第47話 バレンタイン前日
さて、バレンタイン前日ですね。やっと、平和になりました。にしても、今日もユンゼさんはケーキを運ぶグレンに視線を釘付けですね。いいのですが、そろそろグレンファンの皆さんが怖いですよ。
「ルイス、会わせたい人が居るんだ。」
「初めまして、グレンの師匠のドラコフだ。」
なるほど、希望の剣を文字通り継承したんですね。カリオストロは、驚いたまま固まっています。まったく、仕方ないですね。ルイスは、暢気に笑う。
「カリオストロ、今日は休みで良いですよ。」
「だが、良いのか?」
ルイスは、ゆっくり頷くとキッチンに向かう。
ドラコフは、ルイスに挨拶したが本音はカリオストロと話したそうだった。それを、察せられない程ルイスは鈍感では無い。なので、カリオストロに休みという仕事をさぼる建前を与えたのだった。
まぁ、カリオストロはアトリエに籠りっぱなしだったし、息抜き休憩に丁度良いでしょう。
「そう言えば、ルイスはバレンタイン前日イベントの参加条件を満たしてたよな?やるのか?」
すると、その場の女性プレイヤー達が黙る。
バレンタイン前日イベント
参加条件(女性)
・バレンタインエプロン装備する事。
参加条件(男性)
・料理スキル、最低でも50レベルある事。
今回のイベントは、女性プレイヤーメインのイベントです。料理スキル、最低でも50レベルあるプレイヤーにはスイーツアイコンが表示されます。
虹・金・銀・銅の、色をしていますがこれはスキルレベルの基準ですね。バレンタイン限定ですが。
虹(レベルMAX)
金(90以上)
銀(80以上)
銅(70以上)
チョコデザイン(50以上)
「ルイスは、やっぱり虹なんだな。」
「まぁ、そうです。あ、参加しましょうかね。」
ルイスは、苦笑してからユンゼを見る。
「待ってて、グレンに最高のチョコを作るから。」
そう言って、お店から出ていってしまった。トキヤは、グレンを見てから素晴らしい笑顔で言う。
「グレン、骨は拾っといてやるから♪」
レンジは、青ざめてから言う。
「異常回復ポーションは、必須だから忘れるな。」
「え?ちょっ、それは……ルイス、どういう事だ!」
グレンは、青ざめながらルイスを見る。
「どうって、文字通り危険な料理なので。あとグレン、ユンゼさんの料理を食べる時はログアウト前をお薦めします。つぎに、ログインする頃には味覚が戻っていると思いますし。頑張ってください♪」
ルイスは、暢気に笑いながら言う。
「え、そこまで……味覚まで再現されるのか?」
「グレン、この世界の料理は美味しいですよね。当然、不味い料理を作れば悲惨な味になります。」
ルイスは、遠い目でグレンに言う。
「ルイスも、ユンゼの料理を食べたのか?」
「いいえ。僕だって、最初から美味しい料理を作れた訳では無いのですよ?当然、失敗作を食べて異常状態になったり最初はしました。まぁ、ユンゼさんの場合はちょっと感覚が狂ってるので………。」
ルイスは、思わず言葉を濁す。
「待って、凄く怖いんだけどっ!?」
「グレン、グッドラックです。その場に、僕が居れば直ぐにキュアと回復をしますからね。」
すると、グレンはルイスに言う。
「待て待て待て!料理で、ダメージでるのか!?」
「グレン、言わば料理という名の毒ですよ。そもそも、異常になる時点でダメージが入ってます。」
ルイスは、材料を机に置いて計量している。
「う、嘘だろ……。」
グレンは、思わず座り込む。周りは、御愁傷様と苦笑している。すると、グレンはルイスを見る。
「ルイス、助けて!」
「まぁ、頑張ってはみますが……。万が一の時は、腹を括って異常をくらってください。例えば、ユンゼさんが他の人に料理を教わって作った場合。」
ルイスは、エプロンを着て暢気に言う。
「oh………!」
「そうなったら、地獄だな。」
トキヤは、うんうんと頷く。
ルイスは、参加する女性プレイヤー達に料理を教えている。ユンゼは、勿論だが来ない………。
「グレン、チョコだ!受け取ってくれ!」
「え、おう………」
グレンは、苦笑いして受けとる。ルイスは、横目で鑑定して青ざめる。そして、考える仕草をする。
「何だ、食べてくれないのか?」
「えっと、その………」
ルイスは、これは不味いと助け船を出す事にする。
「ユンゼさん、ごめんなさい。グレンは、僕の試作品を食べて満腹なのですよ。久しぶりに、バレンタインの料理を作ったので作り過ぎて……。トキヤさん達も、協力して食べたので今は無理ですし。」
ルイスは、申し訳ない雰囲気で言うと『うっかり』と笑う。天然発動、一部の女性がキルされました。
「なら、ルイスさんは?」
すると、ルイスは恥ずかしそうに笑って。
「すみません。僕も、プレイヤーさんから味見して欲しいとチョコを貰いまして。恥ずかしながら、満腹で暫くチョコは食べたく無いんですよ。」
すると、一部の女性達の表情が赤い。
「そうですか。では、後で食べてください。」
ユンゼは、帰って行った。
「「「「ルイス、ナイス!」」」」
「ふぅ……、やれやれ。」
ルイスは、周りを見て固まる。
「まあ、被害甚大だけどな。」
マッキーは、ルイスの作ったフォンダンショコラを食べながら言う。ルイスは、ギョッとしてマッキーを見る。そして、オロオロと周りを見ている。
「天然って、怖いよなぁ………。」
トキヤは、ルイスを見ながら言う。
「えっ、僕が何かしましたか!?」
ルイスは、トキヤを見ながら言う。
暫くして、ユンゼが入ってくる。
「さっきの、チョコは食べないでくれ!」
「ああ……、誰か犠牲になりましたね。」
ルイスが、小さい声で言えば頷くユンゼ。
「それで、ルイスさん。私でも、作れるチョコは無いでしょうか?その、溶かして固めるだけじゃなく。その、手作りしたいのですが………。」
ふむ、2つだけ有ります。
混ぜて、焼くだけの簡単なブラウニー。砕いて、混ぜるだけのチョコクランチとかですかね。
「ユンゼさん、材料は有りますか?」
「それなら、たくさんある!」
ルイスは、材料を確認して袋に次々に物を入れる。
「これは、没収します。帰りに、返すので使わないように。さて、チョコレートと薄力粉ですか。うーん、材料が足りませんが良いでしょう………。」
「ありがとう、ルイスさん。」
さて、選択肢をあげましょうか。
「ユンゼさん、チョコクランチとブラウニーどちらを作りたいですか?一応、お手伝いしますが。」
「ブラウニーを、作ってみたいです。」
ふむふむ、そうですか。
ブラウニーの材料は、クルミ30g・シュガー30g・チョコレート70g・バター30g・卵1個・薄力粉25g・ココアパウダー・6gベーキングパウダー小さじ4分の1とリアルと同じですね。
「まず、クッキングシートを敷いた天板に、クルミを広げ140℃に予熱したオーブンで15分くらいローストします。そして、粗熱が取れたら刻む。」
「えっと、予熱?」
これは、さっそく危ないですね。
「そして、こちらが粗熱の取れたクルミです。包丁は、危ないので袋に入れて棒で軽く叩きますよ。」
「わ、分かった……。」
よしよし、大丈夫ですね。
「次です。耐熱ボウルにチョコレートとバターを入れて、ラップをせずに電子レンジ700Wでだいたい1分30秒過熱して溶かし、そのまま暖かいところに置いて保温します。えっと、大丈夫ですか?」
「うーん、チョコは苺にするか?ホワイト?よし、全部を混ぜてしまえば全部が楽しめるな。」
ぎゃあー、ストップ!まったく、仕方ないですね。
「そして、こちらが保温中のチョコレートです。」
「ルイス、準備が良いな。」
思わず、トキヤは拍手しながら言う。
「おおっ、○○クッキングみたいだ。」
