第EX話『第零次正妻戦争!(仮)』
本格的な作戦前の休憩。
テーブルに紅茶やクッキー等の様々なお菓子が並ぶ。
すべてユエの手作り。
頭を使うなら糖分は不可欠だ。
ルナとテミスは、甘いものに目がない。
美味しそうに食べている。
「紅茶でも飲みながら、ユーリさんと交わした約束について話し合いませんか?」
「そうですね。約束を果たしてもらわないといけませんからね」
「はい。約束をしたからには、必ず帰ってきて、守ってもらわなきゃです」
「それでは、最初はボクから。ユーリさんとは、いつかお酒を一緒に飲みに行こうと約束していいました」
「なんか素敵ですね。男同士のそういう約束って、格好いいですよね。憧れちゃいます」
「ボクはまだお酒が飲める年ではないので、少し先になりそうですね。ははっ」
ルナがすっと手を上げる。
「あたいは、ユーリにおはなしを聞かせてもらう、約束をしてた」
「ユーリさん、ルナちゃんにはどんなお話をしているんですか?」
「えーっと。冒険ファンタジーとか、ホラーとか、ラブコメとか、そういう話」
ほとんどは、ユーリが前世で読んだうろ覚えの物語。
ルナが『ホラー』と言っているのはユーリの前世の話。
それを、物語風に誇張して語り物語風にしている。
「ルナちゃんは、どんな話が好きですか?」
「パパの話は、ぜんぶ好き。でも、トキーオとかいう世界の、ホラーのお話しの続きが気になるかなっ?」
「ルナちゃんホラー好きなんですか?」
「あたい、ホラーはあんま好きじゃないんだけど、話している時のパパの眉間にシワが寄る表情がおもしろいから好きっ。シュールで設定凝ってて続き気になるなっ」
「ユーリさんは、多くの約束を残していきましたね。これは、ちゃんと帰ってきて、その約束を果たしてもらわなければ、なりませんね!」
アルテは、綺麗に話をまとめようとする。
この雑談もここで終わりかと思われた。
否――。ここからが本番。
遅れて、テミスがすっと手を挙げる。
「そういえば、わたしも、ユーリと約束してた。話て、いい?」
「テーちゃんも、ユーリさんと約束を?」
「うん。約束した。ユーリと」
「いいですね! テーちゃんのお話し聞かせてください!」
「そういえば、3年後にユーリと結婚するって、約束してた」
「「「な、なんだってー!!」」」
テミスからの意図せぬ爆弾発言。
後に、正妻戦争と呼ばれる物である。
ユーリの名誉のために補足しよう。
ユーリはプロポーズしていない。
単なるテミスの誤解である。
だが、男ならその責任を取らねばなるまいっ!
「……あれっ、すこし、ちがったかな? でも、そう囁く……私のゴーストが」
「アルテさんの霊圧が消え、ましたね……」
「そういえば、婚約指輪の代わりも、もらってた」
ユーリが、肌見離さず首から下げていた物。
皆が、見覚えのある装飾品だ。
アルテが、紅茶のカップを手から落とす。
「テーにゃん、もうやめてっ! おねーちゃんのライフはゼロよっ!」
テミスによるトドメの一撃が炸裂!
効果はバツグンだーっ!!
「ふふふっ!!……いいでしょう! ならば、――戦争ですっ!」
アルテは立ち上がり、闘志をみせる!
「ユーリさんにはアルテさんという想い人がありながら。やはり、男ですね」
「えっ……いえっ、私、ユーリさんとは、まだ、なにも……」
「えっ? でも、アルテさん草むらで押し倒してキスしてませんでした?」
「ペロ、これは……犯罪!」
「わははっ! おねーちゃん、やるねっ! ふつーに犯罪だけどっ!」
「はい。ルナさんの言うとおり、ボクも犯罪だと思います」
「あっ……あれはっ、て。見ていたんですか? ユエさん」
「その、偶然。アルテさん、……えっちなのは、よくないと、思いますっ!」
「キス、……しただけです! 先っちょだけです! 減るものじゃないですっ!」
「でも安心しました。まだユーリさんとは、そういう仲ではなかったのですね」
「あのー。ユエ、……さん? 笑顔が、凄い輝いていますね」
ルナは、テーブルのケーキを口に放る。
3秒だけ考えた後に、口を開く。
「こうなったら、あたいが、パパのママになるしかないねっ!」
「ルナちゃん?」「ルナさん?」「わけがわからないよ」
ダークホースの参戦。
正妻の座を狙う者が、また一人。
「わははっ! 決めたっ! あたいが、パパのママになる」
「ルナルナ。その理屈はおかしい」
「ルナさん、そっ、それはっ……禁じ手、反則ですっ! ボクは認めません!」
「ふふふ。ユエっち、――いつから錯覚していた?……娘が、パパと結婚できないとっ! あたいが、ママになるんだよ!」
「ほー。ルナルナ、ユーリの、嫁になりたい?」
「テーにゃん。あたいは、なりたいんじゃないっ! 絶対にママになるんだっ!」
「ルナルナ、おそろしい子。だが、それがいいっ!」
テミスがルナの手を固く握りしめる。
仲間意識のような物を感じたようだ。
2人の間に絆が芽生えつつある。
わけがわからないよ。
「それがアリならっ!――ボクも、正妻戦争に参戦しますっ!」
「まともなユエさんまで、……ってユエさん男じゃないですかっ!」
「むしろ、それはアドバンテージです! ユーリさんが求めるなら、女の子にだってなってみせましょう! 気合でっ!」
「わははっ! ユエっちが、ゆーと、ガチでなれる気がするのが、ヤバいっ」
「( 争え もっと 争え )」
「あの、テーさん。心の声、……漏れてますよ」
「てへ、ぺろっ」
「それに、いままでアルテさんとユーリさんが正式にお付き合いしていると思って、我慢してきましたが、まだ勝敗は決していないようですね。負けませんよ!」
「いえいえ。みなさん……、ユーリさんのファーストキスを奪ったのは、私だということをお忘れでしょうか! これは、もう結婚したようなものでは?」
「アルテ、犯罪行為は、ノーカン」
「わははっ! だよね。さすがに、犯罪はねーっ」
「ボクも、ルナさん、テーさんに同意します!」
(ユーリすわぁーん! 早く帰って来てくださぁーーいっ!!)
アルテの心の声である。
・・・・第零次正妻戦争から10分経過。
ルナがある、真理を導き出す。
その言葉を、シュークリームを頬張りながら、語る。
「いっそ、みんなでパパと結婚すれば、よくねっ?」
「さすルナ……そこに気づくとはっ、……やはり天才っ!」
「テーさんは、ユーリさんに奥さんが何人居ても気にならないのですか?」
「おっけ。わたしの器、大きい。星だけに」
テミスは、無表情ドヤ顔ダブルピースを決める。
「ボクもルナさんの意見に同意します。ですが、正妻の座は一つです!」
「ええ。ユエさんの言うとおりです。正妻の座は譲る気はありませんっ!」
「たたかわなければっ 生き残れないっ!」
「あたいもっ! まけないよーっ!」
アルテが、パンッと手を叩く。
そろそろ、真面目な作戦を詰める頃合いと判断した。
何だかんだで、アルテのきまじめな性格は隠しきれないのであった。
「この続きは、ユーリさんが、帰ってきたらにしましょうっ!」
「ですね! 絶対に帰ってきてもらわなきゃ、いけませんねっ!」
「ユーリに責任、とってもらう」
「だね! そんために、あたいらでがんばろーよっ!」
「「「「 おーっ! 」」」」
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番外編をお読み頂き、誠にありがとうございます。
箸休めのギャグパロネタオンリーのお話でした。
皆様、64話まで読み進めていただき、
誠にありがとうございます。感謝の言葉もありません。
次話から、本編(65話)に戻ります。
クライマックスに向け、物語はより加速していきます。
引き続きお付き合いいただけますと幸いです!
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