリレフが暢気に挨拶。灰色の髪に、緑の瞳の狼獣人で真面目そうなローアンが、申し訳ない雰囲気で謝る。
「初めまして、別に気にしていませんよ。」
ルイスは、座るとのほほんと笑う。2人は、ホッとした様な表情である。ガリレフは、真剣な表情。ローアンは、苦々しい表情で呼び出した理由を話す。
「まず、先に謝らせてくれ。すまなかった…。」
「えっと?」
ルイスは、キョトンとして助けを求める様にガリレフを見る。ガリレフも、苦笑してから頭を下げる。
「すまないね。うちの子を、全てを知った上で受け入れてくれたというのに。うちの子は、仇で返そうとしている。親としては、嘆かわしいばかりだが。私ではもう、子供を止める事が出来ない。」
「まず、事の始まりを説明しよう。」
そう言って、ローアンは説明をする。
数ヶ月前、キリアが裏切れたのは副マスターの策略によるもの。バロンは、副マスターの命令でギルドマスターのローアン直属の部下、キリアを暗殺すよう命じられる。しかし、2人は兄弟みたいなもの。
バロンは、断ったのだが。副マスターは、別の部下に命じてキリアを襲わせた。ギルドマスターは、任務に失敗して死んだと報告を受けていた。
実際は、ルイスに拾われて店員になってた。ルイスのお店は、とても有名なのでギルドマスターは、安心したと言う。また、バロンの報告でクランリーダーの人格についても聞いていた。何より、あのキリアが笑ったと聞いて涙が出たほどだった。
しかし、その報告がバレてバロンを慕う子供達が人質にされてしまう。キリアを殺せば、子供達は返してくれるとい条件でバロンは開放されるが。
かなり、苦しんでいた様だ。
バロンは、ルイスにキリアを預けるか殺すか。ずっとずっと、真剣に悩み今も悩んでいたようだ。
「お願いだ、バロンを助けてくれ。このままだと、1人で抱え込んで孤独に死んでしまう。」
立場的に、ギルドマスターであるローアンは動けない。何せ、確証が無いからだ。ガリレフは、病気で無茶をする事が出来ない身体だと明かした。
「君にしか、頼めないんだ。」
「ふむ、取り敢えずガリレフさん。」
「ん、何だい?」
「病名と、いつ頃にかかったか教えてください。」
ルイスは、紅茶を飲みながら真剣に言う。
「病名は、分からない。しかし、身体が動かなくてね。まだ、若いけど椅子から動けない程だ。」
うん、でしょうね。嫌な予感が、祈祷師のジョブの時点で感じてたので。一応、薬師になってみよう。うんうん、やっぱり反応しない。
「それ、病気じゃないですよ。」
「「何だって!?」」
ルイスは、祈祷師にジョブを戻してから言う。
「それは、呪い(カース)です。もし、解呪(ディスペル)したら僕に協力してくれませんか?証拠、集められたら動いてくれますよね?」
「勿論、これでも育ての親だからね!」
「証拠が、有れば堂々と動ける。」
ルイスは、少しだけ考えてからガリレフを見る。そして、立ち上がり隣に立つと祈りを込めて唱える。
「解呪(ディスペル)!」
勿論、発動する。
「少しだけ、準備時間をください。決行は、ハロウィンですかね。そちらも、動ける準備をお願いします。僕のジョブは、薬師と祈祷師です。だから、病気だろうが呪いだろうがどうにでも出来るので。たまにですが、2人を連れて遊びに来ますね。」
ルイスは、真剣な表情で言う。ローアンは、意味を理解して慌てて言う。ガリレフも、驚いている。
「なら、俺達が依頼として……」
「優秀な人材を、2人も引き抜いたんです。これくらい、無料でやらないとですよ。それに、此処には孤児が多いでしょう?ちゃんとした、薬師に診て貰えてないのでは?では、紅茶ご馳走様でした。」
すると、2人は優しく笑うと言う。
「ああ、ありがとう。」
「また、遊びにおいで。」
ルイスは、微笑んで頷く。
「それと、確実に助けられる自信がないので。だから、バロンさんを助ける件は明確な答えを、すみませんが避けさせて貰いますね。」
ルイスが、困ったように言えば2人は頷く。ルイスは、それを見て暗殺ギルドの裏口から去った。
それを見送り、ローアンとガリレフは呟く。