グレンは、暢気に笑いながら言う。
「何て言うか、安心感があるな。」
マッキーも、頷きながら言う。
「別のボウルに卵を割り、シュガーを加えて泡立て器ですり混ぜます。更に、保温中のチョコレートを加えてよく混ぜます。卵は、僕が割りますね。」
卵を割る、そこで苦戦するユンゼさん。すかさず、別のボウルに卵を割り渡す。ユンゼさんは、楽しそうに混ぜています。ふぅ………、さっきの素材(?)を回収して安心してましたが。怖いですね。
チョコに、ゴーヤやボンド……わさびを入れようと思っていたとは……。没収して、良かったです。うん。
「次に、薄力粉とココアパウダーそしてベーキングパウダーを合わせてふるい、さっきよく混ぜたチョコを加える。練らないように、サックリとゴムベラでクルミを加えて混ぜる。さて、ゆっくりです。」
「うむ、出来た!」
ルイスは、頷くと言う。
「クッキングシートを敷いた型に、さっきクルミを入れたものを流し入れ、天板にのせる。180℃に予熱したオーブンで20分くらい焼きます。」
ユンゼは、メモをしながらも聞く。
「粗熱が取れたら、型から取り出し好みの大きさに切り分けます。これで、完成ですね♪」
「あ、ありがとうございましたルイスさん。」
よし、乗り切りました!これで、グレンに被害が行く事はないでしょう。疲れました。
「よし、終わりですね。」
すると、その場のプレイヤーさん達が拍手。
「ルイス、お疲れ様。」
トキヤは、紅茶を置く。
「ありがとうございます。」
すると、大和撫子のような美女がルイスに近づく。トキヤ達は、気付いていたがニヤニヤして黙る。
「あ、あの………ルイスさん。これ、良かったら!」
「僕にですか、ありがとうございます。」
すると、その場の全員がニヤニヤしている。
「明日、リアルでチョコを渡しますね。」
ん?リアル………?てっ、リアル!?まさか、バレてます?いやいや、それは少し不味いのですが!
でも、1人だけ心当たりが……
「まさか、学校の………」
「はい、そうです。地味ぃー君、髪の毛は切りましたか?また、先生に、怒られちゃいますよ?」
すると、グレンは暢気に言う。
「ちなみに、知らないのお前だけな。3大美女、仮名プレイヤーネームコマチで良いか。コマチは、中1の時から一途にお前だけ見てたしなぁー。男子も、お前が気付かないから何もしなかったが。明日の、バレンタインが楽しみだな。」
「明日、ズル休みしましょうかね?」
ルイスは、戸惑う雰囲気で呟く。
「なら、家に届けに……」
「大人しく、学校で断罪されます!」
ルイスは、少しだけ顔を赤面させて言う。
「もし、男子に知られたら血祭りだぜ☆」
「ですよね。うん、知ってました!」
周りは、ニヤニヤしつつバレンタイン前日は終わった。すると、バレンタイン当日イベントの告知が。
「え、マジかよ!今回のイベント、男女ペアで進めるシステムになってる……。これは、ヤバい…。」
「グレンは、ユンゼさんと出れば良いじゃないですか?僕は、参加しませんけどね。」
すると、コマチは落ち込んだ表情をする。
「お前が、コマチと一緒にイベントするなら。ここは、俺も腹を括ってユンゼとイベントするぜ。」
「いやいや、何を勝手に決め……」
すると、グレンにタックルされる。
「諦めろ、ルイス。俺としても、コマチとお前はお似合いだし。今回で、きっと相性が分かるさ。」
「なっ!?そもそも、コマチさんは一言も僕の事を好きとは言ってません。変な勘違いは、迷惑になりますし。僕は、やっぱり不参加です。」
コマチは、赤面してたのに落ち込む。
「………私、頑張りますね。」
「おう、頑張れ。かなり、相手(ルイス)は手強いぞ。」
周りも、ウンウンと頷くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます