第57話『若造くん幼妻をNTRる』
エッジがゆらりと動く。
まるで
闇夜を音なく駆ける。
影のように。
明らかに長い手足。
マリオネットを想起させる、
エッジの左右の手には
ガントレットの鉄の指には、悪魔のように長く鋭利なカギ爪。
このカギ爪の名前は、
エッジは音を立てず駆ける。
闇夜に響くは指先が奏でる無機質な鉄の音のみ。
エッジが奏でるは目の前の2万の軍勢。
このカギ爪が奏でる金属音は壮大な交響曲の
盛大な
「俺に殺された奴らは、運がよかったぜ」
これは、皮肉ではない。事実だ。
不殺の暗殺者エッジ。
エッジの不殺は、優しくない。
「
カギ爪をカチャカチャ鳴らしながら敵陣に突っ込む。
巨岩で敵陣に作ったレッドカーペットを駆ける。
エッジはひたすら戦場を音もなく駆け拔ける。
敵兵もただ、横を通り過ぎるエッジに対応できない。
エッジは、兵の間を曲芸のようにすり抜け駆ける。
ただ、横を通り過ぎるだけなのだ。
「いっつっ……なんだ……今の、気のせいか?」
「おい若造、大丈夫か? なにかあったら新妻が悲しむぞ。無理をするな」
「いや、首の後ろがチクッとしたんすが……たぶん蜂に刺されただけっす」
「虫か。がはは! 家に帰ったら巨乳の嫁さんにひざ枕で手当でもしてもらえ!」
「自慢の嫁っす。最近じゃ珍しい清楚で純真、白百合のように可憐な乙女っす」
「ははは! のろけるな! 可愛い
「やっぱり、憧れの班長だ。格好良いっす! はい! 生きて帰りましょう!」
いや、違う。早すぎて気づけないだけ。
すでにエッジの攻撃は終わっている。
エッジに横切られた時点で、終わり。
首の後ろにチクリとした痛みを感じたら。
その時にはもう、始まっている。
エッジは通り過ぎる瞬間、首から脛骨を一つ抜き取る。
脳から身体への信号は物理的に、完全に遮断される。
首から下の肉体は脳というパイロットを失うことになる。
頭部の重さによって前傾に崩れ落ちる、……はず。
だが、……エッジに切られた相手は倒れない。
終わりは、始まっている。
「はれ……? なんで、俺、なんで班長の背中、斬ってんだっ……?」
「……っ! 貴様ッ……背後から……っ……乱心したか! 若造ッ!!」
「ちがっ……これ……本当に……俺じゃねぇっ! 体が、勝手にっ!!」
「チッ! やっぱバレてたか。てめぇの
「えっ……何の話、すか? 班長……何言ってるんすか……冗談、やめて下さいよ」
「お前の嫁さん、なかなか、良いアンバイだったぜ。嫁とナントカは新しい方が良いって言うけど、ありゃ本当だったぜ。背中のホクロ、色っぺぇんだよなぁ、ひひ」
「嘘っ、だ……家族ぐるみの……付き合い……俺は、そう、信じてたのに……」
「嫁とできねぇ激しい遊び、いやぁ最高だったぜ。それに、お前の普段のマヌケ面、それを想像しながら。刺激的で、超、最高だったぜぇ! この程度、痛くもねぇや」
「意味わからねぇ……ははっ、もう、どーでもいいや、知るかよ……殺すッ!!」
「てめぇの新品妻はボロ雑巾になるまで遊び潰すぜ。旦那が戦死して傷心負った未亡人。くうぅ……。ひひ。サイッ、コーに楽しめそうだもなぁッ! ひーっひ。てめぇの遺骨は直々に嘆き悲しむ幼妻に届けてやるさ。てめぇの遺骨の隣で思う存分、楽しませてもらうぜぇッ!! ひーっひひ! だから安心して死ね若造ッ! 天誅ッ!」
「クソがぁッッ!!!!! 死ぬのはてめぇだッ! 寝取りクソ野郎ッッ!!!!」
エッジが駆け抜けた、その後に起こる狂騒。
戦場を覆う憎悪と疑心暗鬼の渦。
これが、
仲間を互いに疑い憎悪する。
戦場に真の地獄を生みだす、兵器。
幻術、精神支配系の武器ではない。
つまり、二人の間に起こった出来事は事実。
班長なる男が語った言葉も、全て事実。
エッジが斬ったのは若造と呼ばれる男だけ。
新兵が班長の背中を斬ったのはカギ爪の効果。
だが、それ以外の一切にエッジは関与してない。
切っ掛けさえあれば地獄は勝手に生みだされる。
エッジは少しその背中を押しただけだ。
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