第71話『多世界転移者のはじまりの世界』
「御遣いっちは、処女信仰はよくないとか! 僕のこと責めるけどさぁ! 僕だって、ここまで処女にこだわるのには、ちゃんと理由があるんだよねっ! 僕は、非処女にトラウマを植え付けられた、被害者なんだよ? 僕はね、最初に召喚された世界で女神に裏切られたんだよッ! 諸悪の根源は、その非処女の女神だッ!!」
「違法奴隷のような扱いをされたのですか?」
「いやいや! ないない! 僕、プライド高いからそんなんだったら、超ブチ切れてるし! そもそも、そんなことされたら僕だって、普通に逃げるっしょ? まぁ、淫売女神から相手のスキルを一瞬でゲットできるスキルをもらえたのは、マジサンキュッ! って、感じだったんけどさっ! ……その後に、あのクソ淫売女が、裏切って、僕の心を傷つけて、心の平和と平穏を、はちゃめちゃに蹂躙しやがったんだよっ! 僕が、処女しか信じられなくなったのは、あのクソ女神のせいだッッッ!」
「――ふむ。告白しなさい、人の子よ」
「聞くも涙、語るも涙の、チョー! 泣ける話なんだよ! 僕をラスボスの魔王討伐のために召喚した女神が、最後の最後で裏切りやがったんだよ! 僕に出会う前に、魔王となんか、いい感じになっていたんだよね! もう……女神は心が非処女のクソビッチだったんだッッ! この僕の絶望わかるでしょ? ウキウキでワクワクの楽しい冒険の旅の、その、最後の最後で、ヒロインが非処女だと分かった、僕の、この辛さっ! 絶望だよッ!!! ラスボスの魔王野郎と闘ってる時に、実は女神と魔王が過去に相思相愛の仲だったと判明したんだよね!! そういう、僕を舐め腐った事をしていやがったんだよね! 許せるわけねぇじゃんッ! ねっ? これだから、非処女も、魔王とかいうクソ野郎も、大ッ嫌いなんだよ!! それにさぁッ、女神の行っていた、数々の悪逆非道な行為の数々! 僕に対する、不貞行為、姦淫行為、あの女は完全に心の処女性がめちゃくちゃにされてたんだよ! 寛容な、僕もね、さすがに、怒ったよ。そんで、僕ぁ愛と正義の力で、魔王の顔面ををめちゃくちゃに、原型が残らないくらい、陥没するくらいに殴りまくって、聖剣で惨たらしくぶっ殺そうとしたら、さぁ……あの淫売女神が僕を止めやがったッッ!!!! 元彼の魔王を優先したクソ非処女! そんで、何だと思ったら 『人も、魔族もお互いが歩み寄れば分かりあえる』 とか 『ここまでする必要はない!』 とかさぁ……舐め腐ったことを言いやがった! あの女神、体は処女でも、心は非処女だったっ! 僕以外の男、しかも魔王野郎に、過去に恋してたとか許せるかよッ!! あの淫売女神は、僕と合う前に、魔王に心の処女膜を
「――――…………?」
「マジで超ムカついたね!! だからさぁ……クソ女の前で、魔王野郎を散々に痛めつけ、苦しめ抜いたあげくに四肢を、さぁ……一本一本……この手で、ブチブチって、感じでもぎ取ってやったんだよね! ザマァみやがれっ! クソ魔王! 御遣いっちもッ! スカッとしたでしょ? 正にこれぞ、成敗!! 天誅ッ!!! やったぜっ! いぇぃっ!!」
「……それは、さすがに、やりすぎだ」
「ふえぇっ……? そりゃないよぉ? だって、近所迷惑な害虫野郎を、危険を覚悟で頑張って駆除してやったんだよ? そもそも僕ぁね、女神に魔王討伐のために召喚されたんだよ? 頼まれたから仕方なく、魔王をボコボコに苦しめ、苛め抜いただけなのに、それなのに、僕が責められるって、そんなのあんまりじゃん? めっちゃくちゃ、理不尽じゃん? 不条理じゃんっ!? それは、あまりに、自分勝手過ぎる! そんなワガママ許されない! 僕をなんだと思ってるの? そんな傲慢、僕ぁ許せないッ! そうだよね! 御遣いっちなら、わかるよね? 御遣いっちの上司の、カルビっちに、僕の魔王討伐の善行を伝えて欲しいんだよねぇ。頼むよ?」
「――――――――――――」
「それに、魔王ってのはさ、まぁ、ざっくり言えば、人類の敵、じゃんっ! つまり、虫けら以下の存在っしょ! へへっ! 少しは、僕のストレス発散のために遊んだって問題のないゴミでしょ? だって、子供がトンボの羽千切っても怒る大人はいないじゃん? 僕は、害虫を痛めつけてるだけじゃん? 正義の行いだよねっ! まぁ、そんな感じで、迷惑をかけていた魔王野郎の手足を虫ケラのように、丁寧に、僕の手でもぎ取ったんだよね! いやぁ……爆笑モンだよ! 魔王ってすげー生命力強いんだぜ……? 芋虫みてぇに、惨めに生きててさぁ腹抱えて笑っちゃった! 7日も生きるんだから、まぁーじビックリだよねぇ? ひゅーひひひっ。クソ女神、僕が魔王をボコボコにしたら、泣き叫んじゃうし、僕ぁ、思わず大爆笑だよっ!」
「……この話は、懺悔、なのでしょうか」
「懺悔? んなわけないじゃん! 違う違う! むしろ、精神的非処女の淫売と魔王野郎をボコボコに痛めつけたっていう、凄いイイ話、超善行じゃんっ? カルビっちもきっと僕を評価してるってっ! んでね……! そのあと、僕ぁね。泣き虫芋虫魔王野郎の前で、クソ女神を百叩きにしてやったんだよ! グロは苦手だから、背中の方を徹底的にボコボコに殴ってやったぜっ! いぇーいっ! ザマァみろッ! スカッとしたね! そのあとは、魔王野郎の目の前で、淫売女神を7日7晩犯しぬいてやったね! 魔王野郎なんて、男のくせに涙流しながら絶叫してたぜ! 『うぇえ、やめてくれぇ……なんで、あの子に、こんな酷いことを……』 とか 『頼む……女神だけでもいい、見逃してくれぇ』 とか、爆笑だよ! 自業自得だバカ野郎ッ! 誰が認めるかッ! てめぇで喧嘩売ってきたくせに都合の良いことほざきやがて! あの芋虫魔王、根性のねぇカス野郎だったぜ! まぁ……でも、僕も鬼じゃないし、どうしても、罪の意識とかを感じちゃう、善良な人間だから。鬼になりきれないんだよね……。そこが、僕の良いところでもあり、甘さでもあるよねぇ? でね、僕ぁ、最後に、慈悲を与えちゃったっ! ひゅーひひひっ! 僕って、すっげー優しいからねっ!」
「……慈悲、とは」
「そんなに、クソ淫売女神が魔王野郎とヤリてぇつーなら、僕が望みを叶えてあげないとって、おもっちゃったんだよね? スキルをもらった、御礼もあるから。鶴の恩返しみたいなモンだよね? でね! 最後は、虫けらの交尾のように、魔王とクソ女神を合体、くっつけて交尾させてやったんだっ! おまけに、淫売女神と芋虫魔王の顔面を無理やり押さえつけて、口づけ、キスまでもさせてやったっ! 超大サービスだよねッ! 僕ぁね、喜んでもらえると思って、良かれと思って、善意でやったんだぜ? しかも憎むべき野郎に! すげぇ、ヤバいくらいの寛容性だよねッ! 相思相愛の仲なら、結ばれなきゃかわいそうだもんなぁっ!!!! でも、喜んでくれるかと思ったら、クソ女神も魔王野郎も自分勝手に 『頼む、殺してくれ』 とか、涙流して懇願されるしさぁ、意味わからないし、あまりの自分勝手さに、僕もさすがに呆れちゃったよね? ヤレヤレってかんじだよ。僕の慈悲と愛に感謝しろよ! ね? そう想うでしょ? もうこうなったら、さすがに僕の怒りは有頂天だねっ! 最後は、虫の標本を作る時に虫にピンを刺すように、自分のことしか考えない、クソ野郎どもを、聖剣でまとめて二人同時に刺し貫いて心臓を一緒に破壊してやったぜっ! ざまぁみやがれっ!! 大勝利ッ!!! 非処女と、芋虫魔王は、死んで結ばれろ、クソ野郎どもにはお似合いだっ! まぁ、聖剣が墓標なんて、すげえクールな、ナイスアイディアだろっ! やったぜっ! 大勝利だ! 正義執行! ジャスティス! なっ、凄い、良い話だったでしょ? 感動した? 泣いた? そうそう、これが、僕が、非処女を許せない理由! 僕は被害者っ! 御遣いっちの上司のカルビムに伝えておいてねっ!」
いまこそ、認めよう。
人道に反した生贄召喚は誤りだった。
世界に災厄を招き入れた、愚者。
私の扱いこなせる、駒ではなかった。
どこの時点で、私は、間違えた。
私は、王の器では、なかった。
だが、
もはや、取り返しはつかない。
ここで、私は、止まれない。
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