第48話 バレンタインイベント

きょっ、今日はバレンタインデーです。つい、うっかり作りすぎたのですが。どう、渡しましょう?


「春華、本当に地味ぃー君にチョコ渡すの?」


ポニーテールの少女は、心配そうに言う。


「うん、渡すよ。」


春華は、チョコを抱き抱えて嬉しそうに言う。


「どうせなら、イケメンの神崎君を狙えば?」


「夏樹は、知らないから。留衣君、普段は地味に見えるけどとても優しくて格好いいんです。」


すると、夏樹は暢気に笑いながら言う。


「あの、無口で神崎君のオマケ扱いの彼が?」


すると、神崎はため息を吐き出す。


「あのさ、少しだけ黙らないか?」


留衣は、さっきの会話を気にした雰囲気はない。神崎は、またため息を吐き出す。


「留衣、今週の土曜日は暇か?」


「ん?うん、特に予定は無いけど。」 


留衣は、キョトンとしている。


「なら、コラボカフェに行こうぜ!」


あー、もう開かれているんでしたね。ですが、人が多いのは苦手なんですよね……。うーむ、迷います。


「ちなみに、ペットランキング知ってるか?」


「うん、知ってる。うちの子も、2位だったし。」


そう、リルとソルは堂々の2位にランクイン。


「ベストファイブは、等身大ぬいぐるみが売ってるぞ。勿論、リルとソルのぬいぐるみも……な。」


「絶対、行きます!」


思わず、ルイスの口調で話してしまう。


「留衣、素に戻ってるぞ。」


「あ……、やらかした。まあ、良いよね。」


すると、春華は深呼吸して留衣に近づく。


「る、留衣君。これ……、その、えっと………」


緊張して、頭が真っ白になる春華。留衣は、キョトンとしてから暢気に小さく首を傾げる。


「ん?」


「その、一緒にイベントしてください!」


私の、馬鹿ぁああっ!何で、告白できないのぉー!


「おい!」


「あははははっ!」


思わず、神崎も突っ込む。夏樹は、腹を抱えて笑っている。留衣は、少しだけ考えている。


「うーん、春華さんのジョブを教えてくれる?」


すると、春華は嬉しそうに頷き言う。


「メインは、剣士でサブが新しく追加されたアイドルです。その、前衛は任せてください!」


気合いが、こもった台詞に留衣は思わず笑う。


「なるほど、ジョブの相性は良いね。嫌じゃないなら、今回のイベントではお世話になろうかな。とは言え、女性に守られっぱなしは嫌だし、僕も前衛が出来ない訳では無いから安心してね。」


神崎は、ニヤニヤしている。


「まさか、チョコが賄賂だったとは………」


「ちっ、違います!本当は、こ……コクハ……あう……」


自分が、何を言おうとしたのか気付いて赤面する。


「留衣、お前って奴は罪作りだぜ。」


「それ、ブーメランだって気づいてる?」


留衣は、苦笑してから言う。2人とも、自分の恋愛の事になると鈍感。特に、留衣にいたっては恋愛感情を理解しているのに、勘違いとか自惚れだと思っている。かなり、重傷である。


「勿論、神崎君もユンゼさんと参加するよね?」


「おう、頼まれてるし。」


こうして、バレンタインイベントに参加する事に。




ルイスとグレンは、イベント会場で待っている。


「おっ、お待たせしました。」


2人とも、ドレスアーマーである。ユンゼさんは、騎士姫みたいな凛とした青いドレスアーマー。コマチさんは、オレンジ色でフワフワしたロリータみたいなドレスアーマーです。


