第86話『第三階層:中退』
シンは目を覚ます。
第三階層、体育館。
担当講師はシャドウ。漆黒の団長。
遮蔽物のないただただ広いだけのフロア。
「よう、やっとお目覚めかァ?」
「……僕ぁッ……イヤだッ……」
「テメェの足りねぇ頭でもちったぁ理解できたかッ?」
「……恐怖、絶望、痛み……僕の聖なる心に刻まれた。汚されたッ!!」
「そりゃ、よかったなァ」
「だから、帰る」
「……はぁ?」
言っている意味が分からず反応が遅れる。
「僕ぁね。もう、帰る」
「……テメェナンつった?」
「はいはい! ギブアップ! 僕の、負けねッ!」
「……テメェ、自分で始めたことほっぽり出すつもりか?」
「とても勉強になりましたッッ! もう十分です! ありがとうございましたッ!!! もう二度と君たちにも、王都にも関わりませんッッッ! もうオシマイッ!! バイバイッ!!!」
「テメェ……ナニ逆ギレしてンだッ」
シンは子供のように癇癪を起こしキレている。
「めんごめんご! 僕がすべて悪かったですッ! もう、そういう事で良いよ。はいはい! 全部僕が、悪うございましたッ!! 改心したので二度と関わらないでネッ! ちゃんと謝罪したからねッ! ちゃんと許してねッ!!! キミも大人になろうね?! 思いやりとか人の基本だよ? 謝ったら、ノーサイド・ノーゲームッ! 恨みっこなし! スポーツマンシップで行こうネッ!!!」
「なにトチ狂ったこと言ってンだッ。許すわけねぇだろ」
「あー……イマ……取り込み中だから……ちょっと話しかけないで……くれるかなぁ……イマ、良いアイディアを思いついているところだからさぁ……僕ぁね、イマ、面白いことを考えてる最中なんでよね? イマは、新しいワクワクの構想のことで頭がイッパイだから、もう……話しかけて邪魔しないでねッ! 無視するからッ! イマ、僕は集中して新しい独創的なドキドキとワクワクをクリエイトしてる最中だからさッ! 決めた! ステルスゲームとスローライフを合わせた、略して、ステルスローライフッ!! 僕ぁ、ステルスローライフを始めるッ!!!」
「あぁン……?」
「このダンジョン出たらここから遠く離れた、田舎の村でスローライフして暮らす事に決めたッ! 冒険者シンの旅はオシマイッ! コレからの僕ぁね、田舎の村に住む優しき隣人シンだよ? だからとっととここから出してねッ! もう二度とお前たちにも王都にも関わらないからさッ! サイナラッ!!」
シャドウは知識や学問に精通している訳ではない。
だから……この状態を言葉ではうまく説明できない。
本能がシンを、見逃すなと告げている。
その場を逃げ切るために言っているようではない。
本気でコイツは二度と姿を現さないつもりだ。
「僕はね、心が優しくて繊細だからもう……こういう、残酷な事は、限界なんだよッ! 僕ぁねぇ……決めたよ。これからはスローライフの時代だよね。僕はね、毎週かかさず徹腕ダッシュ見てたほどのプロのスラーライフ男だからさ! 今日、ここで傷つけられた心と体の傷は、田舎の誰かを傷つけて発散する事にするよ。江戸の仇を長崎で討てッ! て言うでしょ? 僕にとっては、ココが江戸で、まだ見ぬ村が長崎! 僕はきっちり、仇を討つッ!!! 今日の痛みは、君たちとは一切関係のない田舎の女子供を、強姦したり、痛めつけて発散することにしたから! もう、君たちは、関係ないネッ! よかったねッ!!! バイバイッ!」
「……――させるかよッ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます