第36話 黒いユニコーン戦

ユニコーンは、叫ぶと突っ込んで来ました。トキヤさんは、タンクにタゲ取りの指示を出しています。同時に、マッキーさんが編成を指示しています。


息は、ぴったり♪


さすが、幼なじみにして本当の・・・・ライバル。


タンクが、時間稼ぎしている間に編成は完了。たまに、いきなりスタートするクエストがあります。ユニコーンのクエストも、それだったようですね。


さて、戦闘が開始しました。


戦況としては、トキヤさんが慎重な作戦を出して指示しています。マッキーさんは、トキヤさんの手が回らないメンバーにトキヤの作戦にそった指示を出しています。さすが、モノクロコンビ……。


マッキーさんは、英雄と呼ばれる前は白い装備だったので『白騎士ホワイトナイト』なんて呼ばれてました。


一方、トキヤさんは剣神と呼ばれる前は 『黒き破壊者ブラックデストロイヤー』と呼ばれてました。そして、2人はコンビを組んでいました。


しかし、マッキーさんがクランを創る事になりコンビは解散。トキヤさんは、炎天神楽を創った。


ちなみに、トキヤさんと兄さんは同じクラスの同級生。マッキーさんとは、クラスが違ったみたいですね。僕は、巻き込まれて頭にされました。


クランでも、実力でも良く競い合ってましたし。何か、2人のタッグを見ると懐かしく感じます。


ダダン!  ユニコーンが、スキルを使用。


「うっ……!」


黒いユニコーンが、何かデバフを発動させました。少しだけ、体が重く感じて呻くルイス。そして、ステータスダウンのエフェクトがルイスに掛かる。


トキヤは、驚いてから言う。


「神聖キラーだ!ルイス、下がってデバフが切れるまで待機!離れれば、離れるほどデバフが切れるのが早いみたいだ。くそっ、厄介だな……。」


マッキーは、状況把握の為にルイスに言う。


「まさか、自分の弱点である神聖のキラーとか。運営、鬼かよ。ルイス、ステータスダウンだけか?」


少しだけ、慌てているマッキー。


「はい、継続でダウン中です。」


さて、何気に強いですね。このままでは、回復が間に合いません。ここは、勝手ながら範囲でも入れときましょうか。でなければ、タンクから崩れそうです。まぁ、バランスを何とか取っていますが。


「マッキーさん、回復を入れます!」


「すまん、頼む!」


マッキーさんは、即答で言う。


デバフが、辛すぎるな。


ルイスも、デバフの神聖破壊のせいでステータスが下がり続けている。このままだと、相手を弱らせる前にルイスの方が、先にダウンしてしまうと思ったから。ルイスは、真剣な表情で機会を待っている。


よし、まだ諦めていないな……皆。


「さてさて、どーするよトッキー?」


「そうだな、遠距離包囲作戦でもするかな?」


すると、マッキーは思わず笑う。


「なるほど、有効かもな。ルイスが、前線に立ってた頃にレイド鳳凰戦で使ってた戦法だな。」


「そうそう、楽しかったよなぁ~♪」


遠距離包囲作戦


イメージとしては、円形の陣形である。


ボスから、離れ過ぎないようにタンクで囲む。その後ろに、魔法攻撃職を配置。そして、その後ろに魔法攻撃の出来る聖職者を配置。その後ろに、攻撃職そして蘇生と回復を待機させる陣形。


遠距離攻撃で、弱った敵を攻撃職が一気に叩き潰す戦法といえば理解しやすいだろうか。そういう、包囲戦術だ。これを、小学5年生だったルイスは思いついた訳だ。何て言うか、頭が良すぎだよな………。


ルイスは、楽しそうな2人を見て微笑む。そして、真剣な表情になると指輪を外して龍人になる。


やはり、種族の違いも関係するんですね。


龍人の姿に、戻った事で継続ステータスダウンが解除されました。さて、ここから導き出される答え。


ユニコーンは、幻獣で龍も幻獣です。


もしかしたら、共鳴効果でしょうか?


共鳴効果……。同じものどうしが、共鳴する事でスキルが共に潰し合い無効になる事。もしくは、相性が良ければ共鳴する事で火力や防御率が上がる事。


おそらく、そうでしょうね。


「さて、僕は大丈夫。それより、トキヤさん達はどう動くでしょうか。少し、わくわくしますね。」


ルイスは、楽しそうに小さく呟く。


「これから、遠距離包囲作戦を行う。」


ちなみに、するとメンバー達は頷いて指示を待つ。ルイスは、少しだけ驚いてから小さく頷く。


「あれ、作戦名があるって事は……」


グレンは、驚いてから考える。


「この作戦は、かの有名な参謀が最初で最後に参加したレイドで使われたものだ。もともと、彼はクエストメインの参謀だったんだが。その腕前は、当時は3本指に入っていた。なぁ、そうだろ?」


そう言って、ルイスを見るマッキー。


「さて、作戦を聞いた事はありますが。」


ルイスは、困ったように笑って言う。


「ふーん、そういう事にしとくか。」


トキヤは、暢気に笑って言う。


「まぁ、やってみようぜ!」


素早く、メンバー達は動く。


確かに、有効な作戦です。しかし、この作戦には弱点があります。まず、空を飛ぶ魔物には条件が揃わないと無効です。鳳凰戦では、遠距離特化の超火力を持った大砲プレイヤーが多少は居ました。だから、ギリギリ勝てたのです。しかし、今回は超火力スキル持ちは0人。幸いなのは、敵が飛行する魔物じゃない事と物理攻撃が得意な事でしょうか。


そして、包囲を突破されると総崩れする事。そうなれば、確実に全滅します。事実、鳳凰戦で3度も突破され全滅しましたし。とても、大変でした……。


また、距離を離れて包囲するので狭いフィールドでは無理です。少人数では、出来ないレイドならではの作戦なのです。さて、どうなりますかね?


「マッキーさん、近づかれる前に倒すのは無理ですよ。今のメンバーでは、火力が足りませんし。」


「……分かってる。」


マッキーさんも、悩んでいるようですね。


「なぁ、ルイス。どうすれば、突進のダメージや被害を少なく出来るかな。イメージが、出来ない。」


マッキーは、苦笑して深いため息を吐き出す。ルイスは、考える仕草をする。そして、暢気に言う。


「突進のダメージは、どうやっても回避は不可能。ですが、突進は途中で方向を変更する事が出来ません。つまり、何処に突っ込んで来るか予想が出来る訳です。その場所だけ、ガードを強化すれば良いのでは?例えば、突っ込んで来た場所近くのタンクが集まり弾くとか。2列、3列ならば大丈夫だと。」


「そうなると、包囲が甘くなるぞ?」


トキヤは、真剣に言う。


「別に、突っ込んで来た反対側なら良いのでは?それに、突っ込んで来て受け止められたら弱スタンが入ります。スタンしている間に、陣形を直せば何とかなります。まぁ、僕の予想ですけどね♪」


「……取り敢えず、やってみるか。」


タゲを、回避職業に取らせる。が、次の瞬間……


タゲを持ってた、プレイヤーが黒いユニコーンの攻撃を受けて消滅。これで、3人目である。ユニコーンは、赤い瞳でルイスを見ている。


「まじか!ヤバい、タゲが……回避役がロストした!逃げろ、ルイス!タゲが、お前に変わったぞ!」


「これは、不味いですね。」


ルイスは、キュアを黒いユニコーンにかける。


「詠唱を破棄します!効果が、少しだけ弱まりますが、ヘイトを更に貰って3枚盾に誘導可能なので。それでは、異常回復キュア!突進、来ます!」


黒いユニコーンは、ルイスに突進する。ルイスはヒラリと回避してもう一度キュアを使用。苦しさに、突進スピードが多少減速する。3枚盾ガードで、無傷防御が成功し弱スタンが黒いユニコーンに入る。


「祈祷師ルイスが、数多の神々に乞い願う。魂を蝕む、禍々しい穢れを祓いたまえ。清めるは心、その慈悲で苦しむ彼の者に解放を!浄化ピューリファイ!」


黒いユニコーンは、悲鳴を上げてルイスを睨む。スタンが切れて、動けるようになったからだ。勿論、浄化は抵抗レジストされてしまった。まだ、そこまで弱っていないので予想内である。


ルイスが、黒いユニコーンを相手している間にスキルのクールタイムが次々に回復していく。


「ルイス!」


ルイスは、黒いユニコーンの攻撃を回避すると反対側に逃げる。それを見て、遠距離攻撃が再開する。


「ふぅー、辛いですね。誰か、ヘイト貰ってくれませんか?取り敢えず、回避の得意な誰か。」


ルイスは、ため息を吐き出す。


「残念な話、回避戦闘が出来るレベル100越えはお前だけだ。だから、すまん変われない。」


「それにだ、他の奴にお前のような芸当が出来るかよ。という訳で、頑張れリーダー!」


マッキーとトキヤは、苦笑しながら言う。


「僕は、回復職業なのですがぁー!」


ヘイトが切れず、突進してきた黒いユニコーンの攻撃を回避しながら、悲鳴じみた声で言うルイス。タンクは、包囲戦の要なので回避特化職業に任せるしかない。しかし、相手はワールドクエストのきっかけとなったクエストのレイドボス。


とてもではないが、レベル100以下だと耐えられない強さだった。ちなみに、ルイスの前に数人の回避職業が試したが秒殺されてしまった。


「「知ってる……」」


同時に、マッキーとトキヤは返答する。


「はもるな!」


ルイスは、敬語を無くしてツッコム。それを見て、メンバー達は申し訳なさそうに笑っている。


そして、ルイスにも回避に限界があり攻撃が当たり吹き飛ばされる。マッキーとトキヤは、青ざめる。


「うぅー、あ痛たたたっ………。回復ヒール。」


トキヤは、心配そうにルイスを見て言う。


「ルイス、大丈夫か!」


ルイスは、フラフラと立ち上がり回復をかける。


「大丈夫です。HPが、3分の2吹き飛びましたけどね。回復職業なので、ダメージは受けやすいんですよ。だから、HPは仕方ないですね。」


「そっか、良かった。さて、相手のHPは残りラストゲージ半分。そろそろ、大丈夫だろうか?」


マッキーは、安心してから言う。


「良いと思いますよ。」


ルイスは、素晴らしい笑顔で言う。


「総攻撃、準備!」


遠距離職業が、攻撃職業に場所を開けるように下がり、攻撃職業は武器を構え嬉しそうに笑う。


「総攻撃、開始!」


攻撃職業が、一気に黒いユニコーンに突撃。遠距離攻撃は、再開され回復と蘇生も忙しく動き出す。


タンクは、黒いユニコーンのタゲを回収して回る。


そして、HP残り50でルイスが浄化ピューリファイをかける。


黒いユニコーンは、白い美しいユニコーンになる。ルイスは、ユニコーンを回復する。


〔ありがとう、これ……あげる!〕


ルイスは、ユニコーンからアイテムを貰う。


MVPボーナス:幻獣の欠片


これ、何なんでしょうか?まぁ、良いです。


全員のストレージに、ユニコーンの角が2本入っていました。すると、2匹が居ない事に気がつく。


なんと、回りの死んだユニコーンから角を採取していたようです。ルイスは、青ざめてユニコーンを見ればユニコーンは大丈夫だと頷く。


〔僕には、必要ないものだから。君の目的の為に、使ってくれると嬉しいな。その方が、彼らも喜ぶと思うから。頑張ってね、錬金王ルイス。〕


という訳で、希少なユニコーンの角を確保。ちなみに、死んだユニコーンの角では武器を作れません。なので、武器を作るにはクエスト報酬しかありません。しかし、ポーションは違います。


「貴方の、期待に答えられるかは分かりませんが。頑張って、作りたいと思っています。」


「良かったな。次の素材は、何だ?」


竜の心臓、ユニコーンの角と2つの素材が集まりました。その前に、やはり劣化蘇生薬を作りたいですね。それには、桃源郷の桃が欲しいです。


邪龍戦の報酬で、食料扱いですが錬金術の隠れ素材でもあります。まずは、メンバーと交渉ですね。


「その前に、お願いがあります。邪龍戦の報酬、桃源郷の桃を僕に売ってくれませんか?」


「ん?スイーツでも、作るのか?」


マッキーは、キョトンとしている。


「いいえ、桃源郷の桃は劣化版蘇生薬の鍵だからですよ。運が良ければ、年越しイベントで劣化版とは言え蘇生薬を使う事も可能です。」


すると、全員が驚いてから笑って桃源郷の桃を出して集める。そして、代表してマッキーが言う。


「お金は、いらない。けど、ポーションを売るときに多少の値引きをよろしく!それで良いよな?」


すると、全員が笑って頷く。ルイスは、驚いてから嬉しそうに頷いて全員に言う。


「はい、ありがとうございます!」


「俺はギルドで、桃源郷を売ってくれるプレイヤーがいないか張り紙を出そうかな。」


トキヤは、暢気に笑って言う。


「なら、俺達も集めてみる。」


「ちなみに、次の素材は不死鳥フェニックスの羽です。」


すると、トキヤは驚いてから苦笑する。


「それ、レベル200ないと無理だから。」


「そう、なので劣化蘇生薬を作ります。その間に、レベル上げとイベントを頑張りましょう。僕も、レベルを上げたいので、イベントには積極的に参加します。誰のクランが、先にレベル200になるか楽しみですね。勝者には、報酬も必要でしょうか?」


ルイスは、楽しそうに笑って言う。


「へぇー、それ面白いな。なら、クランのリーダーが報酬は用意して、勝者には用意した報酬の全てが貰えるって事にしたらどうだ?」


マッキーは、ノリノリで言えばルイスも頷く。


「それは、良いですね。」


「どうせなら、3位まで準備すれば?」


トキヤは、暢気に言う。


「ふむ、では同盟のリーダーである僕が2位で、副リーダーのマッキーさんが3位の準備をしましょうか。これは、報酬も考える必要がありますね。」


「よし、頑張って考えるか。」


ルイスとマッキーは、笑って頷くのであった。

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