第20話 タッグバトル本戦 二試合目(前編)

トリックスターとは、言わば幻影等を得意とする種族です。そして、間違ってはいけないのは夢魔より強力なスキルを使う事です。しかも、自分達の世界を必ず持っており、相手を閉じ込める事が出来てしまうのですよ。この、閉じ込めるスキルが1番厄介なので、使われる前に潰すのが基本的ですね。


さて、どうしましょうか?


「なぁ、どうやって勝てば良いんだ?」


「うーん、相手はトリックスターですしね。」


僕は、ため息を吐き出すと双子を観察する。


「「よろしくね、グレンさん。」」


ルイスを無視して、笑顔でグレンに挨拶する双子。グレンは、不機嫌そうに双子を見て適当に挨拶。双子は、僕を見てからギラギラした視線を投げる。


「「初めまして、鬼才の名匠ルイス。僕達は、炎天神楽の現生産頭であるロイヤとクラーだよ。」」


ルイスは、少しだけ驚いてから困ったように笑う。グレンは、納得の表情をしてから〔くだらない……〕と呟く。ルイスは、同意するように頷いてため息。


「どんな、チートを使ったかは知らないけど、貴方を潰してリーダーに認めてもらうんだ。」


「そうだ、僕達がチートの証拠を見つけてやる!そして、僕が錬金術師のトップになるんだ!」


あー、それは無理なのでは?だって、僕は錬金術師では無いので。と言っても、聞いてはくれなさそうですよね。あ、運営さんも同じツッコミしてます。


それにです、錬金術の最高称号は錬金王です。


つまり、僕よりも錬金術で功績をあげる必要が有りまして。そしてから、僕に勝たなければならないんです。なので、今すぐには無理でしょうね。


勿論、例外は有りますよ。


例えば、解放された蘇生薬を1番に完成させるとかです。それなら、錬金王の称号も奪えるでしょう。


スキル化で、称号は持っているので奪うのは可能ですがね。例え、錬金術師ではなくっても称号を持っている事には変わらないですし。


ただ、僕は錬金術師のトップではありませんよ?薬師なので、除外のはずですし。そうじゃなくても、もうゲーム開始から暫く経つので、錬金術師のプレイヤーが追い上げてるはずなんですよ。たぶん……。


さて、この話は一先ず置いといて……チートって、言いました?言いましたよね?腹が立つ……。


「運営さん、付かぬ事をお聞きしますが………」


『えっと、はい。どうぞ、何でしょうか?』


ルイスは、真剣な表情で言う。


「今、GMコールしたら2人はどうなりますか?そうですね、コール内容は僕への暴言でどうです?」


『あー、それは………』


なるほど、出来るんですね。ですが、試合に旨味が無くなるから止めて欲しいと………。納得です。


双子は、青ざめて此方を見ている。


『一応、言っておきますがお二方。ルイスさんは、不正行為をしておりません。彼が、苦労して努力して功績を何度も上げたんですよ。その結果が、あのルイスポーションと呼ばれるポーションです。』


「「僕達は、納得しないからな!」」


勝手にどうぞ……。もう、相手にする価値もありません。


「グレン、決めました………」


「んー?」


ルイスは、低い声音で呟き鋭い視線を双子に向けている。グレンは、思わず笑って暢気にルイスに視線を向ける。その瞳には、期待が込められている。


「こいつら、叩き潰します。」


「はぁいよー♪」


ルイスの掛け声に、グレンは楽しそうに返答する。


すると、運営のユキタさんはほっとしている。星さんは、申し訳なさそうに頭を下げていた。


これは、負けられません。炎天神楽を、潰す予定なので此処で負ければ色々と面倒ですしね。負けた悔しさに、炎天神楽を襲ったなんて言われたくありません。これは、僕だけの問題では無いんです。


別に、称号なんてどうでも良いんです。


錬金術師として、地位とか称号とか余り気にした事は有りませんし。それに、奪われたら気が楽になりそうですし。寧ろ、奪ってくれても構いません。でも、個人的に彼らには渡したくは無いですね。


取り敢えず、何か気に入らないので潰します!


勿論、異論は認めませんし許しません。さて、温存予定でしたが………種族解放しましょうか。


そもそも、龍人はトリックスターのキラー種族でもあるんですよ♪トリックスターにも、ちゃんと弱点はあります。彼らが、4位なのは上の2人がキラー種族でもう1人が相性の悪いジョブだったから。