「そう言いつつ、思考の中では作戦が決まってそうだ。さて、どう動くのか楽しみだな。」
「本当に、ウチの子を大切だと思ってる。あの子、会話中もずっと考えてるようだったし。ふふっ、流石2人が気に入った人物なだけはあるね。なら、僕達は彼のお手並み拝見しようじゃないか。」
こうして、密会が終わるのだった。
ルイスは、お店に戻るとキリアが出迎える。
「あれ、ルイス様?お出掛けしてたんですか?」
「うん、疲れたからスイーツ巡りしてたんだ。」
すると、キリアは思わずといった雰囲気で笑う。バロンは、暫くルイスを見ていたが興味を失ったように視線を逸らす。ルイスは、彼岸花をバロンに渡すと足早に工房に向かう。キリアは、キョトンとしていたがバロンは驚きルイスを追いかける。
キリアは、瓶に水を入れて彼岸花を窓辺に飾る。そして、バロンとルイスを追いかけるのであった。
「なあ、ルイス様。何で、曼珠沙華(マンジュシャゲ)を俺に渡した?まさか、告白じゃないだろ?」
あー、曼珠沙華は彼岸花の別名でしたね。ちなみに、花言葉は、あなたに一途、悲しき思い出、情熱
「うーん、バロンさんに送りたかったからです。」
「見た目は、華々しいが根には毒が有るってか?」
バロンは、冷たい雰囲気でルイスを見る。それに対して、ルイスは困ったような悲しそうな笑顔。
勘違いされるのは、予想していた。しかし、込められた思いを口に出すのは難しい。なにより、恥ずかしい。この思いは、自分だけが知ってれば良い。そう思い、ルイスは深呼吸してから苦笑して言う。
「そう、思ったのならそれで良いです。」
その場を、沈黙が支配する。
「……俺は、キリアを「さて、バロンさん。たまには、バロンさんの紅茶を飲んでみたいです。」」
ルイスは、バロンの言葉を遮って笑顔で言う。すると、ガチャッとドアが開きキリアが入って来る。
「なら、俺も一緒に良いですか。実は、クッキーを作ってみたんです。バロン、茶葉は右の棚だ。」
バロンは、驚いてから少しだけ動揺しつつ頷く。
「それで、何の話をしていたんですか?」
「内緒☆」
ルイスは、ふざけた雰囲気で笑う。
「バロン、明らかに動揺してましたけど。」
「そっと、しておいてあげて。今の彼を、いろいろ刺激するのは良くないだろうし。いつか、ちゃんと話すから。それまで、待っててお願い。」
ルイスは、優しい雰囲気で言えば頷くキリア。
「ルイス様、約束ですからね?」
バロンは、その表情を見てさっきの言葉の意味を考える。悪意は、全く無かった。だから、困ったような悲しそうな笑顔を見て心が痛かった。
いったい、曼珠沙華に込められた意味って?
普通は、花言葉や植物の生態を関連づけるが。考えてみても、全く何も思いつかない。
そもそも、曼珠沙華=有毒植物って認識だし。
うーん、分からない。けど、知りたい……。だが、ルイス様のあの雰囲気は、聞いてもおそらく答えてはくれないだろうな。まあ、良いか。どうせ……
どうせ、俺は死ぬんだし。
その後、お茶をしてルイスは自室に戻った。
「バロン、片付けは俺がするから。にしても、バロンって器用だな。俺も、負けてられないな。暇な時に、紅茶をいれる練習をしてみるか?そうだ、今度の休みでも俺に紅茶のいれ方を……」
「キリア、ごめん……」
バロンは、キリアを押し倒してナイフで襲う。しかし、突き刺す事はせず震えてナイフを床に落とす。
「無理だ……。俺には、殺せない。」
静かに、涙を流し歯を食いしばる。
「ばっ、バロン?」
バロンは、走って部屋から去って行った。
「まったく、刺激しないでくださいと言ったのに。仕方ない、急ぎで準備をしなければですね。」
ルイスは、深いため息をついて小さく呟く。そしてから、時間を確認すると気合を入れて呟く。
「もう、深夜1時ですか。明日は、休みですしもう少しだけ頑張りますか。まったくもう……。」
キリアは、呆然と座り込む。ルイスは、それを真剣に見つめてお店に戻り夜の森へ向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます