第32話 邪龍討伐戦1
さて、邪龍討伐線が始まります。
すると、画面が現れてリーダーと副リーダー、それと参謀を決めるようにと書かれています。この場合は、リーダーはマッキーさんですよね?えっ、これって投票で決まるんですか!?なっ……、なるほど。誰が、選ばれるんでしょうかね。
一斉投票で、参加クランで上位のベスト10クランのリーダーの名前が書かれていますね。マッキーさんは、戦闘クランで3位ですか。ちなみに、僕は生産クラン1位なんですが初知りです。
さて、適当にポチポチッと決めましょうか。
お、結果が出たようですね♪…………はい?
副リーダー、マッキー
参謀頭、バルス
そして、リーダー………ルイス
なっ!?待って、待ってください!
「おー、おめでとう♪」
「頑張れよー!」
マッキーとトキヤは、笑ってルイスを見ている。発言と態度からして、面白がっているのは分かりきっているので無視。ルイスは、思わずため息を吐き出して苦笑してしまう。何で、こんなことに?
「何で、何で僕なんですかぁー!」
ルイスは、思わず落ち込んだ雰囲気で言う。
「あ、どうやらリーダーには台詞があるんだと。」
みたいですね。運営から、台詞がメールで送られて来ました。これを、僕が言うんですか?
目の前には、ゴブリンやオーク……コボルト等がたくさん居ます。一番後ろに、邪龍が待っていると……。なるほど、これは本当に面倒ですね。
具体的に、僕らの勝利条件は3つです。
・街に、敵を侵入させない事。
・住民(NPC)に、死者を出さない事。
・全滅せず、邪龍を討伐する事。
全滅は、アウトなのが辛いのですが……。
さて、どうしましょうか?
ちなみに、戦闘NPCも死ぬのはアウト対象です。あらら、どうやら喧嘩が始まったようですね。
「お前らが、死んだら意味がねーんだよ!」
「だから、俺達だって戦えるって言ってるだろ!」
僕は、ため息を吐き出して頭を押さえる。そしてから、声の方に歩き出す。プレイヤー達は、無言で道を開けてくれる。ルイスは、堂々とした雰囲気で二人に真剣な声音で静かに問いかける。
「まずは、二人とも黙ってくれませんか?」
「何だと!」
ルイスは、龍の威圧を発動させる。
「「っが!?」」
「では先ず、住民である貴方の言い分から聞きましょうか?プレイヤーの彼は、後から聞きます。」
ルイスは、優しく微笑み話しやすく語りかける。
「俺達だって、戦える!ただ、守られるのは嫌だ。この街は、俺達の街なのに何もしないだなんて!」
なるほど、確かに何らかの役目を考えなければ。
「それで、貴方の言い分はどうですか?」
「そりゃ、俺達だって手伝って欲しいよ!でも、死んだら負けって条件があるんだぜ?どうすりゃ…」
ふむ、なるほど……。さて、どうしましょうかね。
「では、住民戦闘職には住民の避難と、万が一突破された時の最終戦闘ラインをお任せします。」
「そう言って、俺達に何もさせないつもりか!」
すると、ルイスは微笑みながら含みを込めて言う。
「まさか、使える人材を使わないのは勿体ないですから……ね?どうせ、突破はされてしまいます。でもまぁ、街には入れませんがね。大丈夫です、ちゃんと皆さんにも活躍の場は用意しています。」
すると、プレイヤーが怒鳴る。
「それじゃあ、勝てないだろ!」
「勝てますよ。では、勝利条件は何でしたか?」
ルイスは、暢気な雰囲気で言う。
「住民を、殺さず街に侵入させず邪龍を討伐。」
「では、私の職業は?」
ルイスは、微笑み堂々と笑う。
「祈祷師だが、回復職業だろ!」
すると、ハッとするベテランプレイヤー。
「祈祷師は、教皇を凌駕する回復力と効果範囲を持つ特殊回復職ですよ。しかも、集団戦闘特化。」
「だから、何だよ!」
すると、マッキーもハッとしてから言う。
「なるほど、じゃあお前は下がるのか?」
「僕は、回復職業です。戦闘は、得意ではありませんよ。ただし、邪龍は別ですが……。取り敢えず、周りの敵を全滅させないと話は進みませんね。そこは、バルス参謀と作戦を練るしかありません。」
ルイスは、真剣な表情で考える仕草をする。
「あの、参謀初心者なんですが俺!」
「「…………は?」」
あー、そうでした。この投票は、言わば人気投票。才能とか、技術は二の次なんですよね………。
「ルイス、どうしようか?」
「……バルスさん、念話スキルは持っていますか?」
ルイスは、考えるように呟く。
「おう、あるぜ!」
「……では、僕もSPで念話を取得します。指示を僕が出すので、そのまま皆さんに伝えてください。」
バルスは、キョトンとしてから言う。
「いや、無理だろ!?どうやって、戦況を見るんだよ?俺に、聞いたって分かんないぞ?」
「はい、分かっています。でも、大丈夫です。」
ルイスは、言いたく無さそうに言う。
「はぁ?大丈夫って、納得いかねぇよ?根拠は?」
スキルの情報を、言いたく無いから遠回しに言っているのだ。だが、バルスは理解してなおスキルを知ろうと粘る。ルイスは、困った表情をする。
「ふーん、リーダーの言葉が信用ならんと。じゃあさ、お前がリーダーやれば?ルイスは、お前を気づかってスキルポイントを無駄に使うっていったんだぜ?そして、勝てるから頑張ろうって言ってる。なのにさ、お前はルイスから何を聞き出そうとしているんだ?スキルは、プレイヤーの生命線……。お前だって、上級者プレイヤーなら理解しているだろ?」
マッキーは、冷たい視線をバルスに向ける。
「え、降りても良いんですか?」
ルイスは、嬉しそうな声音で言う。
「アホ!お前が、降りたら負けるわボケ!」
マッキーは、思わず突っ込みを入れる。
「残念、無念、また来年~♪な展開になるな。」
トキヤは、笑いながらルイスを逃がすまいと確保。
「それ以前に、ゲームオーバーで住民に怒りと悲しみを向けられますね。お前達のせいだって……。」
アベルは、不安そうにルイスを見ている。
「ですが、僕より有名な参謀の方が………」
「これ、ワールドクエストだぞ?いや、やりたい奴は居るだろうけど。選ばれたのは、ルイスだよな?参謀は、お前がするしかないだろ?俺は、戦闘関連しか出来ない。お前は、全体的な指揮と指示を出してくれれば細かい指示は俺や他の参謀がやるさ。」
すると、周りのプレイヤー達が頷く。
「バルスさんは?」
「無視する。だいたい、皆で協力して頑張ろうって時に馬鹿な事をする奴だぞ。無視だ、無視!」
マッキーさん、かなり不機嫌ですね。ここは、大人しく従った方が良さそうです。取り敢えず、開始まで後2時間半はあります。今のうちに、作戦会議をしてマッキーさんにも落ち着いて貰いましょう。
「分かりました。30分後に、作戦会議を開始します。クランの参謀代表1人は、5分前に中央テントに集合をお願いしますね。僕は、準備があるのでここで失礼します。さて、急がなければ………。」
「準備?」
「あ、俺も手伝う。」
マッキーは、キョトンと首を傾げトキヤは笑う。
ルイスは、机を並べる。すると、他のプレイヤー達が来て手伝ってくれる。ルイスは、お礼にバフ菓子を渡す。そして、茶菓子を置いてから集まった人の順番にお茶を淹れる。すると、感謝して座る参謀。
「それ、リーダーの仕事じゃないだろ?」
「良いです。僕が、やった方が美味しいでしょ?それに、マッキーさんも落ち着いて良かったです。」
そう言って、ルイスが冗談っぽく笑えばマッキーもつられて笑う。周りの参謀達も、落ち着いて雑談しながら笑っている。よし、成功ですね。
「さて、そろそろ時間ですね。では皆さん、ここからは真面目な話をしましょうか。」
ルイスは、堂々した雰囲気で笑う。周りも、表情を引き締めてから真剣に頷いている。
「まず、僕は大雑把な指示しか出しません。」
「何故?」
ルイスは、暢気に笑ってから言う。
「合わない指示で、ミスを発生させない為です。大雑把な指示なら、自分たちがやり易い戦法を取れますしね。ただし、大雑把とはいえ指示に合わない行動を見つければ最初・・・は注意します。それでも、駄目なら……そのクランを編成から外します。つまり、報酬が少なくなり骨折り損のくたびれ儲けになります。」
「だが、批判を受けるのでは?」
すると、マッキーはため息を吐き出して言う。
「注意を無視して、好き勝手したらって話だ。それで、負けてしまうより良いんじゃねか?多少は、批判を受けてもそうするべきだと俺は思うぞ。」
「勿論、批判は全て僕が後で受けてたちます。」
まぁ、勿論ですが全力で返り討ちにしますよ。
ルイスは、アッサリ言うが寒気に震える参謀達。マッキーも、思わず黙り込んでから無言で頷く。
あれ、今の発言は頼もしいはずなんですが。僕は、何か間違えましたかね?うーん、間違ってませんよね?敵に、容赦や手加減は必要なしですし。
マッキーは、苦笑しながらルイスに言う。
「まぁ、お手柔らかにな?」
「そこは、消し灰にしてやれの間違いでは?」
そこで、参謀達がむせたりお茶を吹き出したのは仕方がないだろう。思わず、トキヤと王称号持ち達は爆笑していたが。ルイスは、キョトンとしている。
「あー、うん。良いぞ、消し灰にしても………。」
「あははははっ!やべーな、こいつ。」
グレンは、困ったように言う。すると、暗殺王の羅華ラカが笑って言う。ルイスは、お茶を飲んでからクランの立ち位置や連係の確認を進める。
これで、大丈夫でしょう。
「では、1時間休憩してから開始しましょう。」
「ルイス、疲れてないか?」
グレンは、心配そうにルイスを見ている。
「グレン、疲れてはいないのですが面倒ですね。」
ルイスは、冗談っぽく笑って言う。
「明日は、テストだと言うのに……」
「グレン、テスト勉強は大丈夫そうですか?」
すると、グレンは落ち込んだように言う。
「それが、とてもヤバい。」
「なら、明日は朝早く学校に行って、一緒に勉強しましょうか。僕は、一応はしましたが。」
すると、興味深い視線を向けられている。
「ルイスとグレンは、リア友なのか?」
「そうだぜ、同級生。」
「なぁ、オフ会とかしねーの?」
すると、グレンは苦笑してルイスを見る。
「あー、僕がそういうの嫌なので………。」
「なるほど……。(呟き:何か、勿体ない……。)」
すると、数人が頷いている。勿論、その中にはマッキーやトキヤも含まれる。そして、グレンも。
「さて、僕もリルとソルをモフモフして癒されて来ます。リル、ソルも遊びますか。うん、可愛い。」
何だ、この可愛い生物は………。
精霊も、可愛いのだけど………可愛いかよ!
手を出したら、あの3人に絞められるぞ………。
(トキヤ:手を出したら、木っ端微塵にする。)
(マッキー:そこは、ミンチにしてやるだろ?)
(グレン:問答無用で、消し炭にする。)
「やだ、何っ!?この人達……怖い!」
「んー?どうかしました?」
ルイスは、ユルユルな雰囲気で言う。
「何でもない。」
トキヤは、笑顔で言う。ルイスは、キョトンとしている。だが、2匹に甘えられ遊びを再開する。
さて、時間ですね。では、行きますか。ルイスは、龍人の姿で一瞬だけ迷ったがノリノリで言う。
「主に、認められし戦士達よ!時は、訪れた!穢れを広めし、災厄の化身。邪神の右腕にして、凶悪な邪龍を今討つとき!武器を取れ!心を研ぎ澄ませ!そして、主に力を示すのだ!突撃開始!」
雄叫びを上げて、プレイヤー達が動き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます