第33話 邪龍討伐戦2
ルイスは、堂々とした雰囲気で台詞を言う。
「主に、認められし戦士達よ!時は、訪れた!穢れを広めし、災厄の化身。邪神の右腕にして、凶悪な邪龍を今討つとき!武器を取れ!心を研ぎ澄ませ!そして、主に力を示すのだ!突撃開始!」
雄叫びを上げて、プレイヤー達が動き出す。ルイスは、真剣にそれを見ると地図マップを開き【地形把握】と【敵索】を発動。素早く、敵と見方の位置と動きを確認する。そして、【念話】を常に繋げたまま戦況を見て忙しく指示を出す。
「クラン、ラルゴ!敵の戦力が、回り込んでます!急いで阻止、全滅させてください!」
『なっ!?了解、直ぐに全滅する!』
ルイスは、マップと地形把握の情報を見て敵索情報も素早く確認。そして、暫く考える仕草をしてから頷いている。そして、ラルゴの参謀に情報を言う。
「現時点で、敵の全滅を確認しました。引き続き、向かってくる敵を倒してください。何かあれば、此方から知らせますので。頑張って、勝ちますよ!」
『おう、こっちは任せろやい!』
そろそろ、範囲回復を入れた方が良さそうですね。
「祈祷師ルイスが、主に乞い願う。主よ、無力なる我らの傷を癒したまえ………。【範囲回復エリアヒール】!」
ルイスを中心に、キラキラしたまるで雪のような光が広がり、戦闘中のプレイヤーに降り注ぐ。
『おー、ナイスタイミング♪助かったぜ!』
マッキーの、嬉しそうな声にルイスは言う。
「範囲回復を10分後、もう一度発動させます。なるべく、HP管理は怠らないように。」
『10分後な、HP管理も了解した!』
ルイスは、MPポーションを飲み息を吐き出す。
「大丈夫か?」
「はい、戦況は予想通りなので大丈夫です。中盤あたりから、おそらく突破してくる雑魚が現れます。それを、全力で倒してください。勿論、貴方達を最優先で回復するのでご安心を。それまで、武器の手入れや体を動かしながら待機ですね。」
ルイスは、戦闘NPC達に暢気な笑みで言う。
「違う、あんたの事だよ!1人で、忙しそうに指示を出しているし。少しは、休んだ方が………」
「それは、出来ません。こうしている今、他のプレイヤーは戦場で戦っています。僕がリーダーで、参謀頭であるのに休んでる訳にはいきませんしね。」
ルイスは、戦場を見つめ真剣に言う。ちなみに、念話は繋がったままでありプレイヤー達の指揮が上がったと報告が来る。ルイスは、赤面になりながらもしまったと呟く。勿論、念話は切れてない。
「しまった、念話を切り忘れてた……。うわぁ……、恥ずかしすぎて頭が真っ白になりそうです。」
『ルイスさんやい、戻ってこーい!』
『ははっ、顔が見れないのが残念だな♪』
ルイスは、思わず黙り込み無言になる。
「トキヤさん、グレンとマッキーさんがいじめる!もう、メンタルズタボロで動けません!」
『頑張れ、皆の頼れる聖人様。』
まるで、笑いを堪えるような震えた声で言う。
ブルータス、お前もか………
ではなくて……、フォローしてくださいよ!
ん?そろそろ、邪龍が動きますかね?警戒しつつ、敵の動きを見きわめなくては。冗談を、言っている場合ではありませんね。うんうん、そろそろ開始から2時間30分経過といった所でしょうか?
戦況が動くなら、ここらだと思うのですが………。
邪龍は、空に向かって雄叫びをあげる。すると、攻撃力アップのエフェクトが敵にかかる。
ルイスは、ムスッとしてから試験管を出して言う。
「狙撃に、自信のある方は居ますか?」
「ザルコの弓矢部隊、手伝ってくれ!」
NPCのリーダー、シルバが声をかける。彼は、心配そうに僕の隣で万が一に備えているそうです。
「それで、聖人様。あっしに、何用ですか?」
「僕が、試験管を投げるので、プレイヤーの真上で撃ってください。少しだけ、フォローします。」
すると、納得したように笑って頷く。
「それなら、任せてくだせぇー。」
「はい、頼りにしてます。では、行きますか。」
ルイスは、【投擲】を発動させて試験管を7本投擲する。すると、プレイヤーに攻撃力アップ・防御力アップ・スピードアップ・弱体効果無効・30秒の無敵効果付与のエフェクトがかかる。
「出来れば、少しだけ押し返してください!」
『無敵効果は?』
ルイスは、真剣に言うとマッキーが言う。
「30秒です。大技は、出来れば邪龍戦に温存したいのですが…。このままでは、少しヤバいですね。マッキーさん、そっちから見た戦況は?」
『思ったより、邪龍のバフ効果が高い……。このままじゃ、押し切られる可能性も有り得る。』
ルイスは、考える仕草をしている。シルバは、見方に黙るように指示を出してルイスを見る。
「………ヘイトは、どんな感じですか?」
『それが、俺らが稼いでるはずなんだが………。』
なるほど、やられました………。あの邪龍、動かないんじゃない……動けないんだ。おそらく………
「10分経過、範囲回復を入れます!」
『了解!』
ルイスは、回復をかけてから苦々しく呟く。
「《統率の取れた魔物ほど、厄介で恐ろしい物はない。》とは、ゲーム界でとても有名な言葉ですが。まさに、それですね。しかも、嫌になるほど賢いときた。これは、ヤバい流れですね。うーん……。」
『おい!褒めている場合かよ!』
マッキーは、苦笑して言う。ルイスは、手探りで試験管を取り出す。そして、ゴーレムを素早く作り出す。そして、苦笑してから言う。
「仕方ないですね、そんなに遊びたいならゴーレム達を呼びましょうか。取り敢えず、敵を押し返しましょう。それが、現在の最優先行動なはずです。」
『俺達に、被害はないよな?』
トキヤの質問に、素晴らしい笑顔でルイスは言う。
「ご安心を、全て自我のある上級ゴーレムです。」
おそらく、ぶつけて無事なゴーレムは居ないでしょうね。ましてや…、この乱戦では核は回収するなんて不可能ですし……。ごめんなさい、ゴーレムさん達……。僕達の為に、頑張ってください。
「戦闘専用ゴーレムで、邪龍対策に魔法防御に特化した作りをしています。なので、周りの雑魚から物理攻撃を受けると弱くなる傾向があります。とは言え、戦闘用上級ゴーレムなので。少しは、蹴散らしてくれるでしょう。言いたい事は、1つです。」
『つまり、肉壁にして突き進めと?』
ルイスは、頷く。そして、ゴーレム達を見て言う。
「ごめんね、ヴィル達。」
すると、ゴーレムリーダーのヴィルがサムズアップする。他のゴーレムも、任せろとばかりに頷く。ルイスは、ゴーレムを見送ると呟く。
「にしても、自作のゴーレムが目の前で砕け散るのは、見ていて何か少しだけ辛いですね。」
さて、出来れば邪龍をあの場所から退かしたいですね。この世界には、スポットと呼ばれる魔力が溢れる場所があります。邪龍は、それに目をつけて陣取り最小限のMP消費で大技を使っている訳です。
『ルイス、ごめんな……。』
「気にしないでください。それより、邪龍を退かせるチャンスでは?ゴーレム達が、敵の勢いと数を減らした今なら押し切れるはずです。」
『おう、了解だ。』
さて、突破した雑魚が来ましたね。予想より、多少は多いですがシルバさん達なら大丈夫でしょう。
「シルバさん達、出番ですよ。」
「任せろ、全滅させてやる!」
さて、今のうちにMPを回復しなければ………。
ルイスは、地図と敵索を素早く確認して安堵する。
どうやら、邪龍をスポットから遠ざけるのに成功しましたね。これで、相手も強いスキルをポンポンと撃てないはず。まずは、防御を固めて立て直すべきですね。遠距離攻撃で、邪龍を牽制しつつ他の魔物を狩りつくしましょう。さて、そろそろ回復を……。
『ルイス、回復は大丈夫だ。そろそろ、お前も温存した方が良い。出来れば、前に来れないか?』
「シルバさん、そろそろ全滅が終わります。街に、素早く撤退してください。邪龍を狩ります。」
シルバは、無言で頷いている。そして、仲間と共に撤退した。ルイスは、走って前に向かう。
「では、頑張りますか。【龍化】。」
ルイスは、【龍化】を発動させる。龍人は、人によった姿だが龍化を発動すると龍よりの姿になる。
「うおっ、ルイスが何か格好いい姿になっとる。」
「さあ、ラストです。皆で、勝ちますよ!」
ここで、麒麟と霊亀そして神龍が助けにはいる。
「「「少しだけ、力を貸そう!」」」
邪龍を、牽制してくれてます。今のうちに、邪龍以外の魔物を倒してしまいましょう。
そして、ラスト一体を倒して邪龍戦です。
「総攻撃、開始!ここからは、パワープレーで叩き潰します。タンク職業は、ヘイト集めとタゲ取りをお願いします。魔法職業は、支援と回復を優先!」
ルイスは、邪龍に攻撃する。
そして、3時間後……。
邪龍は、苦し気な叫び声で倒れた。そして、小さくなった邪龍が現れる。これで、戦闘は終了です。
「皆さん、お疲れ様でした!」
それにしても、子邪龍が僕に甘えて来て困ります。
「さて、邪龍を連れて帰りたいが……。」
「ふむ、やはり気に入られたようだな。」
「邪龍と黒い龍人、何かあるのでしょうか?」
3体は、困ったように言っている。結局、3体に説得させられてしぶしぶと僕から離れる子邪龍。
「これは、かなり気に入られたな。」
「では、また会おう。」
「ルイス、神殿に急ぐが良い。」
そう言うと、神龍達は姿を消えてしまった。
さて、報酬も受け取りましたし解散ですね。このまま、神殿に言って秘薬の蘇生薬を返しに行きましょうか。やっと、蘇生薬の素材を集めに行けます。
「ルイス、どこに行くんだ?」
「ワールドクエストの、ストーリーを進めに。」
すると、プレイヤー達は驚いた表情でついてくる。秘薬を置くと、ゲレティーが現れて微笑む。
「ありがとう、プレイヤー達。これで、暫くは邪神も動けないはずだよ。それと、君達が早く蘇生薬を完成させれる事を祈っているよ。」
ゲレティーは、紙を秘薬の隣に置いて秘薬を取ると姿を消した。そして、カリオストロだけが残る。
「カリオストロ、僕のホームへ来ませんか?」
「だが……、俺は。」
カリオストロは、戸惑うように呟く。
「では、言い方を変えます。僕のホームを、帰る場所にしませんか?僕達は、貴方を歓迎しますよ。」
「……よろしく頼む、マスター。」
すると、プレイヤー達が拍手をする。ルイスは、ゲレティーの置いていった紙を取って見て固まった。
「最後に、とんでもない爆弾を……」
それは、劣化版の蘇生薬のレシピが置かれていた。
「ルイス?」
「マッキーさん、素材の件どうします?」
「取り敢えず、角だけ欲しいかな。」
では、角をゲットしたらホームに戻りましょうか。ルイスは、疲れたようにログアウトしたのだった。
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