第63話 航海6日目レイド前のイザコザ
キリアは、無言で警戒していた。と言うのも、ルイスがうっかり寝てしまい無防備だからである。
「あれ?ルイス様、もしかしてかなりお疲れ?」
「まあ、何かあれば呼び出されて。少しの事で、相談や会議になるからな。まあ、仕方ないだろう。」
バロンは、無言でルイスを見る。自分は、この少年を信じてはいない。あくまでも、キリアが忠誠を誓ったから居るだけだ。たぶん、この聡明で優しい少年は気付いているのだろう。けど、一言も苦言を言われた事がない。いったい、何考えてるんだ?
「仕方ないって……。少しさ、ルイス様を頼り過ぎじゃないか?いくら、同盟主でも辛いだろ?」
微塵も、そんな事は思っていないが言ってみる。
「……バロン、思ってない事を言うな。」
キリアは、少しだけ怒ったように言う。
「2人とも、すみません。やばい、うっかり寝ちゃった。うーん、良く寝ましたぁー!」
ルイスは、険悪な雰囲気を無視して暢気に言う。
「ルイス様、大丈夫ですか?」
「大丈夫。心配かけて、ごめんね。」
キリアの言葉に、明るく笑い答えるルイス。
「まあ、ルイス様が大丈夫って言うならいっか。」
バロンは、暢気に言ってキリアを見る。
「そうだな。では、俺達は行きますね。」
「はい、護衛ありがとう。」
ルイスは、2人が行ったのを見送ってから、深いため息を吐き出す。そして、苦笑して紅茶を飲む。
「ルイス様……」
「うん、危なかったね。」
ルイスは、困ったように呟けば、ランコルは真剣な表情になる。そして、険しい雰囲気で言う。
「まったく、困った若人達ですね。」
「まあ、キリアさんはともかく、バロンさんは僕を信じていませんからね。別に、構いませんが。」
すると、ランコルは苦笑してから言う。
「ルイス様、敬語に戻ってます。」
「たまには、許して。素は、敬語なんだから。」
机に突っ伏して、呻くように呟けば、ランコルは優しく頷く。すると、いきなりルイスが立ち上がる。そして、周りを見渡し険しい雰囲気で言う。
「戦闘準備!」
「ルイス、どうした?」
マッキーが、驚きながらも聞いてくる。トキヤも、キョトンとしている。しかし、ルイスの険しい雰囲気に一瞬で戦闘準備をする。ルイスは、周りを見渡す。そして、考える仕草をしている。
黙るメンバー。
「敵が、水中から向かって来てます!その数37!おそらく、レイドだと思われます!絶対に、気を抜かないで!ドレイクさん、船が転倒しないように舵取りお願いします。さて、どうしたら……」
僕には、敵の位置が見えますが皆さんは、見えませんしね。うーん、これは色々とヤバイですね。
「ルイス、落ち着け。」
グレンは、真剣に言うと笑って続ける。
「例え、全滅しても誰もお前を責めねえよ。」
「……僕は、地形把握のスキルを持ってます。それは、空であれ陸であれ海の中であれ、全ての地形を読みとれ認識する事が出来ます。」
すると、驚く同盟メンバー達。
「それはまた、便利なスキルだな。」
マッキーは、驚きつつも頷く。
「まあ、地龍のスキルですからね。ですが、皆さんから敵を認識が出来ないのは困るなって。」
「船は、私に任せな。これでも、商人神と旅人の守護神、そして海の神の加護持ちさ。」
そして、ドレイクはルイスを見てから言う。
「ルイス、あんた祈祷師なら神様に願いな。あんたには、神聖な強い祝福を感じる。とんでもないお方者に、手厚い祝福されてるようだね。」
ん?それって、ゲレティー様の事ですかね?祈るって、文字通りお願いすれば良いのでしょうか?
「神聖なる、神々の王ゲレティー様。無力なる我らに、困難に打ち勝つ方法をお授けください。」
すると、イヤリングが落ちてくる。
勇気のイヤリング
共に戦う者達の、心が共鳴して使用者のスキルを一つだけ戦闘中のみ借りる事が出来る。しかし、特殊スキルは借りられない。なお、このイヤリングを使用時は使用者は魔法やスキルを使えない。
知恵のイヤリング
共に戦う者達の、心が共鳴して使用者のスキルを一つだけ戦闘中のみ借りる事が出来る。しかし、物理スキルは借りられない。なお、このイヤリングを使用時は使用者は魔法やスキルを使えない。
力のイヤリング
共に戦う者達の、心が共鳴して使用者のスキルを一つだけ戦闘中のみ借りる事が出来る。しかし、魔法スキルは借りられない。なお、このイヤリングを使用時は使用者は魔法やスキルを使えない。
ルイスは、知恵のイヤリングを左耳に装備。
「特殊スキル、地形把握を共鳴!」
すると、知恵のイヤリングがサファイア色に輝く。そして、同盟メンバーが驚いたように周囲を見る。
「なるほど、これは怖いな。隠密無効だし、水中の魚の動きも見える。そらの、鳥も魔物も……見え過ぎるのも怖いな。さて、ルイスに最近は頼り過ぎだし、今回はルイスは観戦席へご案内だな。」
マッキーは、戯けたように言う。
「ルイス、流れ弾に注意だぞ?」
トキヤも、笑ってから言う。ルイスは、笑顔で頷いた。ルイスは、深くため息を吐き出すと呟く。
「魔法やスキルが、使えないのは不便ですね。」
「なら、ルイスには護衛が必要だな。誰にする?」
マッキーは、暢気にルイスを見てから言う。
「護衛は、バロンさんで良いです。」
すると、カリオストロとランコルは驚く。ドラコフは、面白いと笑う。ドレイクは、苦笑している。
「ルイス様?えっと、何を考えてる?」
バロンは、驚き困ったように聞く。キリアは、静かにバロンを見てからルイスを見る。ルイスは、笑っているが目は真剣だ。キリアは、少しだけ考える。
ルイス様は、何を考えてる?バロンは、ルイス様を信用してない。余りにも、危険なはずだ。
「キリアさん、少しだけ相棒を借りるね。」
「良いですが……。」
キリアは、心配そうにルイスを見てバロンを見る。
「もしかして、バロンさんが無防備な僕を害すると思ってる?駄目だよ、キリアさん。君だけは、どんな時もバロンさんを信じてあげなくっちゃ。」
ルイスは、落ち着いた雰囲気で優しく笑う。バロンは、驚いたように目を丸くして固まる。キリアも、動揺したように視線が揺らぎ俯く。
「馬鹿なの?俺は、あんたを信用してないんだぞ!しかも、いつ裏切るか分からない俺を護衛とか!」
「あっそ、いつでも裏切ってどうぞ。信用とか、そんな事どうでも良いんです。1番大切なのは、現在時点で君が仲間である事……それだけです。」
すると、絶句するバロン。
「なっ!?」
キリアは、思わず吹き出すと笑う。
「ルイス様って、やっぱり変わってますね。」
「信頼とか信用は、後からでも得られますから。第一印象も、大事ですがそれよりも大切なものがあるはず。あ、答えは自分で探してください。」
素っ気ない、ルイスの口調にバロンは呻く。マッキーは、無言でそれを聞いてから指揮に戻った。戦闘が開始して、数分後……
「俺は、ルイス様が分からない。」
「はい?」
ルイスは、キョトンとする。
「ルイス様は、聡明で穏やかな優しい性格だ。けれど、何処か素っ気なくって冷たい所もある。」
「まあ、誰しも表裏の顔があります。それは、誰よりもバロンさんが知っているはずでは?」
ルイスは、そう言うと暢気に笑う。
「……そうだな。あんたなら、任せられる。」
バロンは、ルイスに聞こえないように呟く。
「ん?えっと、何か言いました?」
「いや。」
ルイスは、聞き返したが龍人のスキル、聞き耳でしっかりと聞いていた。ルイスは、内心でため息。
「うーん、今回は戦力調査っぽい。敵の本陣は、まだ少しだけ離れている感じかもな。」
「では、レイド本戦に向けて温存しなければ。」
全員が、頷いて警戒しながら解散した。
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