「流石、氷姫だ。クールで、綺麗だぜ。」


「とても、可愛いですね。」


さて、今回のイベントは動きにくいドレス系衣装で、魔物を倒し限定アイテムとチョコを回収するイベント。そして、このイベントには奴が居ます。


「いやー、とても美人ですねぇー。」


「変態、ユンゼに触れるな。斬るぞ?」


グレンが、さっそく殺気を放って希望の剣に手を掛けてます。これは、抜き打ち(抜刀術)の構えですね。さて、変態のジャックさんが来ました。


ちなみに、今回のイベント妨害キャラですね。


「おお、こちらにも可愛い花が!ごめんなさい!」


「ジャック、祓われたいですか?」


ジャックは、ルイスの目が笑ってないのに、、美しい笑みを見て逃げ出してしまった。ルイスは、小さくため息を吐き出すとグレン達を見る。


「さて、どうしますか?」


「スタートまで、残り10分か………」


ルイスは、頷き近くの椅子に座る。


「そうだな、満腹度回復してアイテムの確認でもしとこうぜ。てな訳で、料理は頼んだぜ。」


「勿論、任せてください。」


さて、プレイヤーが集まって来ましたね。


「じゃあ、何処かで会ったら一緒に行こうぜ。」


「うん、そうですね。」


さて、森を歩いてますがピンクエプロンのゴブリンや、チョコを咥えたコボルト等を倒して行きます。


「あ、可愛い!」


「ん?」


コマチさんの、視線の先にはウサギが居る。


「幸運兎と呼ばれる、ラッキーラビット………」


ルイスは、近づくと箱をくれる。そして、森り帰ってしまった。ルイスは、箱を見てから呟く。


「どうやら、イベント終了時に開けられるみたいですね。まぁ、ラッキーラビットの箱なので期待は出来ます。さて、次はボス戦みたいですね。」


「はい、頑張ります!」


ボス チョコを貰えなかった男達の怨霊


「何か、戦いにくいですね。」


「そうだな。」


後ろから、グレンの声がして振り返る。


「よっ!」


「グレン、やっと合流しましたね。」


「おう。にしても、このボス戦……ダブルデートまではオーケーみたいだな。と言う訳でだ………」


※グレンは、イベント情報どおりに言っただけ。


グレンは、暢気にルイスを見る。ダブルデートの言葉に、女子2人が赤面しているのは気付かない。


「ここは、組みましょうか。」


ルイスも、暢気に頷くと前に出る。


「やはり、女性には戦わせたくない相手なので。」


「だよな。俺達が、前に出て叩き潰すか。」


すると、コマチが少しだけ考えて言う。


「でも、女性の方が良いのでは?」


「チョコが、貰えない事に激怒します。チョコを渡せば、相手はパワーアップしますしね。どちらにしろ、女性を前に出すのは期待させちゃうと予想。」


ルイスは、苦笑しながら言う。


「なら、期待させてるうちに………」


すると、複雑そうな表情をしてため息を吐き出すグレン。ルイスも、少しだけ困った表情で複雑そうに笑う。そして、ルイスとグレンは同時に言う。


「「後は、プライドの問題。」」※男のプライド


すると、察したのかユンゼは嬉しそうに笑う。コマチも、何となく理解したのか更に赤面になり俯く。


「てな訳で、ユンゼは回復も出来たよな。と言う訳で、ユンゼは回復役ヒーラーを頼んだぜ。」


ユンゼは、頷いて杖を出す。ユンゼの職業は氷魔術師と剣士。水系統なので、多少の回復は出来る。


「コマチさん、ジョブをアイドルにチェンジ。基本は、支援役バッファーをしてください。ユンゼさんは、回復職ではないので回復量が少ないです。なので、その補助も出来ればお願いします。」


ルイスは、薬師になりナイフを構える。グレンも、希望の剣を構えている。ユンゼも、短杖を持つ。ちなみに、アイドルは出たばかりなのでマイクはありません。 


「じゃあ、先攻するから攻撃補助よろ!」


「了解、テンポずらしてセカンドアタックします。先攻したら、相手の動きを見たいので……。」


すると、走り出したグレンは攻撃を当てる。それにあわせて、攻撃力アップと俊敏アップのバフポーションをグレンに当てる。コマチのバフでは、グレンのステータス的に余り上がらないからだ。


レベルが低いので、上昇率が定まらず少ししか上がっていない。なので、ルイスは予定を変更する。


「オーケー、回避に専念する。」


ルイスは、セカンドアタックを当て急いで距離を取る。そして、コマチに指示を早口で言う。


「コマチさん、回復補助とデバフだけに専念してください。バフは、攻撃しながら僕がします。」


「それ、ヘイト集めるぞ?」


グレンは、心配そうに言う。


「グレン、もしや忘れたんですか?僕は、回避特化ですよ。錬金術による、バフ補助くらい回避の合間にやれますよ。ソロでは、そうしていましたし。」


ルイスは、少しだけ考えて試験管を取り出す。


「あれ、回復特化じゃないの?」


「はい、祈祷師を回復特化にしたら、かなりの過剰回復をしてしまいます。NPCなら、死にますよ。」


すると、グレンは納得したように頷く。


「なるほど……、じゃあよろ!」


「はいはい。」


グレンとルイスは、敵の攻撃を回避しながら言う。


「ユンゼ、ルイスに回復!」


「コマチさん、補助を!」


「「はい!」」


さて、攻撃パターンは読めました。デバフ効果が、かなり凶悪ですが当たらなければ問題ありません。


しかし、コマチさんのアイドルは支援特化。ユンゼさんの氷魔術師は魔法攻撃特化です。そしてです、グレン含めた剣士は攻撃力特化してます。


つまり、グレンは回避術を持っているので大丈夫です。しかし、女子2人が確実に危ないですよね。


「錬成壁!」


実は、錬成壁……精神異常でなければ弾きます。今回は、鈍足と毒ですね。ちなみに、攻撃は『リア充、爆発しろぉー!』で鈍足爆弾を投げて来ます。


イカスミパスタ(毒)を、『俺達と、同じ味を噛み締めろ!』と投げて来ます。それに、当たると毒の異常になります。『』は、スキル名でもあります。


「こらっ、食べ物を粗末にしてはいけません!」


「いや、突っ込む所……そこか?もっと、技名とか突っ込む所はあるだろ。まぁ、ルイスだしな…。」


グレンは、思わずツッコミを入れてしまう。


「いったい、何処から出しているんでしょう?」


「お前もかよ!」


コマチは、思わず呟けばグレンは叫ぶ。


こうして、HPを削りながらも会話は弾む。そして、グレンの即死攻撃の条件が揃う。


「ルイス、詠唱するからバフ!」


「了解。」


「その炎は、神々の最後の慈悲。罪深き者は、断罪の炎に焼かれ苦しみ、罪無き者にはその炎が優しく包む。我は、炎の化身にして断罪者。さぁ、神々の慈悲をその身に受けろ『最後の業火』!」


なるほど、グレンの称号は【断罪者】ですか。僕の称号が、【審判者】。さて、そうなると他の称号が気になりますね。断罪者は、暗殺者のものだと思ってましたが。グレンは、現在剣士のジョブ………。


まさか、ジョブは関係ないでしょうか?


神の試練称号、それに分類される称号ですが謎が多すぎる気がします。いつか、解き明かしたいです。


「ルイス、ボスからボックスドロップした。」


「本当ですね。後で、見ましょうか。他のプレイヤーが、来ましたし移動しましょう。」


グレンは、頷いて歩きだした。

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