まずは、敢えて彼らの世界に入りましょうか♪


そして、龍人になって暴れましょう。


とても、楽しみです♪


おっと、表情に出さないようにしなくては………。


『それでは、試合を開始します!始め!』


オッドアイの双子は、余裕な笑みで言う。


「じゃあ、連れて行こうか。」


「うん、連れて行こう♪」


双子は、深い笑みを浮かべると景色が変わる。


「「【残酷(クルーエル)な世界(ワールド)】!」」


「なっ、景色が!?」


「グレン、落ち着いて。焦れば、死にますよ。」


双子は、ルイスの反応に一瞬だけ不機嫌になる。


「「ようこそ、僕達の世界へ!歓迎するよ、業火のグレンと薬屋ルイス。さぁ、残酷な宴を始めよう。」」


双子は、ミステリアスな雰囲気で言う。


「「お邪魔しまーす!おおっ、広い!」」


格好つけてるとこ、悪いのですが笑いを取りに行きますね。ムード、ぶち壊しです。あ、笑い声が聞こえますね。うんうん、良かったです。


「なっ!」


「何か、恥ずかしい……」


さて、どう動きましょうかね。ここから、出る事は容易いのですが……。うーん、どうしましょうか。


「でっ?どーするんだ、ルイス。」


「取り敢えず、相手の出方を待ちましょうか。」


ルイスは、笑顔でグレンに言う。


「了解。ジョブは?」


「そのままで。」


今のジョブは、グレンが暗殺者で僕が薬師です。


「僕は、ジョブを変えます。」


「ん?ルイスは、何か知ってんのか?」


ロイヤは、細工師とシーフ。クラーは、錬金術師とアサシン。どちらも、暗殺特化なんです………。


それに、今の僕達は言わば袋の鼠な訳ですよ。実際は、袋を引き裂いて襲いかかる予定ですがね。


「グレンは、忍耐系のスキルは?」


「あるけど?」


グレンは、キョトンとして首を傾げる。


「そうですか、そろそろ双子の猛攻が始まるので、忍耐系と防御系のスキルを準備してください。」


「あれ、対抗しないのか?」


あー、無理なんですよ。それ……。


「死にますよ♪」


「それ、どんな猛攻だよ………」


僕は、双子が動いたのでスキルを発動。グレンも、慌ててスキルを発動させて構える。


「グレン、常に背中合わせてす。」


「了解!って、ぐはっ!!」


グレンは、ダメージを受けて驚く。ルイスは、祈祷師のスキルを発動させてグレンのダメージを半減させている。グレンは、苦々しく顔をしかめる。ルイスは、真剣な表情で静かに双子を見つめる。


「この世界では、僕達が最強なんだ!」


「さっさと、降参すれば?」


双子は、興奮したように言う。


「マジか……、攻撃が見えねぇ………。」


「つっ!それが、トリックスターの強みですから。彼らの世界に、入ってしまえば大抵・・・・は死にます。」


すると、グレンは真剣な表情でルイスを見る。


「それで、何を考えてる?」


「少しだけ、弱い振りをして仕返ししようかと。」


ルイスは、おどけた口調で呟く。


「っ!?」


「あ、駄目ですよ。表情に出したら、バレちゃいます。グレン、この試合は恐らく勝てます。」


すると、グレンは表情を出さないように言う。


「ルイスって、さりげなく怖いよな?」


「む、失礼な。」


さて、祈祷師のスキル【御霊の光】でダメージ半減してたのでダメージも少なかったでした。ただ、衝撃が辛いんですよねぇ……。もっと、優しい衝撃にしてくれれば良いのですが。無理でしょうねぇ~。


補助スキルで、火力を上げてきたのは予想外です。


さて、そろそろ準備をしましょうか。


「ところで、2人は隠蔽の指輪はどうしました?」


「そんなの、売ったに決まってるだろ?トリックスターだって、隠す気は無かったし良い値段したから売却用アイテムだろうし。な、クラー。」


「うん、そうだね。で、それがどうしたのさ?」


いっ、いけません……。思わず、笑いを押し殺したので肩が震えてしまいました。グレンは、何を言っているのか理解が出来なくて首を傾げている。


「こほんっ、失礼しました。そうですか、売りましたか。なら、レベルは100未満ですかね?」


「俺も、100未満だけど?」


あ、失言してしまいました。


グレンは、キョトンとして僕を見ます。なるほど、レベルだけで言えばトップに近いレベルだった件。えっと、トップでは無い………ですよね?恐らく……。


「ルイス、お前……いったい何レベルだ?ダメージも、ほとんど受けてないし。もしかして……。」


「てへっ☆」


ここは、流させてください。本当に、お願いしますから!それに、蘇生薬を解放したのが僕だってバレちゃいます!それは、とても嫌ですし。


「ルイス?」


おおっ、グレンの威圧が凄いです。


「だっ……だったら、後でにしましょう!」


「……そうだな。敵も居るし、後でにするか。」


うぉおおおお!本当に、助かりました!


「あれは、売却用のアイテムじゃないの?」


クラーが、真剣な表情で聞いてくる。ルイスは、曖昧に笑って流そうとする。しかし、食いつく双子。


「でも、何に使うのさ?」


「さぁ?知ってるなら、情報を売れよ!」


えっと、情報を売る義理は無いんですけど。


「自分で、調べてください。」


「「こいつ、絶対に潰す!弱い癖に!」」


ルイスは、隠すように着けていた指輪を双子に見せる。双子は、思わず息を呑んで固まる。


「潰せるものなら、潰してみればどうでしょう?」


ルイスは、指輪をストレージに入れるのだった。

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